【Vol.238】FIWA認定会員 投稿コーナー

内田英子(CFP,FIWA*)さんのブログより「適切なつみたて投資の家計への組み入れ」

*FIWAは金融商品の販売を行わないアドバイザーに与えられる称号です

今号よりFIWA認定会員の方の投稿をご紹介するコーナーを掲載します。
第一号は今回で二度目の内田英子さん、松山で活躍しているホンモノのアドバイザーです。5回にわたって紹介させていただきます。

寄稿:FIWA®協認定正会員 内田 英子
CFP、FP1級、消費生活アドバイザー

Uchida Eiko

FPオフィス幸せ家族ラボ代表。
証券会社、保険ショップ勤務を経て、独立。
かつての専業主婦経験も活かしながら、子育て世帯を中心に家計の総合医として暮らしの健康を維持するあらゆる選択のアドバイスを金融機関から完全に独立した立場で行っている。

HP:https://fplabo-happyfamily.com/
Instagram:https://www.instagram.com/eiko_fp/

① iDeCoよりもつみたてNISAを優先するケース

前回のコラムでは、社会の変化からみるつみたて投資の有効性について書きました。一人ひとりの資産形成と生涯の自立した家計づくりが求められる今、つみたて投資は積極的に資産形成に活用していきたいところです。

とはいえ、例えばつみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)、一般NISAなど、つみたて投資に利用できる枠組みはさまざまあります。どのような形で家計に組み込み、利用していけばいいのでしょうか。適切な利用方法はご家庭によっても異なりますが、今回は私が携わった家計相談の現場から、iDeCoよりもつみたてNISAを優先したケースをご紹介します。

ご相談者データ

Aさん(39歳・会社員)、妻(41歳・公務員)、長女(2歳・保育園)

愛媛県在住
妻は現在第二子を妊娠しており(妊娠8か月)、育休中。

ご相談内容

住宅取得を検討中。第一子入学前に入居を希望。
適正な借入額を把握すると同時に家計の在り方とライフプランについて振り返り、クリアにしたい。

ご相談時のAさん夫婦の希望と将来の見解

  • 教育:こどもは二人。二人とも高校まで公立を想定。大学は国公立を想定し、下宿と仕送りも見込む。
  • 住宅:現在賃貸暮らし。育休中に建売住宅取得を検討中。住宅ローンは夫婦で借入額を折半して契約しようと考えている。終の棲家とする予定。
  • 働き方:夫婦とも今後の職に不安はないが、夫に昇給は見込めないと思っている。
  • 生活:家計管理は妻が担っており貯蓄を確保しているが、これからに不安がある。保険も複数加入しており、加入内容についても見直したい。
    つみたて投資を予定しており、夫がインターネットで情報収集を行っているがわからないことも多く、不安もある。
  • 老後:できる限り働き続けたい。介護や療養が必要な場合は施設への入居を希望する。

◆Aさんの家計データ

  • 年間収支  約70万円
  • 年間世帯収入計 842万円
  • Aさん 年収(給与収入・額面)450万円※時短勤務後夫 年収(給与収入・額面) 380万円
  • 児童手当 12万円
  • 金融資産計 920万円
    • 預貯金 660万円
    • 保険(積立型)260万円

1.当面の貯蓄水準は維持するも教育費のピーク時には資金が枯渇

夫婦共働きで頑張っていらっしゃるAさんご夫婦。お忙しい中も将来のためにできることをお二人で話し合いながら着実にされていらっしゃいます。

大きなお買い物であるマイホームの取得を前に、育休に入ったことを契機とし、ご相談にいらっしゃいました。住宅取得を踏まえ、家計の在り方について見直したいとのことでしたので、ライフプランシミュレーションを実施して現状の家計分析を行いました。

その結果、育休復帰後、世帯年収は回復することが見込まれることから、住宅取得とお子様の成長に伴って支出額は増加するものの当面の貯蓄水準は維持できることが見込まれました。

ただし、対策なしのままではお子様が大学に進学後、教育費のピーク時には資金が枯渇する可能性も見えてきました。

住宅ローンの繰り上げ返済も希望されていましたが、できそうにありません。その結果、60歳時点で1000万円を超える住宅ローンも残り、退職金を見込んでも退職後の生活は、大きく変えなければならない状況が推測されました。

また、Aさんが公務員であることから、万が一の備えについては何となく大丈夫だろうとの認識をお持ちでしたが、必要保障額は大きく不足していました。

2.つみたて投資は必要なものの、iDeCoを優先すると手元資金が不足する可能性がある

必要保障額が不足していることから、まずは保険を含めた家計の見直しを行いました。

団体保険に多く加入されていましたが、医療保障に偏っており死亡保障は不足していました。そこで必要な保障内容を提案し、医療保険と死亡保険を見直すサポートを行いました。

一方、老後生活におけるキャッシュフローを読み解いた結果、預貯金のみの資産形成では老後資金が不足することが見込まれました。そこで、つみたて投資もご提案に加えることとしました。

つみたて投資は共働きということもあり、まずは掛金が所得控除にもなるiDeCoでシミュレーションを行いました。しかし、iDeCoを始めとする確定拠出年金は退職までお金を引き出せません。Aさんご家族の場合、iDeCoのみの拠出に限定してしまうと、お子様の教育資金のピーク時には預貯金が不足することがわかりました。

そこで、iDeCoではなく、つみたてNISAを使ったつみたて投資をご提案しました。

3.無理のない家計を土台に資産形成を切れ目なく実施する

面談では、家計の現状をお伝えし、今からできることを余すことなくお伝えしました。家計を見直す際、細かなお金の使い方に口をはさんだり、ご本人が疲弊してしまうようなご提案はしないようにしています。Aさんの場合も、家計を客観的に見て、要点を絞った効果の見込まれる家計の見直しをご提案しました。

Aさんは育休という貴重な機会を活かし、さらに熱心に家計へ向き合う作業に取り組まれました。その結果ゆとりも残しつつ、無理はせず、無駄を省く家計の見直しができました。住宅ローンの借入額減額を含めた住宅取得プランの見直しも可能となり、繰り上げ返済資金も捻出できそうです。

つみたて投資へ拠出する掛金も増額し、iDeCoの併用も可能となりました。
Aさんのがんばりが結果的に、生涯の家計において1500万円を超える“使えるお金”を生み出しました。

4.まとめ

つみたて投資において、つみたてNISAを優先した事例をご紹介しました。つみたて投資は資産形成において有効な手段ですが、残念ながら魔法の道具ではありません。家計に組み込み、つみたて投資を組み込んだ資産形成を成功に導くためには、ほとんどの場合適切な選択とお手入れが必要です。

適切な選択をご自身でできる方ももちろんいらっしゃるでしょうが、必ずしも全員がおひとりのお力で成功に導くつみたて投資の選択をできるものではありません。

つみたて投資にもさまざまな選択肢があります。一方で大切にしたいものもまた、それぞれです。

つみたて投資は続けることができれば強力な武器となります。だからこそ、ご自身の望みを叶えつつも資産形成を成功へと導く、適切な選択を後押ししてくれるアドバイザーの存在は大切です。

「ご自身が望む暮らしの実現のために」

一人でも多くの方がそのようなアドバイザーと出会えることを心から願っています。