【Vol.266】FIWAサロイン塾講演より(講演2)

株式会社、株式、株価を学ぶ

 特定非営利活動法人 みんなのお金のアドバイザー協会 代表理事 会長
ファイナンシャル・ヒーラー 兼 投資教育家
岡本 和久CFA
レポーター:赤堀 薫里


今日は株式会社の仕組みと株式、債券の本質というお話をします。会社が事業をするためには資産が必要です。この資産の次にはお金が必要です。誰かから借りてきたお金と、株主が出してくれているお金の2種類。預金をしている人は銀行を通じてお金が企業に流れています。債券を買っている人は債券に投資をすることでお金が企業に流れて行く。あるいは、機関投資家か投資信託が債券を買って、その買った債券のお金が流れて行く。要するに借りてきたお金です。

もう一方は株主です。株式の投資家がいます。間接的な人たちもたくさんいますが、今、日本の成人ほとんどは全員株主です。例えば年金保険料を支払っている人は、支払っている年金保険料のお金が株式になっていろいろな企業に投資をされているわけです。株主のお金は株主資本。借りてきたお金は負債。この二つのお金を活用して事業を営んでいます。

会社が事業を営むと売り上げが立ちます。当然モノを作るわけですから人件費も含めて経費が掛かります。その経費の一部として借りてきたお金の負債、金利も含まれてきます。そして税金も払います。また、役員報酬もあります。残りが利益になります。金利は預金者に行く。あるいは債券の保有者にも行きます。株式を持っている人は、内部留保の部分が会社の中に留められて、残りの部分を配当金として株主は得るわけです。そうすると、残りの利益は内部留保と配当金として株主のものになります。

面白いことに、株主は配当金をもらいますが、内部留保として貯めている部分も実は株主のお金であり、株主が保有している資産です。そして、内部留保の分だけ株主資本が増えていきます。しかも配当金ももらえます。債券の場合は金利を受け取ったらそれでおしまいです。例えば、ある会社の株主資本が利益を生み出した場合、いろいろな経費を支払って、残った利益の一部は内部留保として株主資本に積み上げられ、配当金は株主に支払われます。内部留保の部分は現金ではもらってはいませんが、企業の中で株主が保有するものとして積み上げられていく。これをずっと毎年毎年続けていくと内部留保もだんだん増えていきます。内部留保が増えることによって企業が翌年の利益をより大きく上げやすくなるわけです。そして配当金ももらっていく。

でも株価というものは、価値が年々上がっていくにも関わらず上に行ったり下に行ったり、すごく大きく振れていきます。これが株式の特徴です。私は「株式は価値があるから有価証券だ」といいますが、価値がだんだん増加していくので増加証券であると思います。ただ、持っているのが1年、2年ではそんなに大きく変わりません。長く持つことで増加の効果が非常に大きくなっていき、株主が持っている価値もどんどん増えていく。ただ、中には運悪くその企業が倒産してしまうと、その会社の株式は増加せず価値がなくなってしまいます。しかし、もし世界中のいろいろな国の産業の主な企業を全部保有していたとしたら、それが全部潰れることはないでしょう。資本主義が続いている限りそれはない。そうするとやはり長期で保有しているということが増加証券のメリットを受けるためには最も重要なことであるということが言えるわけです。

また同じように何とかショック、例えばITバブルが崩壊した後は、大きな暴落が続くこともあります。暴落が続いていき、経済活動が完全にストップして世界が滅亡に向かっていくということはないわけです。株式を買い、株主であるということは、株主資本を保有するということです。株主は会社の資産から借金を支払った残り物(株主資本)を所有している。そして株主は売り上げからすべての経費を差し引いた残り物(内部留保と配当金)をもらう。株主が所有する株主資本は、増加をしていく増加証券である。だから残り物には福があるというのが株式なんですね。

大事なことは、安い時に買って高い時に売るということをやろうとしても上手くいかないわけです。半分以上の確率で外れることが多いでしょう。上手くいく時も必ず上手くいくということは決してありません。売ったり買ったりしていると仲介をする人たちは利益を得るかもしれないけれども、それを持っている人は損をしたり得をしたり、でも全部通算するとちょっとやられてしまうかもしれないですね。それよりは小さな種をまいて、水をやって日に当てて、肥料をやって育てていく。そうするとその木は大きな実りをもたらしてくれる。それが本来の増加証券の投資である。これが一番基本にある大事な部分。投資というのは売ったり買ったりして儲けるものではない。保有して儲けることが一番大事なことです。(文責FIWA®