【Vol.257】FIWAマンスリー・セミナーより(講演2)

講演 FIWA会長
岡本 和久 CFA, FIWA®
レポーター 赤堀 薫里

兜日本株価指数で学ぶDIY資産運用の基本

Okamoto 20238a

今日は自分でできるDIY資産運用のポイントを簡単にお話します。今日の一番大きいテーマは、「将来の自分を今の自分が支える」という一言に尽きると思います。

それを実現するためには、できるだけゆっくりと少しずつ増やしていくことが一番安全で確実な方法であるということを、明治11年からの株価指数である兜日本株価指数を見ることで、皆さんに納得してもらいたいと思っています。

私はいつも証券市場、あるいは投資は非常に面白いものだと思っています。なぜならば、正解がたくさんあるからです。いろいろな目的によって正解が全部違っている。だから、この一つのやり方であれば全ての人にとってうまくいくということではありません。

しかし、何といっても人数として一番多いのはリタイア後のための生活資金を資産形成するというニーズではないでしょうか。その人たちにとって一番重要なことは、「将来の自分は今の自分が支える」という投資目的です。

家計、勤労所得、資産運用があって、現役時代の消費支出に投資リターンを回してしまうことは、必然的に短期投資になります。あるいは、配当金を使ってしまうということになる。それは間違いです。

逆に、資産運用を投資リターンとして将来の生活資金のために準備するという意味で言えば、長期投資でなければならないということになるわけです。

DIY資産運用の中で何に投資をすべきか。その投資対象として一番良いのが株式でしょう。それは日本株だけではなくて世界株。日本も先進国も新興国も入れた全世界のものを対象とすべきです。そうなると当然、投資信託のかたちで買うことになります。さらに、その投資信託の運用スタイルはインデックスファンドであるこということ。これがDIY資産運用層、投資に特別興味はないけれど、とにかく、退職後のために何かしておきたいという人に一番適した運用対象だと思います。なぜ株か?株式というのは増「価」証券なのです。

株や債券は有価証券ですが、株式を買うということはその企業の株主資本を買うことです。その株主資本は利益を生み出します。その生み出す比率がROEという指標になるわけです。生み出した利益の一部は配当金として支払います。そして残りの部分は内部留保として翌年の株主資本に付け加える。そうすると長い期間のうちにはだんだん株主資本は増えていきます。だから株式は増「価」証券です。

ただ1銘柄しか持ってないとその企業が不幸にして倒産してしまえばパーになってしまいます。しかし、たくさんの企業、しかも日本だけではなくて世界全体の株式を保有していれば全部つぶれることはないでしょう。世界全体の長期的な経済成長を反映して安定的なパフォーマンスを得ることができます。

株式のリターンというのは、ほぼ世界の名目GDPの数値と似たような数字になっています。なぜかというと、世界の経済成長というのは民間企業が生み出しているからです。民間企業がそれを押し進めている。だからそこで生まれた付加価値は、投資のリターンになっているわけです。それはほぼ名目GDPと同じです。

名目GDPは実質成長率とインフレ率に分解されます。だから株式の名目リターンは名目GDPに近いということは、逆に言うと全世界の株式インデックスを持っていてれば、インフレがそこに含まれているので、購買力の維持プラス・アルファを得ることができるということになります。

しかも、それはグローバルな投資であるべきです。アメリカがいいとか、日本がいい、インドだ、ブラジルだと言い出したらきりがありません。全部持っておくよりしょうがない。

例えば、たくさんのホースがつながっている大きなバケツに水を入れる場合、ある時はちょろちょろしか出ないホースから突如たくさん水が出始めたり、たくさん出た所が出なくなることもある。それを予測するのは難しいのです。だから、全部のホースをバケツにつないでおけば、どこかが必ず水を入れてくれます。

世界の経済は長期的には拡大していきます。なぜ拡大するかというと、みんないい生活を望んでいるからです。最近はアメリカが目立つ動きをしていった。アメリカの株式持っているということは、アメリカのマグニフィセント・セブンなどのトップマネジメントが全員、株を持っている人たちのために働いてくれているわけです。彼らは自分も儲けたいけど、同時にその株を持っている人たちもメリットを受けるわけですよね。

投資信託ではそういうことが難しいことを考えないで簡単にできる。欲望に目が眩んであっちだこっちだと動くよりもインデックスで市場平均並み。アクティブでやっている場合は、結局全部アクティブを合体すれば市場平均マイナス高いコスト、売買コストになってしまうわけですから、インデックスでじっと持っていればそれで良い、あとは何も考えないでいい。

講演では兜日本株価指数を用いて、長期、積立、分散、継続の効用をわかりやすく説明。また兜日本株価指数に見る日本のカントリー・ライフ・サイクルについて解説くださいました。