【Vol.251】FIWAマンスリー・セミナー講演より(講演2)

「ウォール街のランダムウォーカー」を読み解く(2)

講演 FIWA理事長
岡本 和久 CFA, FIWA®
レポーター 赤堀 薫里

【Vol.251】FIWAマンスリー・セミナー講演より(講演2)
バートン・マルキールの『ウォール街のランダムウォーカー』を読み解いています。この本が出て50周年です。全部で4部の構成ですが、5回にわたって、1回につき1部ずつお話をしていきたいと思っています(最後の一回はまとめ)。


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マルキールのランダムウォーカーを読み解く第2回目です。今回はキモになる部分で、第2部のプロの投資家の成績表です。要するにマルキールはプロの世界は、満足のいくようなパフォーマンスはあげられないということをやや誇張して言っています。その一番の理由はプロの世界は競争の世界である。競争環境が厳しいほどパフォーマンスの足をお互いに引っ張ることになってしまうということです。

私は基本的に生活者の方は、全世界の株式インデックスファンドをずっと持っていればいいのではないのかということを言い続けています。別に私自身がアクティブ運用を全面的に否定しているわけではありません。ただ普通の人がやる分には、インデックスでいいのではないかということです。それが52年証券市場でやってきた結論です。やはりアクティブで勝っていくためには、ほとんどのアクティブ運用者がやっていることよりも遙かに大きな作業を長期に渡ってやり、やっと実現ができます。学ぶということも含めて、時間と労力を惜しみなく注ぎ込む。しかもやっている人が、天性の相場観も含めて才能を持っている人じゃないといけない。これはスーパーアクティブと私は言っています。

株式には変幻的な価値があり、それがある程度証券分析でわかるのですが、そのためには、スーパーアクティブな分析作業をしてやっと得られるものです。株価は基本的に実体を表わすものではなく、実態の影で、株式投機の短期的な予想は、特に心理的要素が余りにも多すぎるのであまり頼りにならない。長期でみれば株価は、株式の価値を中心に上下に変動している。それに乗っていくことは不可能ではないということです。それ以外のやり方でアクティブで儲かったということがあれば、それはスキルではなくて、むしろラック、運が良かったのではないのかと割り切っています。

確かにスーパーアクティブ運用者が運用するファンドを買うという選択肢もあります。ただ難しいのは、「今買って、30年後にバフェットさんのようなパフォーマンスになっているファンドは何ですか?」と言ってもわからないですよね。仮にわかったとしたら、それはみんなもすでにそのファンドを買って、そのファンドのパフォーマンスはあまりいいものではなくなってしまう。そういう宿命にあるということです。普通のアクティブはインデックスファンドになかなか勝てない、簡単に言えばそれが現実だと思います。

テクニカル分析のよりどころは、群集心理における集団形成本能がいったん始まったトレンドを持続させる。一つのトレンドはある程度続いていく。群集心理は続いていくという前提に基づいています。2番目に市場参加者間に企業のファンダメンタル情報の入手能力に差がある。だから早耳筋と遅耳筋があって、早耳の人はどんどん行動をとっていくけれど、遅い人は遅くなるから、一つのトレンドが続いていくということになります。投資家は新しい業績情報に対して、当初に過小にしか反応しない傾向がある。最初は小さい動きで上がりだす。でもだんだん上がりだすごとに、その情報に対して確信度が高まっていく。

それに対してマルキールは、チャート分析がなぜ上手くいかないのか。チャーティストはトレンドが形成された後にしか投資することはしない。チャートを見て、チャートに買いサインが出たから買う。つまり、みんなが買い出した後しか買えない。反対に、トレンドが崩れた後にしか売ることができない。

同じ手法を用いる人の数が多くなるほど、その有効性は低くなる。いろいろな投資手法があります。ただそれが非常に上手く相場に機能するということになればなるほど、同じデータを見る。同じチャートを見る。同じ手法をフォローする。それらをしていることによって、その手法そのもの、データそのものの有効性が薄れていくということを言っています。それは本当にそうだと思います。

株価評価の要素ということで、他の条件が一緒であれば、合理的な投資家は配当や利益成長率が高い成長の持続期間が長いほど高い価格をつける。企業の利益のうち、現金、配当、ないしは自社株買いで還元される割合が多いほど高い株価をつける。合理的な投資家はその株価のリスクが低いほど高い価格を支払うはずである。一般的に金利水準が低いほど株価は高くなる。ゼロ金利、マイナス金利はどうであろうか?これは別の要素が入ってきてしまいます。

講演では、日本のテクニカル分析の歴史の解説。また、株価分析の二つの手法であるテクニカル分析とファンダメンタル分析について説明。最後にマルキールさんはアクティブ、プロはだめ、インデックスがいいんだと割り切っていますが、ただそれは論点を明確にするために誇張した言い方をしているのではないか。確かに将来に向けてアクティブ運用者となる人も存在する。しかし、それがどの人なのかを見付けるのは大幅上昇する銘柄を探すのと同じぐらい難しいと結ばれていました。