【Vol.232】しあわせ持ちへのロードマップ PART2:DIY資産形成

講演 岡本 和久
レポーター 赤堀 薫里

岡本 和久
岡本 和久

退職後のための資産形成コアポートフォリオを作っていくことの重要性と、人生を通じての資産運用の目的について。また、リスクをコントロールするためには長期・分散・積立・継続が大切であり、毎日たんたんと将来の自分のために自分で続けることが大切です。

お金の面では経済的束縛を最小化する。心の面では幸福感を最大化すること。毎年の収入は今年の生活費と将来の生活費の両方であることを知るべきです。もっとも大事なことは、将来の自分は今の自分が支える。他に支えてくれる人はいない、国や企業に頼っているだけでは安泰な生活は送れない。自助・共助・公助といいますけど、考えてみれば全部自助です。国からもらえる年金があるのであれば、それを組み込んだ形を自分で考えて自助の将来設計をしていくことが大事なんだろうと思います。人生の目的は、お金持ちになることでもないし、出世でもない。やはりしあわせ持ちになること。それでは退職したあと、最大のリスクとは何か。生活の質を大幅に下げなくてはならない。これが一番の大きなリスクであると私は思います。

結局資産運用の目的は、購買力の維持+α。物価水準以上を少し越えるようなリターンを得ていくということがポイントなのではないのかと思います。

働きの時代のDIY資産形成

大事なことは、のこぎりのギザギザで儲けしようとしないで、のこぎりの向いている方向。この大きなトレンドに賭けていくということです。このギザギザで売ったり買ったりして、失敗したり、成功したり、これをずっと繰返して30年40年50年と続けていくことは、ほとんどできないですよね。必ず負けます。なぜかというと手数料を取られるからです。それは投機であり、非常に短期の投資ですね。投機には結果に法則性がない。また、結果をコントロールする術もない。投資には短期投資と長期投資があります。短期投資というのは基本的に株価を対象にした売買による収益を得るもの。長期投資というのは、一つの銘柄を保有して、その企業の価値が増えていくに伴って株価も上昇していく。それを享受する。これが長期投資です。

資産運用と長期投資はどう違う

もう一つよく言われる言葉に資産運用という言葉があります。多くの人、専門家のかたでも投資と資産運用をごちゃごちゃにしてお話をしています。『この銘柄買いましょう!資産運用ですから』これは、私は違うと思います。資産運用はトータルの資産を運用する。だから個別の銘柄がいくらになっているのか。いくら上がった、いくら下がったというのは二義的な問題であって、トータルの財産全体がどのように安定的に増えていくのか、これが資産運用です。英語でアセットマネージメントといいます。アセットとは個別の銘柄ではなく、資産全体を管理していく。マネージメントしていく。就業中の人が将来のために行うのが資産形成であって、それから退職後にそれをどう使っていくのかが資産活用です。

本当、知って置くべき投資理論わずかです。みなさん難しいことをたくさん知らないといけないと思っていますが、リスクとリターン、ここから全ては始まっていきます。資産配分をどうするのかとか、どのような戦術、戦略にするのかは、全てここから始まっていきます。

コントロールできることとできないこと

資産運用でコントロールできることは、資産配分、リスク、コストです。コントロールできないことはリターンです。リスクは非常に安定しているのでコントロールしやすい。でもリターンは大きく振れる。ようするにコントロールできるものをコントロールした結果として出てくるのがリターンであると。

重要なことは、リスクをコントロールするには、分散、積立、長期、継続があります。分散もいろいろな種類の分散があります。一つは資産クラスの分散、つまりアセット・アロケーション。日本株何%、米国株何%。二番目は銘柄の分散。それでは米国株の中で何を持つのが良いのか。ナスダックみたいなものがいいのか。あるいはダウ平均がいいのか。あるいは個別銘柄でテスラを買えば良いのか、そういう話です。三番目は、買付のタイミングの分散です。最後は口座の分散。アセット・ロケーションです。つまり「期待リターンの高いものほど節税効果の大きい口座に入れたほうが、トータルで見ると有利ですよ」という話があります。何に投資をするのか。4つの基準を私は考えています。『まず株式であること。世界全体、投資信託、インデックスファンド。この4つの条件を満たすものを買いましょう。』このようにいうと、対象銘柄は本当に絞られてしまいます。

人生を通じての資産運用は、毎日当たり前のようにすることであって、特別、楽しく、エキサイティングでもない。ただ続ける。Buy&Forget。買ったら忘れましょう!ということです。

今日のDIY資産運用が明日を支える

大事なことは自分でやるということです。自分ごとの意識を持って将来の自分に備える。『アドバイザーさんお願いしますよ』、『IFAさんお願いします』ではなくて自分のこととして捉える。アドバイザーはあくまでも伴走者です。伴走者が先にたって走ってはいけないですよね。後ろから正しい走り方を教えてあげてサポートしてあげることがとても重要だと思います。やはりやるのは本人だという意識を植え付けることがアドバイザーとしては非常に重要な役割ではないのかと私は思います。

講演では、竹中ポートフォリオ・ツールの活用法の提示や、何に投資をするのか75文字のDIY資産形成の説明。世界株式市場の値上がり率ランキングの推移(サルそばチャート)の解説。投資に役立つ4つの老荘の教え等について解説いただきました。

フリー・ディスカッション

岩城|株価指数連動定額積立シミュレーションソフトは、FIWA®のHPにありますトライアル版を使ってくださっている方もいらっしゃると思いますが、私たちはもっと投資を身近にするために、便利なツールを世の中に提供したい!という気持ちで、本ソフトの本格版を開発するため、クラウドファンディングを実施します。

国内外の株価指数に連動した投資信託による長期・分散・積立投資というのは、高いリターンをもたらす合理的な資産形成の手段として知られています。しかし「投資をしたいけど、本当に大丈夫かな?」、「どれくらい元本割れのリスクがあるんだろう?」という迷いから投資を始められない方は非常に多くいます。そこで私たちは、この投資シミュレーションソフトで、過去の実際の株価データに基づいて、投資の模擬体験をしていただきます。そして長期、分散、積立投資を通して高いリターンが実現できることに気づいていただきたいと考えています。

ぜひ一人でも多くの人に本格的な投資に乗り出してほしい。日本でも資産形成に成功する人が増えてほしい。このような思いで本格版の開発をすることとしました。このソフトを活用していただくことで、アドバイザーの皆さまにもお客様にリスクとリターン、分散投資の有効性をわかりやすくご説明いただけると思います。本格版で加わる機能については、クラウドファンディングのレディーフォーのプロジェクトページ(クラウドファンディング READYFOR)をご覧ください。皆さまの温かいご支援に対して魅力的なリターンを数多くご用意しております。

私たちFIWA®は、利益相反のない顧客本位のアドバイザーの育成と認定、そして皆様が豊かで幸せな人生を送るために必要な金融リテラシーを見つけることができる良質な勉強会を開催して社会に貢献していきたいと考えています。皆さまの温かいご支援をよろしくお願いいたします。

竹中|どういう機能を追加するかということに関しては、レディーフォーのサイトではざっくりと2つしか言っていません。今3銘柄しかないのが、20銘柄ぐらいの内外の株式だけではなくて、一部リートや全世界を対象にしたインデックスMSCIのオールカントリー、そういうものも入れる。もう一つは将来シミューレションができるようにする。過去のデータから、株価指数のリスクとリターンが計測できるわけです。それに基づいて今後20年とか投資をするとどれくらいの変動幅があるのか、どれくらいのリターンが出るのか。これはすごく簡単です。

それ以外にもお金の集まり方に依存していますが、「こういう機能を付け加えてよ」というようなご要望があれば、逐次ご連絡いただいてもいいですし、レディーフォーに書き込んでいただいてもいいです。米国株と日本株の配分比率を少しずつ変えていくことによって有効フロンティアが描けます。そういう機能も付けようかなとも思っています。

有効フロンティアが計算できると、横軸にリスク、縦軸にリターンとした場合、僕たちが一番嬉しいのは一番低いリスクで一番高いリターン。図の左上にどれだけ近づけるのか、そこのところがある意味最適です。あるいは一番リスクが低い左側が最適。最適とはどう定義するかということですが、そういうこともできます。

これで配分を少しずつ自分で変えていくことで、ハイリスク・ハイリターンからローリスク・ローリターンまでいろいろ混ぜるとリスクが減って、リターンが上がるということができるんだなと思うところまで、いじくりこんでもらいたい。そして自分で気づく、発見をする。あるいはそういうところへ誘導してあげるということですね。

それは実はこの機能で大切だと思っています。人間はぱっと教えてもらったことは、ぱっと忘れてしまいます。自分でいじくって気づいたことはしっかり頭に定着します。だからプロトタイプ版では有効フロンティア、最適化について示さなかったのですが、本格版ではそこまで視野に入れて示していこうと思います。それも皆さんのお金のご支援があってこそです。ひとつよろしくお願い申し上げます。

岡本|おっしゃるとおりで、自分でいじって、自分で納得するということが続けるうえで一番重要ですね。それは資産運用でもそうです。「銘柄はどれがいいんですか?」、「これですか?」、「どこでどういうふうに注文したらいいですか?」、「代わりにやってください!」ではなくて、自分の手でやるということによって、長期、何十年というものを視野に入れて、投資を行っていくことができる。それはすごく大事なことだと思います。

ごくごく普通の人たち、アメリカ株はハイリスクで怖い、日本株はローリスクで儲からない、じゃあどうしたらいいの?というときに、これ二つを合わせてみることをしないんですよね。ちょっと隠し味みたいにローリスク・ローリターンの日本株ポートフォリオにハイリスク・ハイリターンのアメリカ株を入れると不思議なことに全体のリスクが下がりリターンが上がるという簡単な事実。我々からみたらそれは当たり前の話だけど、それは体験のない人にとっては、目で見たら驚きだと思うんですよね。よりリスクの高いものを入れると全体のリスクが下がる。これはすごいことですよね。そういうことに、教える立場にいる方や自分でやってみる方たちも含めて、とりあえず現在のモデルであってもいろいろいじくりまわして遊んでみることはとても楽しいと思います。

上山|坂本先生や岡本さんのお話を聴いて思いましたが、FPといっても独立系といいながら、保険等を販売してフィーをもらっている人がたくさんいます。逆に言えばそのフィーがなければ生活が成り立たないのではないのかということもあります。金融庁も外貨保険や節税保険の規制を厳しくしているので、だんだん飯の種がなくなってくる。フィーのバックがなくなってくるのではないのかなという気がします。

そうすると一つ気になる事は、アドバイスにたくさん取ったりするのかな?とか、FPさんでもたくさんキックバックしてくれるところばかりを紹介していくのかな?という方向になると、必然的にそれが目に余るようになってくる。すると何らかの規制がかかってくる。あるいはFPとして、IFAとしての評判が落ちてくることがあるのかなと。

FIWA®&FPの組み合わせが最強だというお話は、早いことブランド化して『あそこは大丈夫だよ』みたいなこと、逆風があっても、『あそこであればちゃんとしたアドバイスをやってくれる』というイメージを早く浸透させたいというのがいろんな活動のモチベーションというものなんだろうなと思いながら聞いていました。

岡本|FPの人が金融商品を販売することは別に問題ないと思います。金融機関や証券会社に勤めてFP になって金融商品を売っている人もいるし保険を売っている人もいますし、IFAになっている人もいます。それは全然問題ないんだけど、だた、その販売員がアドバイザーだと名乗って、自分の利益になる金融商品ばかりを売ることに一番大きな問題があると思います。そういうことはしない、「アドバイス・オンリー」の人たちをはっきり見える化する、ということが大事だと思います。あとはFIWA®の会員の皆さんにぜひお願いしたいのが、寄稿する機会も多いと思いますが、その機会にぜひお名前の後にCFPだけなく、CFP & FIWA®と書いてほしいのです。あるいは知り合いに「こういうのがあるのよ、一度HPを見て」というような広める活動を皆さんにも手伝っていただけたらありがたいです。はい、今日もありがとうございました。