【Vol.273】FIWAサロイン塾講演より(講演)

投資信託のコストを学ぶ

 特定非営利活動法人 みんなのお金のアドバイザー協会 代表理事 会長
ファイナンシャル・ヒーラー 兼 投資教育家
岡本 和久CFA
レポーター:赤堀 薫里


(以下は7月20日に開催された第四回サロイン塾での岡本の講演の後半部分を要約したものです)

投資信託は個人の資産運用になくてはならない投資対象です。しかし、その商品の組成と維持には安全性の観点から多くの関係者が関わっています。そのためにコストがかかるという問題があり、その点は注意が必要です。むろん、必要な仕事をしてくれる関係者に報酬を支払うのは当然ですが、支払っている対価に満足できる仕事をしてくれることが重要です。

投信信託を運営していくために必要な直接的な経費である信託報酬とは、信託銀行が取るコスト、投信会社が取るコスト、証券会社や銀行が取るコストの他にもいろいろな費用があります。これは全部、お客様である投資家の財産が蛇口からポタポタと水漏れをしている。

一つのパイをみんなで取り合っているわけです。証券会社は売買発注をしてほしい。販売会社は販売手数料が入るため投信を売買してほしい。投信会社は運用報酬が増えるので運用資産を増やしたい。国も税金取ろうと思っている。マスコミも本や雑誌を売りたいと思っているし、投資した企業も無駄遣いをする、経営者がリッチになりたいという会社もあるかも知れません。結局、投資家がもらっている残りものは本当に少しになってしまう。バンガードの創業者であるジョン・ボーグルさんは「金融資産全体から生まれるグロス、名目リターンから金融システムにかかるコストを差し引いたものが、投資家が実際に得るネットのリターンに等しい。投資家は投資という巨額のコストがかかる食物連鎖の底辺に置かれて食い物にされている」と、大胆な指摘をしています。

問題は生活者が投資する企業の生み出す付加価値から流出する資金が本当に正当なものであるかどうかです。この部分が抜け落ちてしまっている。日本では、信託報酬がコストの指標になっていますが、海外ではもっと幅広い分野のコストも含めた「総経費率」が開示されています。これは、信託報酬にその他の経費も全部加えて、それを純資産額で割った経費の比率です。

次にアクティブ運用とインデックス運用の信託報酬の差が長期的にどのような影響を資産に及ぼすのかを見てみます。一例として信託報酬がアクティブファンドが1.08%、インデックスファンドが0.11%だったとします。コスト控除前のパフォーマンスは、アクティブファンドとインデックスファンドは共に同じだったと想定します。コストが完全ゼロの純粋な指数の場合1987年に100だったものが35年後の2022年には1347になっています。アクティブ運用で1.08%ずつ毎年取られていくと947にしかなっていない。一方、インデックスファンドは、コストを少し取られますから1297。つまりパフォーマンスの差は全部信託報酬の差から生まれてきます。そういうことを反映して実際にアクティブファンドは指数に勝てていません。

S&P Dow Jonse Indices社では世界のアクティブとインデックス運用のパフォーマンスの比較を定期的にモニターしています。インデックスのパフォーマンスを下回っている日本のアクティブファンドの割合を2025年4月の時点で見てみます。10年経ってみると、日本大型株ファンドでは85%のアクティブが指数に負けている。中小型株だと少し成績はいいけれど、それでも54%負けている。外国株ファンドになるともうほとんど勝てない。これは運用技術という問題とともに、コストが大きな差を生み出している証拠でしょう。

次に、投資信託の情報を得る方法は、情報源として2つあります。公式の情報源としては、投資信託説明書(交付目論見書)があります。これは、投資信託の基本目的、性格といったファンドのプロフィールみたいなものです。しっかり読んでみると、図がたくさん入っているのでそんなに難しくありません。だいたいイメージと合っているかということを考えてください。それから運用報告書。これはパフォーマンスがどうだったか。直近の四半期ごとのパフォーマンスをきちんと解説しています。この2種類を見ればどんなファンドか簡単にわかります。

まずは、投資信託を一つ探してみる。グローバル、インデックス、そして低コスト、というような条件を満たすものが見つかったら、あとは私がいつも言っている「75文字の資産運用と資産形成」。「できるだけ若いうちから毎月収入の一定金額を全世界の株式インデックス投資に積み立て投資をする。相場変動、上がろうが下がろうが関わらず、それをリタイアするまで絶対にやめない。以上」ということです。これだけやっておいていただければそれでいい。30代の方、40代の方、50代の方20年、30年、40年、投資するつもりで、とにかく薄い紙をずっと積んでいくように積み立て投資をしていく。薄紙投資でやっていけばいいんだと思います。

投資信託は、なくてはならない運用の素材です。しかし、投資信託なら何でもいいのかと言ったらそうではなくて、いくつかの条件を満たすものをきちんと選んで、低コストのものをとにかく長い期間積み立て投資をしていく。あとは相場が上がろうが下がろうが、そんなことは関係ない。ただ最初の入り口を間違えずにきちんとした考え方を持つ。投信はちゃんとしたフィロソフィーがなければいけないのと同じように、個人投資家の方もこれは守らなければいけないということをきちんと知る。それは単純なことですが、それを着実に続けていくことがいいでしょう。

講演当日の動画は以下のサイトからごらんいただけます。

https://youtu.be/tLdTWhAr5pE?si=nwNL2ENghjl7DLmm

(文責FIWA®