【Vol.240】FIWA認定会員 投稿コーナー

金融教育を公教育に K&Nの活動10年を振り返って

FIWA®正会員
金融教育実務家 西岡 奈美

自己紹介

ナンシー

みなさん、こんにちは。私は兵庫県伊丹市に住むファイナンシャルプランナーです。ここ最近の肩書は、金融教育実務家と名乗るようにしています。現場を知る実務家というこの肩書をかなり気に入って使っています。趣味はバドミントンで、中学生の子ども2人と主人の4人家族です。

今回寄稿の目的

普段の活動は「キャサリンとナンシーの金融教育」という名前で、キャサリン(竹内かおり氏)と二人一組で子ども向けに金融教育を行っています。ファイナンシャルプランナーが「お金のお医者さん」と言われることから、キャサリンはブルー、ナンシー(私)はピンクの白衣を着て、主に公立小中学生向けにお金の授業を10年にわたり提供してきました。二人一組の活動実績は現在360を超え、最近は企業案件も増えてきています。
二人一組の活動であることから、普段は二人で一つの物を執筆することが多いのですが、今回は私ナンシーから見た「キャサリンとナンシーの金融教育」の10年間の道のりと、これからの目標を書き記したいと思い、筆を執ることにしました。お付き合いいただければ幸いです。

なぜ二人で活動することになったのか?

K&N

もともと私たち二人は子ども向け金銭教育を行う団体の認定講師同期でした。「私のことはお金のチャリーンという音に似ているので、キャサリンと呼んでください。」と自己紹介した彼女を見て、「チャリーンとキャサリンって似ているかしら??変わった人がいるわね。」と思ったことは忘れません。その時も今も、彼女は私には持ち合わせていない感覚を持っていました。ですが、彼女とは偶然同じ証券会社の先輩だったこともあり、話が合い仲良くなりました。

ある日、彼女から「子どもの小学校でお金の授業ができることになったから、手伝ってほしい」と電話がかかってきました。小学校の個人懇談でお金の授業について話したところ、なんと4授業もの開催が突然決まって、一人で授業を行うのは大変だと同期に協力を求めたのです。声を掛けてくれた同期の中で、地理的にも近く、小さいころから先生になりたかった私はこれ幸いと言わんばかりに、一緒に授業を行わせてもらうことにしました。その授業が好評で、最初は1学年実施だったものが次の年には3学年実施に増え、その後全学年実施となり、2人で授業を行うスタイルが定着していきました。私が教員免許の知識を使って授業計画案を創り、キャサリンがそれに基づいてスライドを作成する基本のスタイルはここで培われたものです。彼女と力を合わせて金融教育を行うことが楽しかったし、講座を行えば行うほど、「キャサリンとなら、なにか今とは違う世界を見られるかもしれない」と思うようになりました。
当初、「キャサリンと西岡奈美」という、なんともアンバランスな名前で活動していましたが、その後(キャサリンは嫌がりましたが)二人のブランドイメージを強くするために私も「ナンシー」と名乗ることにし、白衣を購入。キャサリンがひげ眼鏡とカチューシャを付ける今のスタイルに固定されたのは出会って5年ほど経ってからでした。

活動する中での道のり、苦労など

授業風景:当時は私がヒゲ眼鏡をかけていたこともありました
授業風景:当時は私がヒゲ眼鏡をかけていたこともありました

ありがたいことに10年間、比較的順調に活動してきましたが、それでも常に右肩上がりのチャートを描いたわけではなく、2人ともにそれなりの努力と苦労はしてきました。
最も課題になったのは、お金のことを教えているのにお金にならないこと、つまり稼げないことでした。お金にならないどころか、身銭を切って授業に出かけ、マイナスになることも活動当初は多々ありました。同じ理由で多くの仲間が知識と能力を身に付けたにも関わらず、去っていきました。
また、二人とも主婦で子育てしながらの活動でしたので、家族や親族の理解を得るには時間がかかりました。お金を稼げるならまだしも、休みの日に子どもを置いて講座のために外出する。自分の中では「仕事」なんだけれども、家族や親族から見れば「仕事?」だったわけです。また、金融教育の講師という仕事が(特に親族には)ピンとこず、「一体何やってるの?」と思われていたと感じます。
この二つの課題を解決する転機が、ちょうど講座実績が100を過ぎたあたりに起きます。それは金融庁主催の講座講師を務めたことでした。今まで身銭を切って活動してきた負債を一気に返済できた上に、家族から「これは、れっきとした仕事なのではないか?!」と信用を得られました。実はこの機会を得られたのは、岡本先生がきっかけとなっています。岡本先生には感謝です。あの機会がなければ、私たちは解散していたかもしれません。

金融庁イベントでの風景
金融庁イベントでの風景

今後実現させたいこと

今年、活動の10年目を迎えたこともあり、法人化しました。株式会社マネイクと言います。この寄稿文のタイトルを見てください。金融教育を「公」教育にと言っているのに株式会社??― 実は法人の形態はいろいろ考えましたが、株式会社の仕組みを愛するキャサリンの想いもあり、株式会社としました。後追いの意味付けではあるものの、「私たちは金融教育で稼ぐ。株式会社として稼ぐことで世の中に貢献する。」という社会への意思表示だと思っています。そうすることで「金融教育の講師って稼げるんだ。私もやってみたいな」と思う人が増えて、市場が拡大すれば善いと思っています。
これを読んでくださっている皆様もご存知の通り、現在の学習指導要領では「金融教育の充実」が謳われています。今後学校教育では、ますます金融教育が注目されることになります。現在、私は伊丹市教育委員会の教育委員という役職を拝命していますが、学校教育の中に金融教育を本当の意味で公教育にするにはまだ多くの隔たりと課題があります。今後は私の経験を活かし、学校教育と金融教育を繋ぐお仕事がしたいと思っています。まだまだこれから。キャサリンとは新しい世界が見られると思っています。皆様応援してくださると嬉しいです。

金融庁のお部屋で撮らせていただいた写真
金融庁のお部屋で撮らせていただいた写真