【Vol.257】FIWA認定会員 投稿コーナー

保険の見直し相談で顧客満足を高めるポイント


寄稿
内田 英子, FIWA®

内田 英子 プロフィール

Uchida

こんにちは。FIWA®正会員の内田英子と申します。
私は現在愛媛県松山市を拠点とし、ファイナンシャルプランナーとして活動しております。来月日本FP協会の広島のスタディグループにてお話しさせていただく機会をいただきまして、以下のタイトルで保険をテーマにお話しさせていただく予定です。


今まさにそのレジュメを書いている真最中なのですが、書きながら改めてファイナンシャルプランナーという仕事は、身近で多くの方が関心を持っているお金について、広い視点で顧客本位にサポートすることを求められながら、それらを言語化することがとても難しい仕事であると感じています。

2019年に開業届を提出して以降、人生における大きなお買い物の決断や人生の選択を、安心して悩める場所を提供したい、その一心で続け、講演や執筆、相談業務などさまざまな機会にお声かけをいただきながら活動の幅を徐々に広げてまいりましたが、いつも自分自身の頭の中には答えが見つけられないままの問いがありました。それは「アドバイザーとして自分の強みとなるノウハウは何なのか」というものです。
ところが、そんな状況を変えるきっかけを先日得ることができました。FIWA®の新理事長でもあります岩城みずほさんが新しく立ち上げられた認定アドバイザー研修講座に参加した際、岩城さんとお話しさせていただく機会があったのですが、その際「公的年金・企業年金を強みにすればいい」というアドバイスをいただいたのです。

日頃の相談業務では、家計にひもづくあらゆる分野の専門的な知識を使っています。わたしの場合は執筆や講演においても生命保険や損害保険、住宅ローンや資産運用など、広く携わっているため、かえって自分の強みが分からないでいたのですが、思い返せば日頃の相談業務では以下のような流れで行っています。
まずは公的年金と退職金制度をベースとし将来の家計を投影→そのうえで税制や公的保障を加味した保険や投資、住宅ローンなどへの望ましい予算と資産配置を診断→各種商品を選別するアイデアを提供(保険・住宅ローン・団信・投資信託等)→生涯の可処分所得を増やす資産形成を支援

日頃さまざまなご相談をお受けしていますが、いずれも以上の流れに沿ってアドバイスを行っています。自分自身の認識にかけていましたが、言語化すれば、公的年金・企業年金を土台として生涯可処分所得を増やす合理的な選択のアドバイザー業務を行っている、ということなのでしょう。はじめて納得のいく筋を通せたように思いました。
この気付きなしでは、金融商品の販売に携わらないアドバイザーとしての自分のノウハウを言語化することはきっと遠のいていたことでしょう。今回お引き受けしたセミナーのレジュメは、なかなか筆が進まなかったのではないかと思っています。

保険選択において顧客本位のアドバイスのためのポイントとは何か
今、書き進めているレジュメの内容を少しご紹介したいと思います。さまざまご意見があろうかと存じますが、個人的には保険選択において顧客本位のアドバイスとなるポイントは以下の2点であると考えています。

  • 保険で備えるべきリスクを確認する
  • 将来の家計を投影し、好ましい資産配置を踏まえた上で保険への予算を配分する

なぜかと言えば、近年は保険の必要性を感じながらも、消費者の取捨選択する意識が高まっていると推測するからです。

生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」によれば、保険の加入率は全体では94%を超えており、近年の総合満足度は改善、新規加入者の9割超が商品・サービスに満足と答えているそうです。
ところが、実際に保険に費やしている費用は増えているのかというと、そうではないようです。以下のデータからは、地域差はあるものの保険への支出金額は減少傾向にあることが推察されます。

IL20240504_Uchida2
出所:生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」
IL20240504_3
(出所:統計局 2014年・2019年「全国家計構造調査」より著者作成
実収入に占める以下の金額合計の割合
医療保険料、他の非貯蓄型保険料、個人年金保険料、他の保険料)

わたしが日頃、主に活動している愛媛は四国地方にあり、比較的保険への支出が多い地域のようですが、それでも相談業務を振り返ると、保険料負担はできるだけ減らしたいという意識を持つ方は多いように感じています。一方、将来のお金に不安を抱える方は20~60代において約8割と、多くの方が将来の家計に不安を感じているそうです。

IL20240504_Uchida1
出典 : オカネコ お金に関する調査 2023 | オカネコマガジン

こういった背景をふまえ、顧客本位の保険選択のアドバイスにおいて具体的には、以下のような点を抑えることが望ましいのではないかと考えます。

  1. 保険で備えるのが望ましい家庭ごとの経済的損失を、見える化する
  2. ライフプランニングを行い、望ましい家計のあり方から必要な老後資金額を算出。資産形成の道筋を立て、保険の予算を診断する。公的保障の内容を確認し、保険を選別する
  3. 保険によらない万が一の備えについても広い視点でアドバイスを行う

保障は大切だと思いますし、人生100年時代においては、保険は上手に活用することによって万が一のときに資産の取り崩しを遅らせ、資産形成を途切れさせないという強みを持っているものであると考えています。また、日ごろは特定の企業によらず、さまざまな保険商品を見ていますが、いい保険商品は確かにあるとも考えています。ただ、その一方で人生を過ごす期間は長くなってきており、人生の晩年にご自身の尊厳を守る資金を準備しておくためにも、資産形成を妨げない合理的な選別と生活設計は必要なのであろうと考えます。

日々さまざまな難しさに直面していますが、引き続き広い視点で公的年金・企業年金を土台としながら望ましい資金配分にもとづく取捨選択を支援し、生涯可処分所得を増やすアドバイスを提供していきたいと思います。
末筆ではございますが、最後までお読みいただきましたことに感謝申し上げます。