【Vol.239】FIWAマンスリー・セミナー講演より

兜日本株価指数にみる日本証券市場全史

講演 岡本 和久 CFA, FIWA
レポーター 赤堀 薫里

岡本和久

明治11年から今日までの一貫した一つの指数を、兜日本株指数と名づけ現在、商標登録を申請中です。兜とは、明治から戦中も戦後もずっと取引が行われている兜町です。

今日は、この全体的な144年の話をしたいと思います。歴史を見ているとライフサイクルが国にもあるのではないのかと感じます。明治維新から今年は戦前、戦後を境にして77年で半々になっています。ちょうど同じように戦前、戦後でマーケットの動きも似ている。明治維新から始まって、秩禄処分があり、取引所が設立されて、民間企業も少しずつできてくる。これが黎明期です。

成長期に入り、その時に体験するのが日清、日露戦争。そして第一次世界大戦へと続き、漁夫の利ともいわれていますが、非常に好況になりました。これは成長期です。

その後、成熟期がきます。第1次世界大戦後の反動不況も起こりました。それから金融恐慌、昭和恐慌が続いてあります。関東大震災もありました。そういう悪いニュースの中で、大正時代は、大正ロマンとか大正デモクラシーと呼ばれる明るい部分もあった。その中で格差が拡大していき、モボ、モガが闊歩する一方でマルクスボーイがでてきたり、農村が疲弊していくというごちゃまぜになった時代でした。昭和元禄などと言われた80年代の時もそうでしたね。バブルの中で非常に大きな格差の拡大も起こっていった。

そして最後に衰退期。戦前でいえば統制経済に入って、そして戦争経済に入っていく、4つのステージでワン・サイクルがります。そういう意味でいうと今はどうなのか。衰退期は終わっていると思いますが揺籃期期の入り口のあたりをうろうろしているそんな感じがします。

揺籃期、それは明治維新の時、終戦後もそうですが、非常に危機感をもってグローバル化への遅れを自覚していく。恐怖感がすごく大きなドライバーになっていたと思います。今は恐怖感があまりなく結構、安住感みたいなものに浸ってしまっていることが、なかなか次のステージに入れないという理由である気がします。

日本の何を変えて何を維持すべきなのか。それを整理してそれに合わせて合理的なものをどんどん導入していく。不合理なものはどんどん止めていく。そういう大きな構造変化を一方で進めながら、日本のいいところをいかに残していくのかということが、今の日本が抱えている課題です。それを、スピード感をもってやっていくべきですがなかなか進まない、既得権益者の反対も強い。国民もなかなか選挙に行かない。残念ながらそんな状態です。

この状態からいつ、どのように脱却できるのか。それが今の日本の一つの課題だと思います。今までは戦後の株価指数しか見ていなかった。しかし、戦前の株価指数を戦後と一貫したアプローチで見ることができたことによって、ライフサイクルがあるということが明確に分かるのです。さらに次がどうなるのかということに考えが及ぶことになるわけです。そういう意味で、これは非常に価値のあることではないかと思います。

講演では、1878年から2022年に至るまでの144年にわたる壮大な証券市場全史を解説くださいました。