【Vol.244】FIWA認定会員 投稿コーナー

1人の100歩より100人の1歩

寄稿:FIWA®認定正会員
NPO法人お金で学ぶさんすう 代表理事
ゆうちょ財団 金融教育支援員
住山 志津枝

*FIWAは金融商品の販売を行わないアドバイザーに与えられる称号です

自己紹介

Ms sumiyama

障がいのある弟のいる「きょうだい」であり、障がいのある子の母親。
弟の浪費に悩む母を見て、障害の特性に合わせたお金の使い方や管理の教育を幼少期から行う必要があると思い、ファイナンシャル・プランナー資格を取得。
京都市教育委員会「京都学びの街生き方探究館」で7年間、特別支援教育を中心としたお金の指導経験を積んだ後に独立。
現在、特別支援学校・学級など、公教育と連携したお金の教育カリキュラム構築や普及活動のほか、認定講師育成も行っている。
教員研修、児童生徒向けのお金の授業や、福祉施設等の本人向け講座、支援員研修などの実施実績が多数あるほか、表彰、新聞等のメディア出演、専門誌の連載、論文発表などの実績もある。


【1人の100歩より100人の1歩】

タイトルの言葉は、現行NPO法の制定に携わられた松原明さんの言葉です。私が運営する「NPO法人お金で学ぶさんすう®」は、公教育との連携による障がい者へのお金の教育が一番の強みです。今回はお金で学ぶさんすう®と京都市立白河総合支援学校の活動で得た「100人の1歩」を紹介します。

白河総合支援学校 「お金で学ぶプロジェクト」

白河総合支援学校では2022年度より研究授業のテーマに「お金」が採用されました。「お金で学ぶプロジェクト」という名のもとで、3年間をかけてお金のカリキュラム構築を行っており、この記事を書いている今、プロジェクト1年目を終えようとしているところです。

先生方は「1人1回お金の授業をする」という課題が与えられました。私たちお金で学ぶさんすう®は、先生方の授業サポートや相談などに応じながらカリキュラム構築全般を支援しています。 先生方は授業実施にあたり、「指導案」を作成します。それをもとに2022年度に実施された授業回数や受講生徒数などの集計を取りました。

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NPOの役割は「協力者を増やすこと」と言われています。

教育のプロである先生方のご尽力は素晴らしく、お金の専門家には思い付かない指導案や学校ならではの授業をしてくださった上、授業実施数も飛躍的に増加しました。

お金で学ぶさんすう®の活動は、まだ「1人の20歩より20人の1歩」程度で100人には及びませんが、予想を上回る成果に教育のプロとお金のプロとの協働の意義を実感しています。

特別支援教育の特徴とお金の専門家が裏方に徹する理由

特別支援教育と一般的な金融教育の違いは、学ぶ場所と実践量の違いに現れます。たとえば銀行の学習をする場合、一般的なお金の教育では教室で日本銀行と銀行、企業や消費者との関係性などの知識やしくみを学びます。(金融リテラシー教育)

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特別支援教育で銀行の役割を学ぶ場合は、銀行の協力を得てATMの操作を練習させてもらう事が効果的であり、学ぶ場所は学校の外が中心です。(ライフスキル教育)

支援学校の校内に一般の方も利用できるカフェがあることや、生徒が学校ではなく実習先の職場に直行直帰していても単位になる理由は、現場の実践が重要だからです。

また、特別支援教育では一度の学習で知識の定着をはかることは難しく、繰り返し学習が必要です。環境の変化が苦手な生徒もいるため、外部講師よりは信頼関係を築いている教員と一緒に繰り返し学ぶ方が伸びることも多々あります。このような理由から、お金で学ぶさんすう®では「お金の学習も教育のプロである学校の先生方にお任せすべき」と考えて裏方として活動しているのです。

協働までの道のり

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白河総合支援学校との出会いは、同校の中村校長先生が「学校のお金の教育を推進したい」と訪ねて来られたことでした。先生方は私たちの料理教室を見学され、私たちも校内を見学させていただきました。

連携初年度は仲田がボランティアとして週1回校内カフェでレジや在庫管理指導などに携わりました。2年目もカフェでの指導とともに、パンをこねたり、農園で畑を耕したりなどしながら先生方や生徒とコミュニケーションを取り続けてくれました。努力が実り、仲田は年度途中から非常勤講師に採用され、お金の授業に取り組む先生も現れてキャッシュフロー表の授業実施が実現しました。

3年目になると複数の先生方からお金の授業相談を受けるようになり、4年目である今年度より学校の研究授業に「お金」が位置付けられました。それが「お金で学ぶプロジェクト」であり、3年間かけて1年生から3年生までの指導体制を整える方針です。

さいご

お金で学ぶさんすう®の活動を支えてくださっているのは、ご寄付、助成金のご支援や、保護者、支援者、団体の仲間など、関わってくださっているすべての皆さまです。

ご支援、ご協力に感謝するとともに、白河総合支援学校の取り組みをより良いものになるよう研鑽しながら、さらに他校、全国に活動がひろがるよう精進いたします。

引き続き応援のほど、よろしくお願いします。