【Vol.232】資産運用業務に関連する法制度の基礎

講演:弁護士 坂本 有毅氏
レポーター:赤堀 薫里

坂本有毅様
坂本 有毅氏

ファイナンシャル・プランナー業務とその横にある投資助言代理の関係。日々その境界線上で業務をするなか、投資の助言を登録すべきなのかどうか、非常に悩ましいところです。それぞれの制度の成り立ちを確認し、今後、進むであろう方向性をお示しいただきました。

ファイナンシャル・プランナーと投資助言代理業、それとの絡みで証券アナリストの制度があります。証券アナリストは投資助言代理業と関係なさそうでありながら、実際にはこの二つはセットにして語られることが多い。今回はまさに投資助言代理業の前身である投資顧問業のところから見てみます。草創期、実際に投資顧問業は、証券アナリストが主な主体として認識されていました。ファイナンシャル・プランナーは、CFPやFP技能士のように資格でありつつ、有価証券に限らず、保険、住宅ローン、不動産、税と、もろもろ幅広くジェネラルな助言をするという業務累計です。

他方で投資助言業は、個人の資格、能力の類ではなく、許認可の対象です。一緒に並べるとなんとなく分かりにくくなってしまうと思います。投資助言代理業と証券アナリストをセットで考え、実際に投資助言の担い手としてアナリストを見ていただくと何となくすっきり見えてくると思います。

出来た時期もちょうど似たような時期です。証券アナリストは、投資顧問に先立って、かつ投資顧問業法を施行する前提として、もう少し前から始まっています。依頼者層としても、FPは主に一般の個人の方。むしろ投資助言は、法人、個人とありますが、発足時は、機関投資家ないし、資産運用をするうえで余裕のある大規模な事業会社というあたりが中心だったと思います。つまり、全く別々の制度が、たまたま同時期にそれぞれ独自に始まったということです。

1990年代は一般の個人投資家が簡単に株式や投資信託を買えるような状況ではなく、ネット証券どころか、インターネットすらありませんでした。資産運用というか、普通に銀行預金を持っていれば利率も5%とか、そういう時代でした。そのため、有価証券の助言の仕事を富裕層以外の方にするという需要自体があまりなかった。もし仮にあったとしたら、当時では投資顧問業の範囲でした。

ところが、だんだん銀行も金利がつかなくなり、2000万円問題もありました。政府も国民一般に対して自分で老後の資産を蓄えるようにという話も出てきました。そうすると、一般の個人向けの投資助言という需要が出てきてはいます。そこは金融商品取引法の世界では、投資顧問助言業の範囲ではありつつも、誰がそのサービスを提供するのか、主に想定されているのは、証券の系列というような大きな投資顧問会社ではなくて、ファイナンシャル・プランナーでした。ここにミスマッチが生じています。

一般の投資助言の需要がどんどん高まりつつあるなか、現在の投資助言代理業よりは、もうちょっと緩めるのであればどうすればいいのか。現在でも投資助言代理業は法人に限らず、個人でも取れます。一般個人向けとあえて限定するからには、何かしら簡素なものにするということでしょう。業者内部の体制を簡素化する、業務執行体制という部分を緩める。これがひとつあります。

あるいは営業保証金500万円という話。個人で営業されているFPの方たちにとってなかなかしんどい要件かと思いますが、これを100万円とか50万円にする。それと引き換えに、個人向けということで、できる業務の範囲をどのように絞るのかというところも併せて問題になってくると思います。

いただいた質問では『資産額で切るのはどうか?』というお話がありました。これは一つの考え方としてあります。あるいは助言の内容を絞る。新しいことを制度として整備を官庁に求めていく場合は、して欲しい人たちの中で意見集約することが重要なことだと思います。現在の制度でもできてしまうので、おそらく金融商品取引法を変えるという話にはならないと思います。むしろ財務局での投資助言業の登録において、審査体制を一般個人向けであれば緩めるという感じかなと思います。ひょっとしたら法改正をされるのかもしれません。ただ、いずれにしても「それではどういう制度にするのですか?」というのは、作ってほしい側で示さなくてはいけない。

業務範囲の限定は、資産額というのは一つの案としてあると思います。それが1000万円にしろ2000万円にしろ、その範囲内であれば個別銘柄すべての助言ができるというのは、『ちょっとしんどいのかな?』というのが個人的な印象です。つまり投資助言業というのは、助言という名前で軽く流されているところがありますが、その実態としては、前提として投資顧問の担い手としての証券アナリストが、ある程度市場に蓄積されなくてはならないというのがありました。助言という言葉でできてしまう範囲は、個別株も各証券会社のアナリストが作っているような分析を踏まえた売買推奨のところまで含まれるわけです。

例えば「1000万円なら、全然そこまでの能力がない人にも売り買い推奨をさせてもいいだろうか?」とはならないというのが個人的な印象です。そうすると、分散をどんどんかけていくことで、個別のリスクを取らないような助言。具体的には「インデックスを買えばいいんじゃないですか?」「インデックスを買いましょう!」ぐらいなら、理屈としては通じると思いますが、これも制度設計がなかなか悩ましいところです。このように、一般向けの投資助言業でやるのであれば、できる範囲をというものを意志結集することが必要にはなってきます。
講演では、投資助言の登録への課題や、日々ファイナンシャル・プランナー業をしていくうえで、コンプライアンスに関わる疑問点に対して一つ一つ丁寧に解説いただきました。