【Vol.245】今月のひとこと

今月のひとこと

「貯蓄から投資へ」を考える

岡本和久20220623

私が証券市場に入ったのは1971年4月1日です。入社式で、その時にトップがお話になったことを非常にはっきり覚えています。「君たちは良い会社に入った。これからはいよいよ、貯蓄から投資の時代が来るんだ」とおっしゃったことです。

これまで多くの大相場がありました。1958年年初から日経平均は1961年7月まで約3年半で3.9倍に上昇しました。みんな競って株式を買ったのです。70年台の初頭も大変な株式ブームでした。大阪万博、日本列島改造などがあり、いざなぎ景気の余韻で日経平均も1972年には1年で92%の値上りをしました。また、80年代のバブルの時は、まさに猫もシャクシもみんな株式、株式と言って、株式投資に熱中、1982年10月から89年末まで7年3ヶ月で日経平均は5.6倍になったのです。

要するに儲かりそうならみんな株式投資をするのです。リテラシーもほとんどない。要するに儲かるならやる。このころまでは、まだ人口も増加し、経済も成長し、老後もある程度年金などでカバーできた時代でした。だから株式投資は小遣い稼ぎ目的の、むしろ投機的な動きだったと思います。

今回も株式投資をする人が少しずつ増えています。ただ、今回は少し性格が違うように思います。やはり日本の人口減少、国の巨大債務の問題などもあり、自分の将来のために資産を形成していこうという動機が大きいように思います。また、制度的にも積み立てNISAが拡充されるなど、さまざまな政策が取られています。ようやく少しずつ52年前に聞いた「貯蓄から投資へ」という話が本来の姿で実現しつつあるように思います。

アメリカでは、「個人の金融資産の4割近くが株式に関連した金融商品になっている。日本はそれに対して10%程度しかない」ということで、このレベルの低さがよく言われます。非常に興味深いのは40年前、1982年にはアメリカでも個人の金融資産に占める株式の比率はほぼ10%ぐらいだったのです。80年代初めには「株式の死」が言われていた時代です。

実は70年代の後半に入るとアメリカでは新しい産業の動きが出始めていました。マイクロソフトが創業したのが1975年、アップルの創業は77年です。また1980年代に入りレーガノミクスが導入され、1988年にはアメリカでインターネットの商用利用が解禁になります。94年にはアマゾン(カダブラ)が創業し、95年にはWindows95が発表されます。98年にはGoogleが創業しています。そしてさらにITバブルを経て2004年にFacebookが創業をしています。バブル崩壊後の構造不況に悩む日本では1997年に山一証券が自主廃業に追い込まれたのと大きな対比です。

結局、アメリカ全体の中で新しい経済と産業の波が起こり始めていた時期だったのでしょう。日本でせっかく株式投資に意欲が少しずつ盛り上がりつつあるのに、海外に向かう資金が多く、日本株には積極的にならない傾向が強い、その大きな理由は、やはりそのような大きな産業のうねりが今の日本ではもう一つ感じられないところにあるのではないかと思います。

株式会社は毎年得た利益で配当金を株主に支払い、そして残りを内部留保とします。そして、その内部留保のかなりの部分が預金に向かっています。預金の金利はほとんどゼロ金利です。ということは、資産の中の預金の比率が高まれば高まるほど、企業全体としてのROE、株主資本利益率は低下をしていきます。

株式を保有するということは株主資本を保有するということです。その収益率が低下をし続けていくのですから、そこに魅力が感じられないのは当然のことです。大切なことは、毎年の内部留保をほぼゼロ金利の銀行預金ではなく、新たな分野への設備投資に向けていくということだと思います。日本にそのような投資機会がなければ世界に向かってそれを行えばいいのです。世界は地政学的にも経済的にも、情報革命でも、大きな変革期を迎えています。

そのような時こそ、自分たちが取れる最大限のリスクを取って資金を使っていくべきではないかと思うのです。より成長性の高い分野への投資が行われていけば日本の株式のROEも向上して、そしてその結果として成長率も高まり、個人投資家も日本株式投資が積極化するという展開になるだろうと思います。ですから、私が52年前に入社式で聞いた「貯蓄から投資へ」というのは今、個人だけの問題ではなく、まさに企業こそ「貯蓄から投資へ」という時代を迎えているのではないかと考えます。日本株の魅力が増せば個人は何も言わなくてもしっかり学び、投資に踏み切ってくるモノです。

特定非営利活動法人「みんなのお金のアドバイザー協会〜FIWA」

FIWA®からのお知らせ・セミナー予定

第212回FIWA®マンスリー・セミナー

開催形式: On Line
主催担当: 赤堀薫里
開催日時: 5月21日(日) 12:30~15:30
講演・講師: 岡本 和久 「なぜ瞑想がよい投資成果を生むのか」
ガンガー総合研究所 代表取締役社長 藤井 義彦氏 「自分を活かし、社会に貢献する(活私奉公)と人生設計」
お申込み: https://happymoney.stores.jp/
参加費: 3,300円

第213回FIWA®マンスリー・セミナー

開催形式: On Line
主催担当: 赤堀薫里
開催日時: 6月18日(日) 12:30~15:30
講演・講師:    
講演1: 岡本 和久 「ビジョンとリーダーシップ」
講演2: 龍谷大学教授 竹中 正治氏 「インフレ率アップが日本企業のROE、PBR、株価を押し上げる~日経平均3万円超え定着は2024年か」
備考:  お申込みは開催日の三週間前より以下のサイトにて承ります
https://happymoney.stores.jp/

第214回FIWA®マンスリー・セミナー

開催形式: On Line
主催担当: 赤堀薫里
開催日時: 7月16日(日) 12:30~15:30
講演・講師: 岡本 和久 「定年、リタイア・ライフをどう生きるか」
Consulting Office 桑瀬 登起子氏 (司法書士/終(つい)のデザインサポーター)「終(つい)のデザインを 4つのマトリクスで考える・相続登記に関する改正のポイント」
備考: お申込みは開催日の三週間前より以下のサイトにて承ります
https://happymoney.stores.jp/
参加費: 3,300円

第215回FIWA®マンスリー・セミナー

開催形式: On Line 
主催担当: 赤堀薫里
開催日時: 8月20日(日) 12:30~15:30
講演・講師: 岡本 和久 「ウォール街のランダムウォーカー」を読み解く 第1回(全5回
中野晴啓氏 「私が目指したい資産運用業界の理想」
8月から12月まで投資家もアドバイザーも必読書である名著、バートン・マルキール著「ウォール街のランダム・ウォーカー」を読み解いていきます。ぜひ、ウォール街を一緒にランダム・ウォークしましょう。)
備考: お申込みは開催日の三週間前より以下のサイトにて承ります
https://happymoney.stores.jp/
参加費: 3,300円

FIWA presents 「マネーマネーマネーfor you」 開催中

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