【Vol.271】寄稿 インディ君活用法
連載:FIWAインディくん活用法
龍谷大学経済学部教授
竹中 正治氏
投資シミュレーションソフト「FIWA®インディくん」の活用法
その6 各種インデックス間のリスク分散効果(応用編)
プロトタイプ版(無償)、本格版(年間利用料11,000円(税込))
https://fiwa.or.jp/simulation/(←インディくんのサイト)
将来シミュレーション
前回はインディくんの「積立投資による将来の資産シミュレーション」に話を進めました。今回はその続きです。
前回の想定は現在40歳で65歳まで働き、最初に100万円投資し、その後は毎月5万円、年間60万円の株価指数連動ファンド(投信、ETF)で25年間定額積立投資すると想定しました。想定した期待リターンは8%、リスクは16%です。その結果、得られた65歳時の期待金融資産額の分布は以下の通りでした。項目16の「分布の上位50%」(分布の中央値)4550万円より、項目13の「引退時の期待金融資産総額」が5509万円と大きくなっているのは、後者が分布の平均値だからです。分布上位の金額が大きいケースが全体の平均値を引き上げるので、分布の中央値より大きくなります。

投資性の金融資産の将来価値は相場の変動次第で変わりますから、幅のある確率分布として予想します。これは資産形成において非常に重要なことです。単に幅があるというだけでなく、その分布は第2回で説明したような中央値とその前後のケースが出る確率が高く、プラス(高リターン)でもマイナス(低リターン)でも極端なケースが出る確率は低いという釣り鐘型(図の横軸がリターン、縦軸が確率)になるというイメージを持ってください。(以下の図は平均リターンを4%と想定)

リターンの平均への回帰
また前回の繰り返しになりますが、65歳時に例えば下から10%目の不運な場合で2261万円という結果になっても(累積投資額1600万円の1.41倍)、これは10年に一度程度の起こり得る「***ショック」にたまたま遭遇してしまっただけです。そうした場合は、そこで投資を止めるのではなく、さらに2~4年ほど継続すればリターンの平均への回帰が起こり、リターンの回復が起こることを重ねて強調しておきます。ただし数十年に一度のような希な大バブルの崩壊後は2~4年では戻らないケースもあります。こうした大バブルへの対処法は後の回で述べます。
さてここで計算結果として得られたグラフのデータをダウンロードする機能をご紹介しておきます。以下のグラフの右上にある「データ・ダウンロード」のボックスを押すと、グラフのデータをCSVファイルの形式でダウンロードできます。ダウンロードしたらファイルをExcelに転換して保存し、自前のグラフの制作、加工が可能です。

引退後の支出可能額の計算
次に引退時の資産の取り崩しと年金で、引退後にどの程度の生活費の支出が可能か?希望する支出レベルを実現するためにどの程度の積立投資をすべきなのか?その試算をしてみましょう。グラフの下に表示される項目18「年金受取見込額(年額)」は、厚生労働省の「公的年金シミュレーター」などを使って別途計算し、入力してください。インディくんの画面には当該シミュレーターにアクセスするリンクを貼ってあります。

項目19には「引退までの平均手取り年収(見込み)」を入力します。わからなければ、現在の年間可処分所得(グロス所得額から税金、社会保障掛け金を引き、さらにここでは住宅ローンなど長期返済債務があれば、その元利返済額を引いた金額)を入力してください。項目20では引退後の余命年数を入れます。これも想定ですから、65歳引退なら30年前後で良いでしょう。
以上入力すると項目21に「引退後の生活費支出可能額(年額)」(このケースでは434万円)が表示されます。これは項目13の「引退時の期待金融資産総額」を余命年数(30年)で割って、項目18「年金受取見込額(年額)」を足しただけです。したがってここでは引退後は投資的運用せず、資産のリターンはゼロが想定されています。項目22はそれを12か月で割って、月額にしています。
項目23「引退後の生活費率」は、項目21で示した「引退後の生活費支出可能額(年額)」が、引退までの平均手取り額(上記の可処分所得)からさらに年間の定額積立額を引いた金額、つまりこれからの現役時代の生活支出可能額に比較して何%になるかを示したものです。このケースでは51.6%となりました。また項目24は、想定した定額積立投資額(毎月5万円、年額60万円)が現役時期の可処分所得の何%になるか(このケースは6.7%)を示しています。
引退後は一般に子供の教育費の負担も、住宅ローンの返済も終了していると想定すれば、引退後の必要額は現役時代の6~7割でしょうか。そう考えるならば、このケースでは51.6%ですから、「もう少し積立投資を増やして引退時の金融資産を積み上げた方が良い」という判断なります。このケースの貯蓄率は5.6%ですから、もう少し増やせそうです。
そこ毎月の積立額を7万円まで増やして、再計算すると、引退後の生活費率は60.9%に上がり、貯蓄率は9.3%になることがわかります。このように引退後の生活必要額と現役時代の可処分所得を考えながら、資産形成のプランを立てるためにシミュレーションを利用することができます。
さて、以上は分かりやすくするために、引退時の65歳で資産運用を止め、資産リターンはゼロの想定で説明しました。引退して年金以外に所得がなくなった場合は、現役時代よりは運用リスクを落とした方が良いとは一般的に言えるかもしれません。しかし引退時に運用を止める必然性はありません。運用を続けながら金融資産を取り崩すとどうなるか?その驚きのシミュレーション結果は次回ご説明いたします。
(次号に続く)



