【Vol.234】しあわせ持ちへのロードマップ PART4:DIY資産運用~応用編

講演 岡本 和久 CFA, FIWA
レポーター 赤堀 薫里

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岡本和久

今回はDIY資産運用全体の応用編です。まず、コア・サテライト戦略について述べます。人生を通じての資産運用の中核はコア・ポートフォリオです。しかし、ある程度、投資に経験を積んでくると一歩先に進みたくなるのは当然ですし、それは良いことです。大切なことはあくまでコアは守りの戦略、サテライトは攻めの戦術であるということです。

最近知り合いの若い人が、老後のために自分も何かやらなければいけないと、毎月2万円で全世界のインデックスファンドの積立を積立NISAで始めました。2~3か月後、友達にいろいろなことを聴き、さらにS&P500指数のファンドを2万円積立てることにしました。『わかっているのかな?』と思うことは、全世界の株式の約半分はアメリカ株。つまり2万円のうちの1万円はアメリカ株を買っているのです。さらに2万円でS&P500を買うということは、毎月4万円の投資のうちの3万円はアメリカ株を買う。

もし仮にアメリカ株が大きく崩れるような状況になったときは、結構大きなダメージがあります。ダメ―ジがあっても続けていけばいいのですが、その辺の理解がどれくらい進んでいるのか。やはり守りの部分と攻めの部分をちゃんと理解することが必要です。サテライトだから上がりそうな投資対象なら何でも良いというのではなく、あくまで全体としてのバランスを意識することも大切です。コア・サテライト戦略は正しく理解してもらいたいものです。

コアが中心にあり、その周りにサテライトを置いていく。サテライトとして、アクティブ投資、個別銘柄投資、戦術的資産配分。もう1つは期日や金額目標を達成するための戦略を解説します。私はアクティブ投信はあまりおすすめしません。アクティブ投信は玉石混交でその見分けが難しいからです。

コアとサテライトの比率ですが、だいたいの感じで、コアは70~100%。サテライトの部分は全部合計して3割くらいかなと考えています。まずは守りをきちんと固めることです。退職後のための資産形成と、退職後の資産価値の防衛を目的とする、戦略的投資、これらはサテライトとして攻めの部分になります。攻めというのは市場全体の時価総額構成比から乖離した配分比率を持つ。これは戦術的な投資対象。戦略というのは、特定の目的を達成するために対局的な視点で組織行動を計画遂行する方策。通常は長期的であり包括的です。戦術は、具体的な作戦や任務達成のための具体的方法です。これは比較的短期。その場その場で局所的にどう対応していくのかということです。戦略を担当するのがコアで、戦術を担当するのがサテライトです。

戦術的資産配分(タクティカル・アセット・アロケーション、TAA)の部分をどう考えるのか。一般的には、株式・債券・キャッシュの3資産方式と、株式・現金の2資産方式があります。しかし、今は現金も債券の金利がほとんどゼロに等しいので、だいたい株式と現金かと考えればいいでしょう。

あとは戦術的な配分対象として地域、国のどこがいいのか。業種はどうか。大型株か小型株か。あるいは特定のテーマか。テーマをベースに投資対象を選ぶのはあまりいいと思いませんがそういう考え方もある。例えば日本株がこれから平均以上に値上がりすると思えば、コアの部分に日本株を少し上乗せする。日本株でしばらくやって、それが全世界に広がっていき、世界全体の株式ブームがきそうだという判断があった場合、日本株の部分はだんだん減らして、世界株に移していく。

もちろん世界株の中には日本株が入っています。その株式全体が割高になってきたなと思ってきたら、しばらくはサテライトはなしにしてコアだけにしておく。またアメリカの小型株が面白そうだと思ったらそれを入れてみる。株式の配分比率は変わっていきます。でもコアの部分は変えません。そのままずっとおいておく。あとはサテライト部分でいいと思うところを持つ。

一番典型的な相対的魅力度の測り方は、『益利回り-国債利回り』、いわゆるイールド・スプレッドという指標です。株式の益利回り(PERの逆数)と国債の利回りのスプレッドのトレンドを見て、株の方に魅力がより高いか、債券の方が魅力は高いかということを判断するのが普通です。同時にそれぞれの市場の局面分析があります。これは相対論ではありません。例えば、日本、アメリカの株式市場がどんな局面にあるのか。

例えば、不況の真ん中の時は普通、低金利です、景気がだんだん回復していく。そして、回復が進んでいくと金利は上昇し始める。ちょうどアメリカはこの辺に今、差し掛かっています。それがさらに回復が進むと好況の時代に入っていきます。金利は結構高止まりを続けていく。でも高い金利が続いていくと、好況もだんだん陰りをみせていく。陰りをみせてくると金利も低下を始める。景気はさらに落ち込んで不況に入る。すると金利は低下していきます。さらに金融政策で低金利が導入される。

そのようなサイクルなのですが、ただ時計のように一方方向でグルグル回るのではなく、時に3歩前進2歩後退といった具合に、行ったり来たりしながらグルグル回っていきます。そういう意味で、例えば今のアメリカ株、日本株などはどんな局面にあるのかということを理解しながら、先ほど言ったような株式、債券の相対的な魅力度を加味しながら戦術を立てていく。これが戦術的な資産配分法ということになります。

講演ではサテライトとして、個別銘柄分析についての説明、株式会社の仕組み、株価の理論値、株式期待リターンの構成についての説明。戦術的アセットアロケーションの考え方についての解説。最後に良い世の中創りのためのお金の遣い方の王道をお話しくださいました。