【Vol.243】知って得する、ちょっと差がつく トリビア・コーナー

トリビア研究家 末崎 孝幸

末崎 孝幸氏

1945年生まれ。1968年一橋大学商学部卒業、同年日興證券入社。調査部門、資産運用部門などを経て、日興アセットマネジメント執行役員(調査本部長)を務める。2004年に退職。Facebook上での氏のトリビア投稿は好評を博している


 

ルビ(を振る)

 難読漢字などに振り仮名をつけることを「ルビを振る」というが、この場合のルビは宝石のルビーのこと。イギリスでは、活字の大きさごとに宝石の名前が付けられていた。明治時代に日本の新聞記事に使用されていた活字のサイズは5号(10.5ポイント)。

そして新聞活字の振り仮名には7号活字(5.25ポイント)が使われており、この7号活字に近いサイズ(5.5ポイント)の活字をイギリスではルビーと読んでいたことから、日本でも7号活字が「ルビ活字」と呼ばれるようになったのである。

 (追記)ルビー以外の活字の大きさと宝石例・・・4.5ポイント=ダイヤモンド、5ポイント=パール、6.5ポイント=エメラルド

ルビ

天王星、海王星に「王」の字がついているのはなぜか

 太陽系の惑星には、火星や木星などがあるが、太陽から遠い「天王星」「海王星」には「王」の字がついている。

実はこの2つの惑星は神様の名にちなんでおり(天王星はギリシャ神話の天の神である「ウラノス」、海王星はローマ神話の海の王である「ネプチューン」(ギリシャ神話のポセイドンに相当)に由来する)、日本語に訳されるときに「王」の字が充てられたのである。

 なお、2006年に惑星から準惑星になった冥王星はローマ神話に登場する冥府の王である「プルート」に由来している。

悲喜こもごも(の本来の意味)

 漢字で書くと「悲喜交々」。春先に、入学試験の合格発表ニュースなどで「いつもながらの悲喜交々の光景が見られました」という言い方がされるが、この使い方は間違いであり「明暗を分けた」などと言うべきだろう。

「悲喜こもごも」の意味は、一人の人間の心の中で悲しみと喜びが混じり合う、あるいは交互に去来する状態のこと。だから、同じ場所で喜んでいる人と悲しんでいる人が混じり合っている状態をいう言葉ではない。

目抜き通り

目貫

 繁華街などの人通りの多い通りを「目抜き通り」というが、この「目抜き」にはどんな意味合いがあるのだろうか。

 「目抜き」は刀に由来する言葉で、もともとは刀の「目貫(めぬき)」を意味する。目貫は柄(つか、刀を握る部分)と刀身の両方の穴を通して刀を固定するための金具のこと。刀身にある穴は目釘穴で、目を貫いて固定するので「目貫」という。「目貫」が壊れると刀身が柄から抜けてしまうため、「目貫」は刀にとって重要な役割を果たしている。

 「目貫」は刀の中でも重要な役割を果たしていることから「目立つもの」を「目貫」と言うようになり、そこから「目貫→目抜き」と変化して街の中で華やかな大通りのことを「目抜き通り」と呼ぶようになったのである。

中田喜直と「早春賦」

 作曲家中田喜直には「夏の思い出」「ちいさい秋みつけた」「雪の降るまちを」のそれぞれ夏、秋、冬をテーマにしたヒット曲がある。春をテーマにした「もうすぐ春だ」「春のむすめ」などの曲もあるが、春の曲はほとんど知られていない。

 これについて中田喜直は、春の歌もいろいろ作ったのだがヒットしない。そこでなぜかと考えていたら、ふと思い当たることがあった。「早春賦」という歌が今でもよく歌われているが、これは私の父(中田章)が作曲した唯一知られている曲で、あとは何もない。歌われている曲がたった一つしかないのである。それが春の歌であるから、私はなるべく邪魔をしないで、敬意を表することにした、と講演の時などに語っていた。