【Vol.232】知って得する、ちょっと差がつく トリビア・コーナー

トリビア研究家 末崎 孝幸

末崎 孝幸氏

1945年生まれ。1968年一橋大学商学部卒業、同年日興證券入社。調査部門、資産運用部門などを経て、日興アセットマネジメント執行役員(調査本部長)を務める。2004年に退職。Facebook上での氏のトリビア投稿は好評を博している。


タイトー創業者コーガンと安江仙弘

安江大佐

(1)(株)タイトーは、現在スクウェア・エニックスの子会社となっているが、平成18年(2006)3月まで東証1部上場会社だった。前身は昭和25年(1950)ユダヤ人のミハエル・コーガンが設立した「太東洋行」である。「太東」とは「極東の猶太(ユダヤ)人会社」を意味している
 この会社は40数年ほど前にインベーダー・ゲームで一世を風靡、50年ほど前には「オリンピアゲーム」(パチスロの原型ゲーム機)、クレーンゲームなどのヒット商品を出している。コーガンは日本でのゲーム機の普及に貢献したのち昭和59年(1984)死去(享年64)。

(2)創業者のコーガンは昭和13年のオトポール事件で多くのユダヤ人保護に尽力した樋口季一郎中将、安江仙弘(のりひろ)大佐と親交があった。戦後、安江大佐はソ連に拘束され、昭和25年にハバロフスク収容所で病死した(享年62)。その後葬儀が挙げられていないことを知ったコーガンは在満時代にユダヤ人保護に奔走していた安江に深い恩義を感じていたため、昭和29年失意の生活を強いられていた安江の遺族に「在日ユダヤ協会で一切の費用を持つから好きなようにやってください」と申し出ている。

(追記1)安江大佐に感銘を受け、親日家になったコーガンは昭和14年に来日し、「早稲田経済学院」で貿易実業を学んだ。滞在中、ロシア文学者の米川正夫氏の家に下宿し、彼のドストエフスキーの翻訳を手伝っている。彼は流暢な日本語を話しながら「安江さんに助けられたユダヤ人の数は5万人に上る」と語っている。(オトポール事件で樋口、安江らが保護したユダヤ人は数千人から3万人といわれ正確な人数は不明。コーガンが5万人と言ったのは助けられたユダヤ人とその後の子供などを含む数字と思われる)

(追記2)イスラエルの首都エルサレムにはユダヤ民族に貢献した人を記したゴールデンブックというのがある。このゴールデンブックにメンデルスゾーン、アインシュタインらとともに、樋口季一郎、杉原千畝、安江仙弘の名が記載されている。

・写真は安江仙弘大佐Wikipediaより

宴もたけなわ

 (武漢ウイルスの感染以降宴会の機会が減少してしまったが)宴会の終わりが近づくと、幹事が「宴はたけなわではございますが、予定の時間がまいりましたのでそろそろお開きとさせていただきます」などと言ったりする。

 この場合の「たけなわ」を漢字では「酣」(音読みでは「かん」)、酒に甘いと書く。これはお酒を発酵させるときに次第に甘くなってくるという状態を表す言葉であり「物事の盛り」という意味がある。そのため、酒宴の席において、この「酣(たけなわ)」という言葉を使って締めの言葉として使われるようになったのである。

御曹司(元々は誰のことか?)

 平安時代、宮中や貴族の私室のことを敬って御曹司(曹司はもともと部屋の意味)といっていたが、転じてそこに住まう人のことを指す言葉となった。

 源平の時代では、平家の子息を公達(きんだち)と呼ぶようになったのに対し、源氏の子息は「御曹司」といわれていた。とくにこの時代は、源義経のことだけを「御曹司」(または九郎御曹司)といっており、「御曹司」は義経の代名詞になったのである。

奈良の大仏は千葉県にもある

奈良の大仏

奈良の大仏といえば奈良市東大寺の大仏が有名だが、千葉県市原市奈良字大仏台にも「奈良の大仏」がある。仏像がある地名の奈良から「奈良の大仏」と呼ばれている。平安時代、平将門が聖武天皇が建立した大仏に対抗して、931年にこの大仏を建立したと伝えられている。

東日本大震災時に像が台座から落ちて損壊したが、市と住民の手によって2011年11月に修復が完了した。

また、昭和49年に市原市の指定文化財に指定されている。ただ、史実としての裏付けが十分ではないため、史跡ではなく名勝として指定されている。

・写真はWikipediaより

イージス艦

 遠くの敵機を正確に探知できる索敵能力、迅速に状況を判断・対応できる情報処理能力、一度に多くの目標と交戦できる対空射撃能力を備える画期的な装置をイージスシステムというが、こうした装置を搭載した艦をイージス艦という。したがってイージス艦は、巡洋艦、駆逐艦といった軍艦の艦種をいうものではなく、巡洋艦・駆逐艦・フリゲートの3つの艦種に搭載されている。

このイージス(Aegis)という言葉は、ギリシア神話における女神アテナが用いる防具「アイギス」の英語読みである。アイギスはあらゆる邪悪・災厄を払う魔除けの能力を持つとされているが、もともとは山羊の皮で作られた「盾」を意味する言葉だ。