【Vol.269】FIWAサムライズ勉強会より 

割安感満載のJ-REIT(講演)

龍谷大学経済学部教授
竹中 正治氏


今回は割安感満載のJ-REIT投資に勝機あり~そのリスクとリターンを解剖する~というテーマでお話をします。

Mr. Takenaka
竹中 正治氏

J-REITの下落はいつから始まったのか2003年から遡ってみます。東証REIT指数と日経平均株価、MSCI.U.S.REIT指数というアメリカのREIT指数を重ねてみてみます。すると面白いことに、2020~2021年ぐらいまでは株価とJ-REITが非常に似た動きをしていました。ただREITは、例えば2006~2007年と東京中心に不動産のプチバブルみたいになった時に株価以上に舞い上がってしまった。

その後にリーマンショック後は株価以上に下げ幅が大きいですね。しばらく2012年まで底値圏で横ばいでしたが、アベノミクス、金融緩和という形になり、ここでまた株価以上に上がった、これ5月だったと思いますが、ズドンと下がるというように割と株価と一緒に動いてきました。ところが2021年ぐらいまでがその動きの最後で、その後は日経平均が3万円、そして一時4万円と上がっていく過程でずるずると下がってきた。これが株価とJ-REITの関係です。

一方、アメリカのREITも2021年までよかったのですが、2022年からズドンと下がっています。今ようやくちょっと上がってきた。このズドンと下がった理由としては、アメリカは消費者物価の上昇率でインフレ率が2022年2023年と非常に上がりすぎ、一時期前年同月比で9%ぐらいまで行ってしまった。これはアメリカの中央銀行FRBにとっても予想外の出来事だったので2022年の春から慌てて金利を上げていきました。それがREITに響いて非常に下がってきた。その時株価も下がりました。

アメリカのREIT市場は世界最大の規模のため、当然外人投資家もアメリカのREITを持ちながら日本のREITや他の国のREITにも手を出している人たちが非常に多い状態です。やはり最大の本国のREIT市場の動きに日本のREIT市場も影響を受けている面もあります。それから面白いことは、日本に関しては不動産の現物市場は堅調です。現物の市場とREITの市場の間に大きなギャップ、乖離ができています。堅調な不動産の現物市場と軟調なJ-REITの一種の不整合です。

市場の価格とファンダメンタルなバリューは違います。でも市場価格は上がりすぎたり下がりすぎたりを繰り返して動いていく。これは頭に置いておく一つの概念図です。今どういうところにいるのか考えていただけたらいいでしょう。REITの歴史を遡ると、東京の2006~2007年は東京のプチバブルです。この時は明らかにファンダメンタルのバリューを超えて、市場価格が舞い上がってしまった。逆にリーマンショックの時はファンダメンタルのバリューを超えて下がってしまった。そのようにイメージすると何をしたらいいのかなということも自ずとわかってくるでしょう。

要するに市場価格がファンダメンタルバリューより下がってしまったところで買っていいということです。ピンポイントで底値で買うことはできません。大体投資家はナンピンという行為をするわけです。長期投資はファンダメンタルのバリューが市場平均に比べて割安だと思ったときに思い切って買い増しをする。あるいは定額積立をしていたときは少なくとも止めない。それが1つの勝つためのセオリーだと思います。

個人投資家さんとお話をしていると、みなさん実学で『なんぼ儲かった、損した』とか、あるいはスマートな方でも年率何%で儲かったとか、リターンのお話ばかりされます。ところが金融の世界ではリターンとリスクは、両方欠かせない条件です。特に長期に渡ってポートフォリオを維持して積立投資で10年20年やっていこうと思ったときには、例えばリーマンショックみたいなことが起こり得るわけです。あるいはITバブルの崩壊、直近では2020年春に起こった新型コロナショック。そういうことは20年30年の間には、2回3回普通に起こります。そういう時に耐えられる持続可能なポートフォリオを維持していくためには、リスクに対する備えが欠かせないでしょう。

そういう意味では株式投資で積立投資をやって新NISAで目いっぱいやっていくというのはいいのですが、配分は考えた方がいい。そういった観点からみると今のJ-REITは昔と違います。昔は株式と一緒に変動して、リターンは株式より低いのに変動性だけJ-REITは高かった未成熟なマーケットでした。2000年代初頭にREITが始まった時は、株式市場とは少し違った動きをして、ミドルリスク、ミドルリターンの資産クラスとしてREITは期待されていました。

ところがそうはならなかった。それは、市場が未成熟であったということとREITの市場はそんなに大きくないためです。今でもやっと時価総額15兆円くらい。一方株式の時価総額は東証全体900数十兆円いっています。債券市場と国債市場だけで1千兆円超えてしまっています。どうも小さいがゆえにあおられてしまう部分がある。ただ今のREITは株式によってあおられているわけではなくて、むしろ債券の市場に過剰反応してしまっている。そして割安という結果になってしまっているのではないのかなと思います。

講演では、J-REIT価格下落、低迷の3つの要因の解説、またJ-REITの割安割高を示すNAV倍率と不動産収益率NOI、J-RIETの選び方のポイントをわかりやすく説明。最後に自分にとって望ましいポートフォリオの考え方についてFIWA®インディ君を用い、わかりやすく解説いただきました。