【Vol.240】知って得する、ちょっと差がつく トリビア・コーナー

トリビア研究家 末崎 孝幸

末崎 孝幸氏

1945年生まれ。1968年一橋大学商学部卒業、同年日興證券入社。調査部門、資産運用部門などを経て、日興アセットマネジメント執行役員(調査本部長)を務める。2004年に退職。Facebook上での氏のトリビア投稿は好評を博している

シクラメンの和名

シクラメン


 冬の花、シクラメンが目につく季節になったが、この花の和名には「豚の饅頭」と「篝火花(カガリビバナ)」の2種類がある。

 前者の『豚の饅頭』は、植物学者大久保三郎がシクラメンの英名:sow bread(雌豚のパン=シクラメンの球根が豚の餌になることから命名)を日本語に訳した名である。

 後者の『篝火花』はシクラメンを見たある日本の貴婦人(歌人で教育者である九条武子といわれている)が「これはかがり火の様な花ですね」と言ったのを聞いた(日本の植物学の父といわれる)牧野富太郎が名づけた。前者は球根を、後者は花を見て名づけている。しかし、現在ではシクラメンに対して和名を用いることはほとんどない。

「金の草鞋」を「きんのわらじ」と読むのは間違い?

 「ひとつ年上の女房は金の草鞋を履いてでもさがせ」ということわざがあるが、この場合の「金の草鞋」は「きんのわらじ」ではなく、「かねのわらじ」と読むのが正しい。

 この場合の「金」は「きん」ではなく、「鉄」の意味である。いくら歩いても擦り切れることがない鉄製の草鞋を履いて探し回ることから、根気強く探すことを意味するようになったのである。

赤いスイートピーが発売された時、赤色のスイートピーは存在していなかった

松田聖子の名曲「赤いスイートピー」がリリースされたのは昭和57年1月。その当時、スイートピーに赤い色のものはなく、白やクリーム色、ピンクなどが主流であった。

「赤いスイートピー」が大ヒットしたことをきっかけに、約18年もの年月をかけて品種改良が重ねられ、平成14年12月に三重県伊勢市のスイートピー農家によって鮮やかな赤い色のスイートピーが誕生した。

作詞をした松本隆氏も「実は当時、スイートピーに赤はなくて、発売した後に“ないよ、そんな色”って教えてくれた人がいて“やばいな”」と後に語っている。

悲喜こもごも

 漢字で書くと「悲喜交々」。春先に、入学試験の合格発表ニュースなどで「いつもながらの悲喜交々の光景が見られました」という言い方がされるが、この使い方は間違いで「明暗を分けた」と言うべきだろう。

「悲喜こもごも」の本来の意味は、一人の人間の心の中で悲しみと喜びが混じり合う、あるいは交互に去来する状態のこと。だから、同じ場所で喜んでいる人と悲しんでいる人が混じり合っている状態をいう言葉ではない。

「頌春」は何と読む?

 年賀状で使われる『頌春』は、「新春をほめたたえる」という意味を持つ言葉だが、なんと読むのだろうか。

「頌」に「公」という文字が入っていることから「こうしゅん」と読む人がいるかもしれないが、「しょうしゅん」と読むのが正解。「賀春」とほぼ同じ意味だ。

 「頌(しょう)」には「人の徳や物の美などをほめたたえること、また、ほめたたえた詩や歌」という意味がある。