【Vol.265】今月のひとこと 新春対談

会長 岡本和久
理事長 岩城みずほ
10年計画の真ん中に立って
(岡本)新年おめでとうございます。
FIWA®が設立されたのが2019年の9月24日ということなので、ほぼ5年と3か月くらいですよね。
設立の時、設立記念の会をやって、「10年経ったらすごく世の中変わってると思うよ」っていう話を私はしたと思うのですが、ちょうど道半ばで「半分ぐらいまで来たな」というところですね。
半分と考えてみると、かなり大幅に変わってるなという感じがするんですよね。まだ十分ではないけれども、とにかくやっぱり2000万円問題ぐらいのところから始まって、だんだん少しずつみんな考えなきゃいけないなという意識ができてきた。特に金融庁がもちろん熱心だけれど、金融業界の中にも、これはビジネスチャンスだという見方も出てきたこともあるでしょう。この5年間経って、岩城さんどんなふうな感じを持ってますかね。
(岩城) 2022年に岸田前首相が新しい資本主義実現会議を作り、資産所得倍増プランを決定して、NISAの拡充を実現するためには顧客本位のアドバイザーを増やすことと国民の金融教育の強化をセットにして行うべきだということをおっしゃったことで、かなり風向きが変わったなと思いました。実際、金融審議会の顧客本位タスクフォースが始まったわけなんですが、当初は私は半信半疑だったですね。「本当かな、顧客本位ということをもう一回俎上に乗せ、今度こそ本気でやれるのか?」という思いがあったんですね。
それは2014年事務年度、森元長官が監督局長時代ですね、「顧客本位の業務運営」として金融行政の最重要施策としてフィデューシャリー・デューティ(FD)を打ち出し、金融事業者もFD宣言を金融庁に提出したりしましたが、めざましく変わるということはもちろんなく、結果的には一種形骸化していた面もありました。
しかし、今回は、私も審議会に出たり、金融庁の人とかなりの議論をしたりして、結構本気だなということが途中からわかりだして、「ひょっとしたら変わるかもしれない」って思うようになりました。私も審議会委員としてできる限りのことをやろうと思いました。
そして昨年、NISAが拡充し、JーFLECが設立しました。もちろんここからが本当のスタートです。しかし、金融事業者も「今のままではいけない、変わらなくちゃいけない」と意識し始めた人も、中にはいるんじゃないかと思っています。
(岡本) 本当に大きく風向きは変わったと思いますよね。それぞれみんな少しずつ危機感を持つというかね。それを商機と捉えるか、いろいろな人はいると思うけれども、やっぱり変わってきてる。その中核としてこれもまたちょっと言葉が遊びすぎてるような気はするんだけれども、やっぱりアドバイザーというものが注目を浴びるようになってきている。それはやはりこの5年間で非常に大きく変わったと思うんですよね。
ただ大切なのはFIWA®のミッションには2つあって、1つは「本物のアドバイザーをもっともっと増やしましょう」というのは当然あるわけですね。生活者のためのライフプラン、金銭、投資、資産運用等に関するアドバイスが完全に利益相反のない形で行われ、当協会の理念に基づき行動するお金のアドバイザーを育成、認定、支援すると、この部分はだから岩城さんも言ってたように、かなり50%か60%か、もうちょっと進んだかもしれないけど、とにかくスタートしてる。これは事実だと思うんですね。
ただ、もう一つ重要なのが生活者のためのミッションがあるわけです。「人生を通じてのお金との正しい付き合い方の知識を普及して自ら合理的効果的な資産運営を実行し、またはアドバイザーとの効果的生産的な関係を構築できるように啓発活動を行う」というこちらの方がやっぱりまだまだだと思うんですね。
なにか、今、行われているのは、やっぱり業界として新しい分野としてアドバイザーも作らなきゃいけないというので金融庁も含めて一生懸命やっている。ただそれとは別にお金に関する正しい知識という生活者の部分というのは実際ほとんど手が付いていないみたいな感じだと思うんですよね。今、例えばJーFLEC で教えているようなことを生活者に言ったって、それは全然分からないだろうと思うんですよね。
それがまた分かるようになる必要があるのかどうかっていうと疑問です。やはり生活者に浸透させていく部分は、私自身はちょうどこの10年計画の真ん中のところで、これからやっていきたいと思ってるんですね。「サロイン」っていう名前でやろうと思ってますけれども、とにかく個人投資家に「なぜ、今、自分のリタイア後のための資金を準備しなきゃならないのか」を認識してもらいたい。
先日、入院中、ベッドでパソコンを使ってずっと仕事してると看護師さんが「何してるんですか」とか「どんなお仕事ですか」と聞かれる。「いや、投資関係だよ」というと、彼らが聞いてくるのは「いいですね」っていう話なんですが、次に「NISAってやった方がいいんですか?」とか、そういう聞き方をするわけ。詳しくは知らないけど「NISAという儲かる手段」と考えている人もすごく多いですよね。そういうメッセージが、あるいは業界から出ているのかもしれない。これは、私はやっぱり非常に危険だと思うんですよね。
「NISAをやった方がいい」とか「やらない方がいい」とかいうことじゃなくて、「やらないと将来、苦しいですよ」っていうことをきちんと理解してもらう。「今の給料を全部、今の生活に使っていったら必ず将来困るんですよ」と言ってものすごい多額を将来のために預金していく。これでは全然、増えないし、今も苦しいし、将来も苦しい、一生涯通じて貧乏な生活を送らなきゃならない。だからやっぱり投資で資産を増やしていく必要がある。
投資で資産を増やすためには、「なぜ、例えば株式に投資した場合に資産が増えるか」というそういうメカニズムとか、一応、個人の人もそこはきちんと理解してもらいたいという気はすごくするんです。それがやっぱり次の課題だなと思っている。もちろんアドバイザーの育成はどんどん本来の姿で進んでいかなきゃいけない。ただ、逆に、「アドバイザー」と「生活者」の間に新しい利益相反が生じてはいけないと思う。そこは一番注意しなければいけない部分じゃないかと思うんですよね。商売のネタにされちゃうとその辺はどうですかね。そういう懸念っていうのはあるのかな、あるいはそんな心配することもないのか。
(岩城) 岡本さんの次の課題テーマは、「生活者のリテラシー向上」ということですね。私は、「認定アドバイザーのレベルの向上」ということをテーマとしています。国民の金融リテラシーが高まっていくということは、結果的に生活者にアドバイザーも選ばれる時代になるということです。有料でアドバイスを得ようと考えてもらうためには、アドバイザーが価値のあるアドバイスを与えられるということが最低限必要になってくると思います。FIWA®のアドバイザーはやはり違う、と思っていただけるように、レベルを上げたいと思っています。
岡本さんがおっしゃったように、アドバイザーと生活者、国民のみなさまが、効果的、生産的な関係を構築していけることが正しい姿だと思っています。アドバイザーは、儲け主義に走ってるんじゃないかというようなことになっては絶対にいけないと思います。
あと、例えばセミナーを受けたりすることで国民、生活者の方がリテラシーを高めて、それを実際に自分のためにどう活用していくのかが大切なのですが、セミナーを聞いてすぐ実行できる人は多くはありません。「じゃあやろう」と行動に起こすまでには、時間がかかったり、あるいは全く行動に結び付かなかったりするわけです。
それをアドバイザーが顧客本位の立場で伴走したり、背中を押してあげることが、ものすごく必要になってくる。そのためには、迷っているお客様に説得力を持って伝えなければならない。
セミナーを聞いてすごく分かったような気になっていたけど「そうなんだ。そうであれば絶対やらなきゃ!」みたいなところまで連れて行ってあげられるようなアドバイスが求められると思うんですよね。
説得力を持ったアドバイスをするためには、アドバイザーとしてのレベルをもっと上げていく必要があると思います。例えば、エビデンスを生かしてコンサルテーションをすることで説得力が増すということがあります。もちろん、過去の結果がそのまま将来に反映されるわけではありませんが、投資対象が過去どういう動きをしてきたか、下落しても慌てず焦らず運用を続けることで、こういう結果が得られたというデータを示すことは説得力の一つになると思います。
人生が長寿化、多様化している今、また、インフレも進んでいますし、誰にとっても長期で資産運用をすることは必要です。そういったこともしっかりと話せるアドバイザーの育成に尽力したいなと思っています。次の5年間は、私は、レベルの高いアドバイザーの育成をすることに力を入れていきたいです。
(岡本) そこはすごく大事なポイントでね。アドバイザーが金融機関から離れた形でアドバイザー独自の能力を高めていくというのは当然その通りです。ただ、その能力の中にはやっぱりコミュニケーションの能力ってすごく重要だと思うんですよね。だからJーFLECで覚えたことを、一生懸命それを個人の人たちに伝えたって分からないですよ。株と債券の違いだって分からない人が多い。私は1990年に年金運用の分野に入ったのだけれども、その時だって株と債券の違いって分からない常務理事がいっぱいいたからね。
そこから今はだいぶ進化してきてる。やっぱりそういう発展の歴史みたいなのがあると思うんですよ。個人に、難しいことを一生懸命教えてわかるかっていうと、そうじゃなくて、「あ。そうなんだ」って瞬間的に納得してもらえるようなそういうコミュニケーションができるようなアドバイザーに、個人の人が興味を持って「どうしてですか」、「どういうことですか」って聞いてくることに対して自分が持っている経験と知恵を出していけるような。そういうことっていうのは、これからアドバイザーの技術としてすごく求められるんじゃないかと思うんですよね。
最初からアルファだ、ベータだ、リスクだ、リターンだって、そういう話になるととてもついていけないだろうと思う。でも、例えば「今の給料全部使ってると、将来必ず困りますよ」って。それ一言ってあげると「ハッ」と瞬間的にわかるんだね。それからまた、それを受け止める生活者の側のレベルアップというか、選択肢として投資、資産運用というものがあるんだという発想、意識の選択肢のひとつとして入っていることが大切だと思う。
これも前に何回か話したことあるけれども、もう15年ぐらい前かな、20年ぐらい前かもしれない。サンフランシスコで乗ったタクシーの運ちゃんがね。エジプトかなんかから来た移民で、「あなたはどっから来たのか」と聞くので、「日本だよ」って。そして「どういう仕事してんだ」っていうから、「いや、投資教育をやってるんだ」って言ったらね。「そうか」って、ちょっと考えてて、「実は家に娘がいる。自分はタクシーの運転手だから非常に苦しい生活をしているが、でもなんとか娘だけは大学に行かせてやりたいと思ってる」と、「投資っていうものが非常に重要だというふうに話を聞くけれども、どうしたらそれを学ぶことができるのか」って聞いてきたわけね。
タクシーの中だからあんまり難しい話もできないし、「バンガードっていう会社があるからそこのホームページを見てごらん」という話をした。そして彼は私が料金払って降りようとしたら「ちょっと待って」って言って、紙出してきてね、「“Vangurd”ってこれに書いてくれ」というので書いてあげた。「じゃあ、これ見てみるから」って言ってた。
でも、私が関心したのは、彼の頭の中で投資が選択肢の一つとして入っていたということです。「どこに行ったらそれが勉強できるのか」という問いになっていた。そこのところまで生活者レベルを上げていきたいと思っているんだよね。だけど「なんかおいしいい話ない?」って、そのレベルで終わっちゃうんじゃなくて、やはり、もうちょっと違った何かを日本の1億人の人たちが少し感じるようになってほしいなと思っている。
「株式も単なる博打や金儲けのゲームではなく、人生を資金面で支える選択肢なんだ」と知ってほしいい。残念ながら、特に株式投資っていう形になると、そういう選択肢に入ってないですよね。「株なんかやらない方がいい」とかね。危ないとか、騙されるとか、そんなことばっかり。でもそうじゃなくて、株式というのはちゃんと価値が増えていく「増加証券なんですよ」っていう、そういうきちんとしたことを理解してもらう。それは難しい話ではない。難しいことは全然必要ないんだよね。それはアドバイザーがきちんと知っていればいいことでしょう。
やっぱりこれから少し私自身、それからインベストライフを通じたり、あるいはFIWA®の正・准会員の人たちみんながやっぱりその意識を持ってこの10年計画の後半には挑んでほしいと思いますよね。それをやることによって今度はアドバイザーの質も上がってくると思うね。お互いに相互作用で両方がだんだん良くなっていく。そして最終的に我々の大目標である「完全に独立、忠実なお金のアドバイザー業務が職業として確立する」。「正々堂々と報酬を受け取ることができる」ようになる。それが大事なんだと思うけどね。これからの5年間っていうのは、本当にすごく重要な時期になってくると思います。どうですか?あと、岩城さん、何か新年に皆さんに伝えたいこと。
(岩城) 岡本さんがおっしゃったこと、私も思ってます。アドバイザーっていう仕事は、自分の失敗なんかも含めて、経験したことすべてが糧になる仕事だと思うんですね。なので、もしかしたら少し苦手意識を持っている方がいらっしゃるかもしれないですが、勉強しながら、相談業務での体験も積み重ねながら、顧客本位のアドバイザーとしてやっていきたいという気持ちを大切に持ち続けて一歩一歩進んでいくことが大事だと思います。
私も相談業務を丸15年やってきて、今年16年目になるんですが、やっぱり一番大事なのは、お客さまが最終的に「できるかどうかちょっと不安なんだけど、やってみます。やっていきたいです」っていう気持ちになってもらうことだと感じています。
「これからやります。頑張ります」と、明るい表情でおっしゃるのを最後に聞けると、この相談業務はうまくいったなと思うんですよね。結局、その成果が確認できるのは、15年とか20年経ってからなので、とにかく今のその気持ちを忘れないで続けていただくことなんです。まずは一歩。「とにかくやってみよう」という気持ちを持ってもらえる。そういう経験はアドバイザー冥利に尽きるとても嬉しいことですので、そんな経験ができるアドバイザーがいっぱい増えるといいなと思います。
(岡本) だから10年、15年、20年、30年という人もいるかもしれないけど、その間にはもちろん大暴落もあれば大暴騰もあってね。その度にオロオロ、ドキドキする人も必ず出てきますよ。そういう時に大丈夫なんだよ、というので、説得力を持ってきちんと話ができる。それはやっぱり「アドバイザーは伴走者」とよく言っているけれども、でも本当にそれは重要な役割ですよね。ただ、隣を走っていればいいのではない。ランナーを成功に導くことが仕事です。
積み立てて保有を続けるのが投資なんだ。それを本当に納得してもらいたいと思うね。まあ、幸いね、インディ君のようなツールもあるわけだし、そういうものを活用しながら、まあ会員の皆さん、ぜひもっと、もっと種をいっぱいまいて、それで収穫期にこれからだんだん入っていくようにできたらいいなと思います。まあ、FIWA®の正会員もなかなか増えないと思う人も多いでしょう。でも人数がものすごく増えだした時は結構もう浸透しだした後ですよ。
会員もなかなか増えないから、今、一番価値のあることができる。頑張りましょう。「あの頃は大変だったよね」って必ず言う時がくる。岩城さん、いろいろ本当に大変だと思うけど、去年はとうとう理事長を押し付けちゃったけど、本当によくやってくれていると思いうれしく思っています。
(岩城)ありがとうございます。そうですね。今年の新しい活動ということで、私がしたいなと思っているのが、アドバイザリー・ボード・メンバーの先生方の勉強会です。先生方にFIWA®正・准会員のために勉強会をしていただき、それをアーカイブとしてストックしていって、新しく会員になった人にも見てもらうようにしたいと思っています。これについては、会員の中にもやりたいと手を挙げてくださっている方がいますので、正式にお願いしようと思っています。
もう一つFIWA®の友の会ですね。温かいご寄付をくださっているみなさんにお礼をしたいですし、新しく友の会の会員さんを増やしていきたいですね。サロインで一緒に何かできたらいいかなと思ってます
(岡本) そうだね。サロイン塾も申し込みが結構どんどん来てるんですよ。
(岩城) うれしいですね。あとはFacebookのクラブ・インベストライフですね。大きなグループになってるんだけど、うまく活用できてないので、ここもどうにかしたいなと思ってます。
(岡本) 会員のみなさんで結構、メルマガやブログなんか書いてる人もたくさんいるわけですよね。
例えば自分のメルマガあるいはブログをFIWA®のサイトにも載せてみるとかね、それ別に構わないと思うんですよ。あとはやっぱりクラブインベストライフですね。もしどうにか使えるんだったら、3000人くらいいますからね。いろいろ試しているうちに当たるものも出てくる。だから動いてないといけないのです。オンライン新年会もやりましょう。1月の第3日曜日の13時から14時30分までFIWA®サロイン塾があるのでその後ということでどうでしょう。
(岩城) ぜひやりましょう。
(岡本) ありがとうございます。引き続きよろしくお願いします。どんなことでも手助けします。
(岩城) ありがとうございました。ぜひ頑張りましょう!引き続きよろしくお願い申し上げます。
FIWA®からのセミナーのお知らせ
第1回 FIWA®サロイン塾
講義形式: Zoomによる全国ネット
開催: 2015年1月19日(日)午後1時より2時30分まで(90分)原則奇数月の第三日曜同時刻に開催します
参加費用: 無料
対象: 投資未経験者、初心者、アドバイザーの方々、仲間と投資勉強会など主催、参加している方(金融商品販売に関わる方はご遠慮いただいています)
<第一回テーマ>
① 株式会社、株式、株価を学ぶ
② 投機、投資、資産運用はどう違う?
③ フリー・ディスカッション
https://fiwa.or.jp/2024/12/16/4782/
その他のセミナー情報
下記のサイトをご覧ください。
セミナー | 特定非営利活動法人「みんなのお金のアドバイザー協会〜FIWA®」
FIWA presents 「FIWAみんなのお金チャンネル(YouTube)」配信中
岡本和久のDIY資産運用講座など過去、現在の動画をご覧いただけます。
https://www.youtube.com/@fiwa8445
FIWA presents「マネーマネーマネーfor you」開催中
金融商品の販売にかかわらない独立系アドバイザーが集まっていNPO法人みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)で、新しくポッドキャスト配信を始めました。ポッドキャストとは、後からいつでも聞くことができるラジオのようなものです。今後はFIWA会員のゲストトークも予定しています。
パーソナリティは小屋と、キャサリンとナンシーの3人が務めています。お金に関するさまざまな気になることを楽しく語っています。40代の子育て中の3人が幅広くFIWAのことを知ってもらうために、頑張りたいと思います。よろしくお願いいたします。
ファイナンシャル・ヒーラーの雑談トーク
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