【Vol.254】FIWAマンスリー・セミナー講演より(講演2)

「ウォール街のランダムウォーカー」を読み解く(5)

講演 FIWA理事長
岡本 和久 CFA, FIWA®
レポーター 赤堀 薫里

バートン・マルキールの『ウォール街のランダムウォーカー』を読み解いています。この本が出て50周年です。全部で4部の構成ですが、5回にわたって、1回につき1部ずつお話をしていきたいと思っています。5回目の今回は、ウォール街ではなく、兜町をどうランダムウォークするのかをお話しします。


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大きなテーマとして、一つは心の面の問題であるファイナンシャルヒーリング。もう一つは運用のもう少し具体的なお話です。
心、生き方、ライフプラン、生活と基礎知識、実践、知識、成功のための教え、いずれにしても、心の面、生活の面、そして運用の面、これらは本来一体になっているべきものですが、どうも資産運用というと、「何を買ったらいいのか?」、そこに飛びついてしまう傾向があります。そうではないことをお話ししたいと思います。

最初に考える必要があることは、どんな自分になりたいのかということです。
やはり人生そのもののビジョンやミッション。そのために何が必要かというと、瞑想や祈り、静かな時を持って自分の心の内側を眺めてみることが大切です。また、人生の仕上げとは、いっぱいの「しあわせ」と、たくさんの「ありがとう」、身も心も「げんき」という、この「し・あ・げ」が大事だということです。

我々の人生の目的はなんでしょう。朝起きて生活して、夜になると寝る。何のためにこれをずっと繰り返しているのか。それはお金持ちになりたい、偉くなりたい、有名になりたい、ということではなく、やはり「しあわせ持ち」になりたいからでしょう。それが我々の生きている目標です。そのためには自分がどんな自分になりたいのかということとも関連してくるわけです。

これまで、私は子ども向けにハッピー・マネー四分法というお話をしてきました。最初に教えるのはお金は感謝のしるしということです。お金で自分が欲しいもの、必要なものが手に入る。そうすると「ありがたい」と思う。だから、自分が持っている大事なお金を相手に渡してあげる。

では、どうしたらお金を得られるのかというと、お金は感謝のしるしですから、人に感謝されることをすることが必要です。それが仕事なのです。仕えるという言葉は自分より上位のものに奉仕するという意味です。我々にとって一番上位にあるのが世の中です。だから世の中に仕えることが仕事なのです。そして、みんなに感謝されることをして、稼いだお金をどう使うのかお話をしてきました。ハッピー・マネー四分法ということで、「つかう」「ためる」「ふやす」「ゆずる」です。

「つかう」とは、今の自分が喜ぶ。「ためる」とは、少し先の自分が喜ぶ。「ゆずる」とは、自分ではなくて、今、困っている人や、世の中のためにゆずる。そしてずっと自分の将来のために「ふやす」。これは投資です。さらに自分のお金を投資することで投資先企業が良い世の中創りに貢献する。

ハッピー・マネー®四分法はさらにハッピー・ライフへの四ステップというものを最近考えています。「つかう」「ためる」「ふやす」「ゆずる」というのは単にこのお金をどうするのかというだけではなくて、「つかう」とは、自分の能力やエネルギーを他の人のために使う。「どうぞ」と言って、電車で席を譲るというような小さなことを相手に与えてあげる。そうすると相手から今度は「ありがとう」と言われる。受取った感謝を貯めることができる。感謝がだんだん貯まってくると、自分の行為の中でどういうものが一番みんなに喜ばれるのかだんだんわかってきます。そして世の中でどのように自分の能力が役立つのか見極めることができます。人を笑顔にすることがどれぐらいできるのか。それが自分の仕事になっていくわけです。そして最後が世の中の人に平和で幸せな世界を「ゆずる」。このような新しい展開をしたいなと考えています。

人生の目的とは、しあわせ持ちになることですが、しあわせ持ちとは一体何なのか?健康、愛する存在、交友関係、趣味や楽しみ、そして社会貢献と金融資産です。お金とは大きな枠組みの中の一つでしかありません。健康、愛する存在、交友関係、趣味・楽しみ、社会貢献、金融資産の6つが上手くバランスが取れて外側に広がっている。それが重要だということです。そして同時に人生には、学びの時代、働きの時代、遊びの時代という3つのステージがある。

この3つのステージを通じてこの6つの資産をバランス良く増やす。これらはハッピーライフのための資産、しあわせ資産だと考えてもらえたらいいと思います。これをバランスの取れた形で少しずつ大きくしていく。これが人生というものではないかと考えています。

やはり最初に、ライフプランが必要だと思います。家計の見直しと予測。資産、負債、収入、支出の状況。ニーズとウォンツに切り分け。任意的な支出と非任意的な支出。本当に無駄な保険にたくさん入っているような、過剰なリスクプロテクションは避けるべきです。また将来を見極めてどのようなキャッシュフローになるのか。こういったことを総合的に見直す。ここからまず本当は始まります。

それに基づいてライフプランが出来上がって、マネープランが明確になり、マネープランの中のインベストメントプラン、投資方針が決り、インベストメントプランのその先に、投資して得た収益をどのような形で使っていくのかというスペンディングプランがあると位置付けられます。つまり資産運用は、あくまでこの4つの中のたった1つの要素であるということを忘れてはいけないと思います。

講演では、将来の自分は今の自分が支えることの重要性を説き、投機、投資、運用の違いを説明。また投資の法則やアドバイザーという伴走者の必要性について解説。最後に喜寿を迎えられた、ご自身の半生を振り返られました。