【Vol.273】FIWAサムライズ勉強会より
「お金のクセ」を知ると、人生が動き出す ファイナンシャル・セラピーが教えてくれる「心とお金の整え方」
上原 千華子(うえはら ちかこ)氏
FIWA正会員・金融教育家
(株)ウェルス・マインド・アプローチ代表取締役

心とお金というテーマを科学的にひもといていきます。それでは始めにこの問いからスタートします。「皆さんにとってお金と付き合うとはどんな状態だと思いますか?」お金の使い方には感情や価値観が現れます。「貯めたいのに使ってしまう。」「将来のために不安で動けない」というような気持ちになることは、自分の意志が弱いからではありません。 実はこうした気持ちの背景には感情や思考の癖が深く関わっていることが多いのです。大事なことは、自分の感情や癖を理解した上で整える視点を持つことです。
感情や行動、社会性の観点からみてみます。感情の部分は、不安、罪悪感、喜び、満足感など、お金に対する心の反応です。 行動は、お金に対する行動をいいます。具体的にはお金を使う、貯める、増やす、管理する、人に与えるなどです。また、お金は社会性も関わってきます。自分だけではなくて家族や社会への経済的な影響があります。今日は単にこうすれば貯まる、増えるという話ではなく、私らしく納得して使える。そんなお金との付き合い方を感情、脳の癖、行動経済学などの視点から一緒に探っていきます。
今日のゴールは、お金の悩みの裏にある感情に気づいて、お金と向きあう3つのヒントを持ち帰っていただきます。まず 1つ目、知識だけでは動けない理由が分かります。 2つ目、あなたのお金の癖に気づきます。3つ目は明日からできる変化のヒントを見つけてもらいます。誰かの正解ではなくて、自分にとって納得を見つけていただくことが大切です。心とお金の両方にフォーカスするのがファイナンシャルセラピーという新しいアプローチです。それでは「なぜ知識だけでは動けないのか」行動できない理由に迫っていきます。
お金に限らず、知識があっても「自分は変われないなと感じることはありませんか?」その理由の1つが私たちの無意識に染みついた癖です。知識、情報があってもなぜか動けない。それは感情のブロックがあるからです。これは、主に不安、恐怖、過去の記憶や経験が元になっています。行動を変えるためにはまず自分のお金の癖を知ることが大切です。 そして次に、自分の感情に気づくことで行動が変わりやすくなります。
ではこのお金癖の根っこにあるものとはどういうものでしょうか?老後が不安だとか、このままだとちょっとお金を使いすぎたかなということはありませんか?老後が不安というのは、年代に限らずある悩みだと思います。お金の悩みの多くは、知識よりも感情の問題とも言えます。感情は行動に直結します。この感情とお金をつなぐ学問がファイナンシャルセラピーです。ファイナンシャルセラピーとは、簡単に言うと心理学と脳科学、お金の知識を掛け合わせた新しい分野です。
ファイナンシャルセラピーではお金の行動を変える前にまず心を整えることを大切にしています。心が整うと感情に振り回されることが減ります。そして判断力が増して行動が変わり、結果として家計にも好循環が生まれる。感情・判断力・行動・家計の4 つの変化が循環していくわけです。それは単に行動の問題ではなく、その背景にある感情や思考の癖が影響している場合が多いのです。金融の知識やテクニックも必要ですが、自分のお金の癖に気づいて感情の整理をすることでお金の扱い方が変わり自分らしい選択がしやすくなります。整った心にお金は自然と流れ始める。それがファイナンシャルセラピーの目指す姿です。
このようなお金の癖は、どのような仕組みでできているのでしょうか?自分は考えて決めていると思っていても、実は脳は過去の経験や感情、習慣に基づいて自動的に選択していることが多いようです。頭で考えて買うか我慢するか決めているつもりでも、実は9割以上は無意識による判断と言われています。過去の自分の癖や記憶が無意識に働いて脳はすでに自動で選択するモードになっています。つまり自分という頭でよく考えているつもりでも、なぜか知らないけれどこんなことしちゃったということがあるということにまず気づくことが行動を変える第1歩になります。
それではこのお金の癖は、いつどのように身につくのでしょうか?実は多くの研究で金銭感覚の土台は9歳頃までに形作られると言われています。スキャモンの発育曲線は、人の体や心がどの時期にどのくらい成長するものかを示しています。中でも神経型、つまり脳や心の土台は6歳から9歳で一気に発達をして、この時期に価値観や行動パターンが芽吹きやすい。この頃の脳は周りの言動をスポンジのように吸収します。
例えば親が「うちはお金がない」と口癖のように言っていると子供は無意識に「お金=不安なもの」とか、「お金は足りないもの」とインプットしてしまいます。このようなお金に対する前提というものは大人になってからのお金の使い方や判断にも影響を与えていることがあります。だからこそ自分の行動にモヤモヤしたときに、過去の前提に気づくことがお金との付き合い方を整える第一歩になります。
講演では、なぜお金の悩みにセラピー視点が必要なのかを事例とワークを交え、わかりやすく解説。最後にお金の癖は直すのではなく整えることが大事であり、小さな成功体験がお金の自信を育て、明日の行動を変える一歩となると結ばれました。


