【Vol.245】FIWAマンスリー・セミナー講演より(講演2)

DIY資産運用 コア・サテライト実践法

講演 FIWA理事長
岡本 和久 CFA, FIWA
レポーター 赤堀 薫里

岡本和久20220623

今日はDIY資産運用の中で、コア・サテライト戦略についてお話をします。

2007年に書いた本『100歳までの長期投資』の序文で、『合理的な運用をきちんとやっていかないといけません。それは単にお金だけの問題ではなくて、ライフプラン、人生計画と整合性のある、自分にとって心地よい人生を送れる一助となるようにお金の面をどう扱っていくのかが大事であり、それが100歳までの長期投資である。』ということを書きました。

いろいろな投資信託があります。営業マンに勧められ、さまざまな商品をみんな買っている。しかし、全体としての整合性は配慮されていない。結果として一部分の資産クラスが重複して増えたり、あるいは減ったりしてしまう。全体を考えたポリシーがないわけです。自分が司令塔になって投資方針を決定することは大切です。

コア・サテライト戦略のイメージは、コアは、世界株インデックスを中心にして、サテライトとして周りにアクティブの投資信託、投資手法やテーマ型、個別銘柄の投資、サテライトの戦術的資産配分、戦術的アセットアロケーションなどを配置する。

コアはあくまでも守り。サテライトは攻め。まずは守りが重要です。戦略と戦術の違いと言ってよいでしょう。戦略とは、特定の目的を達成するため、大局的な視点で組織行動を計画し、遂行する方策。通常、長期的で包括的。全体を見回す。

戦術は、具体的な作戦や任務達成のための具体的な方法であり、比較的、中期的、短期的。そして局所的な「この部分のこれをどうするのか」というところが戦術である。この戦術的資産配分は、これにあたるわけです。戦略がコア、戦術がサテライトというわけです。

守りであるコア・ポートフォリオは、退職後のための資産形成と退職後の資産価値の防衛を目的とする戦略的な投資をするべきです。攻めを担うサテライト・ポートフォリオの代表は、市場全体の時価総額構成比から乖離した配分比率を持つ戦術的投資対象という考え方です。

戦略を担当するコアは、世界株インデックスを持っていればいいのです。ただ、今後、しばらくは日本株が強いなと思った場合、コアの部分は全く触らずに、追加で日本株インデックスを少し持っておく。時間とともに海外市場まで強気が広がっていったときは、日本株を少しずつ減らしていき世界株を増やしていく。この後、株式市場が弱気なったとすると、世界株も売却して、コアだけにする。でもコアはそのまま持ち続ける。その後、アメリカの小型株が良さそうだとすると、これを少し上乗せする。

要は、サテライトはトッピングです。ラーメンのトッピングで、チャーシューを多めにしてくれとか、海苔をのせてくれといったようなものです。でも麺とスープは変わりません。サテライト運用はある程度、自分なりに相場観を持ち、これからマーケットの状態がどうなるのか、意見を持っている人は、やってみても面白いと思います。結果として株式の比率は上がったり下がったりします。上乗せの部分がトッピング、サテライトだということです。

資産運用をする上で必要な常識のお話をします。運用の主体が国や企業、機関投資家から個人へ移行していく。この時に本当に必要だと思うことは、DIY資産運用に適した、良質な全世界株式インデックスファンドができること。すでに類似のファンドは何本もできてはいます。ただ、重要なことは、信託報酬が他社と比べて低いこと、信託期間が無制限であること、そして、純資産の金額が大きいことなどです。これは大きな純資産額が大きいほどその投信は投信会社にとって大切なため、そう簡単には潰さない。大切に育てる。つまり、閉鎖リスクが小さいわけです。

マーケットが今までのようなイケイケのマーケットでなくなってくると、極端に低い信託報酬で受託しているファンドは、「もうやめようか?」という話が出てこないとも限らない。そのためある程度の資産規模があって、運用に関わる人にとって、それが大事なものであるということ。これが大切です。

販売会社主導ではない本質的な金銭・投資知識、いわゆる常識の普及がとても大切です。そういう意味でプロのアドバイザー、独立したアドバイザーが必要だと思います。長期相場は何十年もずっとやっていくので、その途中では、いろいろな事が起こります。最近でもコロナやウクライナがありました。その中で、やはり売った方がいいのではないのかと、不安を抱えます。それに耐えていけるだけの癒しを与えていくことは、プロのアドバイザーの仕事の一つになります。投資は続けなければ効果は出ません。長期投資で得られるものは非常に大きい。しかしそれは、いろいろな波風に打ち勝ち、続けることによって得られるものだということです。

講演ではアメリカで起こった年金運用革命についての歴史、そしてどう変化したのかについての説明。また、DIYコア・サテライト戦略の具体的な手法について。最後に自分自身がDIY資産運用をするうえで支える意識について解説くださいました。