【Vol.242】FIWAマンスリー・セミナー講演より(講演2)

計量分析ツールの使い方

講演 岡本 和久 CFA, FIWA
レポーター 赤堀 薫里

岡本和久20220623

今回はポートフォリオ理論の基礎についてと、計量モデルを使ってできること、ポートフォリオ分析ツール『FIWA®つみたてインディくん』について紹介します。

FIWA®のHP上にある、家計の資産形成応援ツールを開くと、非常に幅広くいろいろなことに使える年間使用料2万円の本格版と、若干制約がある無料のプロトタイプ版があります。まずは無料プロトタイプで少しやってみて、それから本格版に移行するのも良いかもしれません。今日は、この本格版をベースにお話をします。

このツールでは、4つのシミュレーションが可能です。1つは、株価指数連動定額積立投資シミュレーション。単一の株価指数に連動した、過去データに基づく定額積立投資のケースです。2番目は複数の株価指数を使った過去データに基づくシミュレーション。3番目は積立投資による将来の資産のシミュレーション。4番目に、資産取り崩しによる将来の資産シミュレーションです。

例えば、毎月の投資額を、仮に1万円とします。配当は基本的に再投資をします。投資期間は1998年7月から2022年までとし、その期間を分析します。これらの設定は簡単に変更することができます。

今回はグローバルに投資をするということで、世界市場を使ってみます。毎月1万円ずつ、1998年から2022年11月まで、24年4か月の期間での投資成果は、1,060万円になりました。年率の利回りは9.62%、リスクは18.54、シャープ比率は0.5190だったと表示されました。シャープ比率とは、リスク1単位あたりでリターンがどれぐらいあるのかを示します。この24年4か月の推移はグラフとして見ることができます。

次に、日本株のパフォーマンスはどうだったのか見てみましょう。先ほどの世界株で見たときは、1,060万になっていたのが、日本は620万ぐらいにしかなっていません。年率リターンが5.88%、世界株のリターンは9.62%でした。また、リスクは17.03、世界株はリターンが高い分だけリスクも少し高く、18.54でした。ただし、日本のシャープ比率は0.34で先ほどの世界株0.51と比較すると、魅力度は低かったということが言えます。

さらにアメリカ株を見てみます。世界株が約1,000万、日本株が約600万だったのが、アメリカ株の場合は、1,300~1,400万円ぐらい。年率リターンが11.49%でリスクが18.20。シャープ比率は0.63と、シャープ比率も非常に高い。この期間においては、アメリカが非常に魅力的だったということがわかります。

インディくんの複数の株価指数の過去データに基づく定額積立投資のケースを見てみます。期間は1998年7月からで、1万円ずつ投資をします。例えば配分比率は、アメリカ株50%、日本株50%にします。すると現在の資産額は1,000万円ぐらい。年率リターンが9.29。リスクは16.40、シャープ比率が0.56。このように日本株だけを持っているより、パフォーマンスはかなり良くなるということがわかります。

しかもリスクが大幅に下がります。なぜ下がるのか。それはアメリカ株と日本株の動きが違う、つまり相関係数が低いためです。さらに最適ポートフォリオを確認することができます。

アメリカ株と日本株の配分比率を変えてみます。面白いことは、日本株100%のうち、10%だけ、ずっとハイリスクのアメリカ株を加えると、トータルのリスクが減ることです。2割にするともっと減る。3割にするとさらにリスクは減ります。4割でも少し減っていく。でも、ここが要するにリスク最小値になります。

それから今度はアメリカ株を増やすほどリターンは向上していきます。逆にリスクも少しずつ上がっていく。リスクの高いものでも、動きの違うものを組み入れると、トータルの合成ポートフォリオのリスクは下がっていく局面があるが、ずっと下がるわけではなく、ある時点まで下がっていくと、そこから徐々に今度は上がっていくことになります。これはすごく重要なポイントで、隠し味みたいに、少しリスクの高いものを入れていく。違う動きをしている以上、リスクを取っても大きなメリットがある。逆にリスクを下げることができます。これを具体的な数値で見ることもできます。

感覚的に、「アメリカ株上がっているから、もうちょっと増やしましょう」という勘と度胸ではなく、こういうツールを使い、データに基づいた資産の配分をすることが大切なのです。間違った場合、自分で考えるときに、どの入力データが間違っていたのかを知りながらやっていくということが、合理的な資産の運用というものに繋がっていくのです。

講演では、FIWA®つみたてインディくんの使用方法の解説の予備知識として必要である、ポートフォリオ理論の基礎についての説明がありました。また、FIWA®つみたてインディくんができる具体的なシミュレーションの内容と、アドバイスのツールとしての活かし方についての解説をしていただきました。最後に岡本さんが使っているMVO (Mean Variance Optimization)とモンテカルロ・シミュレーションの使用方法をご紹介くださいました。