【Vol.256】FIWA会員 投稿コーナー

キャリアとお金をライフワークに


寄稿
石倉 弘一, FIWA®

石倉 弘一 プロフィール

ishikura

信託銀行の27年間は金融商品販売、住宅購入実務や資金相談、相続・遺言コンサルティングなど資産に関わる仕事に幅広く携わってまいりました。しかし近年働き方の多様化が進み、「働く」ことの様々なお悩みにもしっかり対応できるようなりたいと思い、製造業向けコンサルティング会社に転職し、人材紹介、採用、労務について5年半実務経験しました。
2024年からフリーランスとして活動しています。職業人生として随分と遠回りしましたが、一人ひとりの想いや個性を大切にした「幸せな生き方」の実現のために、お金に関するお悩みにしっかり向き合い、共に考え、前向きなお気持ちで取り組んでいただけるよう持てる総力でサポートいたします。自身もさらなる研鑽に努めてまいります。


ずいぶん遠回りした職業人生だった

 信託銀行ではFPの礎となる資産に関し幅広い分野に携わることができ、出会った方々にとても感謝しております。一方、金融危機下での厳しい店周対応や会社の分割・再編など入社時には予想だにしなかった事態にも直面いたしました。そして在籍中に二つの疑問を抱きました。一つは金融商品。株価ノックイン型金銭信託や手数料の高い投資信託は、真にお客さまにとって良いものか。もう一つは終身雇用。定年まで会社に委ねる生き方で己は良いものか、ただ転職も簡単ではない…。

 しばらくは逡巡していましたが、転機となったのはアセットオーナーへの出向でした。ちょうど年金資産の委託先全面見直しに伴う運用会社選定に参画できて資産運用業界の奥深さを知り、また銀行以外の異なる組織カルチャーに身を置いたのも印象的でした。まさに銀行の常識は世間の非常識だと骨身に沁みました。帰任後五十路を過ぎてようやく決意し、個人金融営業もしくは人材紹介業を目指して転職活動を始めました。当時IFAに期待を寄せ、二社(証券会社と独立系オフィス)の話を聞きましたが、従来の売り手本意の営業姿勢と変わらない実態に失望し、結果、人材紹介・採用の仕事へと転じました。

 人に関わる仕事に就きたかったのは、お金だけでなく「キャリア」に関してもしっかり相談できるようになりたかったからです。ここでいう「キャリア」とは職業経験や肩書のみではなく、「生き方そのもの」を含めています。おかげで職業紹介や採用の動機づけ面談などキャリア支援の経験は自身の大きな糧となりました。ただ齢57歳、「ずいぶんと遠回りしてしまったなあ、自分はまだまだ人さまのお役に立てていない」今の率直な振り返りです。

あなたらしさの頂へ” 己の総力でサポートする

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 27年間山登りを趣味としています。写真中央の尖った山は北アルプスの槍ヶ岳です。アルピニストなら一度は登りたいと憧れる秀峰ですが、その頂に立つには自力で歩いてたどり着かなければなりません。日頃体力トレーニングをし、山への知識を深め、いざ登り始めると道中数々の危険を回避し対応しないといけません。時には撤退し後日挑戦、場合によっては断念し別の頂を目指すこともあるでしょう。そんなとき、そばに頼れるパートナーがいれば心強いものです。

 人生は大なり小なり決断の連続です。そのためには正確な情報収集、分析に基づく思考、自身の行動への納得感が必要となります。これら三つの要素が満たされず「決められない」悩みを持つ方々が増えてきているように思います。近年、自律的なキャリア形成と言われて久しいですが、それなら少しでも前向きな気持ちでキャリアに取組めないものだろうか…しかし、そこには「お金」の問題が現実として立ちはだかります。転職時の面談中、仕事とのさまざまな両立支援のお話、在宅勤務での住まい方、自己投資への考え方など。「お金」に起因した悩みも銀行時代からかなり変容してきたと感じています。

 個性化・複雑化した「キャリア」と「お金」の悩みに応えたい、今年フリーランスへと一歩踏み出しました。「あなたらしさの頂へ、持てる総力でサポートする」気持ちを込めて自身Webサイトのトップページに表明しています。相談者の将来への思いや個性を大切にしながらお役に立つことに専心します。

「キャリア」と「お金」にしっかり向き合う

 「お金」とは何か?この間惜しくも亡くなられた山崎元氏の対談動画を拝聴しました。そこでは「厄介なモノ」と絶妙な表現をされていました。キャリア形成を後押しするお金、逆にキャリア形成を阻む要因となるお金、お金の築き方、使い方が生き方にどう影響するのか、幸せな生き方をするにはお金とどう向き合うのがよいのか…考えれば考えるほど深淵に迷い込み、掴みどころがありません。ただ、答えは相談者各人の無意識の心中にあるのかもしれません。対話から丁寧に寄り添い、共に考えていくことでその答えが自ずと現われてくる、そんな関係性を相談者と構築できたら素晴らしい、一つの理想です。

6月に「キャリア」と「お金」に関するワークショップの企画、開催を予定しています。参加者に「お金」について自由に考え、発表し合い、そこで得た気づきから、改めて自身の「キャリア」を見つめようという自身初の試みです。どういう展開になるか、全く読めませんが、もしかしたら驚きのキャリアとお金の関係性が浮かび上がるかもしれません。今から楽しみです。

 『様々なアプローチを通して「キャリア」と「お金」にしっかり向き合うこと』私が生涯追求すべき価値あるテーマと信じてこれから活動していきます。企業や学校にもコミットして、学生、サラリーマン、経営者にセルフ・キャリアドック(キャリア面談をベースとした人材育成・組織活性化)や金融経済教育を実施してゆくゆくは貢献できるようになります。そのためFIWA®准会員として研鑽、実践を積み上げていきたいと思います。