【Vol.242】FIWA認定会員 投稿コーナー

内田英子(CFP,FIWA*)さんのブログより「適切なつみたて投資の家計への組み入れ」

寄稿:FIWA®協認定正会員 内田 英子
CFP、FP1級、消費生活アドバイザー

*FIWAは金融商品の販売を行わないアドバイザーに与えられる称号です

自己紹介

Uchida Eiko

FIWA認定会員の方の投稿をご紹介するコーナーです。
全五回執筆いただきましたが今回が最終回。内田英子さん、本当にありがとうございました。

FPオフィス幸せ家族ラボ代表。
証券会社、保険ショップ勤務を経て、独立。
かつての専業主婦経験も活かしながら、子育て世帯を中心に家計の総合医として暮らしの健康を維持するあらゆる選択のアドバイスを金融機関から完全に独立した立場で行っている。

HP:https://fplabo-happyfamily.com/
Instagram:https://www.instagram.com/eiko_fp/


初めてのつみたて投資への一歩を踏み出す支援の流れにつき当オフィスの場合をご紹介します。

こんにちは、FIWA®正会員の内田英子です。
愛媛県を拠点に「ブレない自分と家計をつくる。」をコンセプトに、家計の総合医として金融商品を売らない家計コンサルティングサービスを、主に個人の方向けに提供しています。

ところで当オフィスは開業してもうすぐ5年目に入ろうとしています。
証券会社や保険ショップでの勤務経験はあったものの、開業した当初は専業主婦でしたので、ゼロから始めたといってもいい状態だったのですが、おかげさまで途切れることなくご依頼をいただいております。

当オフィスの特徴としては、人生にはさまざまな変化がありますが、そんな時にも乗り越えられる力の土台となる、芯の強い家計づくりを自ら実行できる方法を教えている点が挙げられるのではないかと考えています。
一言で申し上げれば、あらゆる家計の選択の選別と無理のない家計管理方法を実践していく、という流れになるのですが、特に生命保険や損害保険、住宅ローン、投資信託に至るまであらゆるサービスの家計への組み込みを診断し「家計をまるごと見直す」アドバイスには定評をいただいております。

これまで4回にわたりつみたて投資をテーマとした記事を寄稿させていただきましたが、今回はいよいよ最終回です。
これまでお付き合いいただきありがとうございました。
最終回はどういった内容を書こうかと迷ったのですが、今現在当オフィスにて、初めてのつみたて投資に不安を抱える方々へ提供している「つみたて投資への一歩を踏み出せる支援の流れ」を覚え書きとして書かせていただきます。

経験の豊富な諸先輩方は多くいらっしゃいますし、アドバイスのかたちに正解はないかと思いますが、何らかのかたちでお役立ていただけましたら幸いです。

まずは持続可能なつみたて拠出額を診断

“つみたて投資を始めてみたいけれどなんだか怖い。”
“勉強しようと思って本も買ったけど、難しくてよくわからなかった。”
“投資未経験から始めたものの、不安でいっぱい。”

当オフィスに、つみたて投資についてご相談いただく方のご不安は必ずしも1種類ではありませんが、概ね以上のようなご不安を訴えられる方が多いように認識しております。

預貯金ではなく元本が保証されない投資

だからこそ投資の必要性は理解できても、ご自身の暮らしへの影響を恐れ、実践することに不安を感じる方は多いと感じています。
そこで、当オフィスでは多くの場合、つみたて投資のアドバイスを提供する際はライフプランシミュレーションを行い、拠出しつづけられる金額を診断することから始めています。

ライフプランシミュレーションでは、現在の家計収支から資産・負債額を土台に、ご相談者様のお考えとご希望をもとに今後の状況を予測して織り込んだこれからの家計の見通しを数字でまとめたキャッシュフロー表を作成します。

キャッシュフロー表を作成すれば、つみたて投資を始めるこれからの家計の予想図が一目瞭然でわかるようになります。
つみたて投資の実践にあたっては例えば20年といった長い期間中、拠出を続けられることが重要ですね。
ライフプランシミュレーションを行うことによって、今希望しているつみたて額を実践した場合、例えば今後の支出が増えるタイミングでも取り崩しが発生することなく長期で拠出を続けられそうか、といったことが予測できるようになります。

暮らしのお金と分けて、今後拠出を続けられそうである見通しがついたら、目の前の暮らしにつみたて投資によるリスクは大きく影響しなさそうであると判断できるでしょう。

投資をする際の原則として、ゆとり資金をあてる、といったことが挙げられますが、日々変わる生活の中、つみたて投資における「ゆとり資金」を見える化できるのがキャッシュフロー表だと考えています。

リスクがあることは包み隠さない

つみたて投資の相談をしたいと思ったら、やはりつみたて投資の商品を購入できる金融機関に相談に行く、というのが今の一般的な選択肢でしょうか。
当オフィスは金融商品を売らず、芯の強い家計づくりを重視したコンサルティングサービスを提供する小規模な事業者です。
だからこそ、つみたて投資についてあえて当オフィスにご相談いただく方には、以下のような隠された本意があるだろうと想定しています。

  • つみたて投資がいいというのは売る人の都合のいい話なのではないのか。生活者の視点で知りたい。
  • 表面的な易しいリスクの説明ではちっとも腑に落ちない。自分の場合に当てはめて想像できる情報を教えてほしい。

こういった想定を踏まえ、当オフィスでは拠出できる金額がわかったら、株式投資のリスクについて包み隠さずお話することを心がけています。

例えばリーマンショックの際、インデックスであっても米国株式を含む先進国株式は50%超落ち込みました。
日本株式は、それほどでもありませんでしたが50%近く下落しています。
こういったお話は個人的には証券会社で個別株式などの販売に携わっている場合は、お客様に聞かれたらお答えする、といった程度だったと思いますが、家計の総合医として独立してつみたて投資のアドバイスをさせていただく場合には、必ずお伝えするようにしています。

とはいえ、資産ごとに想定されるリスクを超えて落ち込むケースは確率にすればおよそ15%程度です。
期待リターンを含む投資の基本的な知識のレクチャーを行いつつも、リスクを怖がり過ぎないために、FIWA®のつみたてインディくんをはじめとするシミュレーションを活用し、万が一の対応方法例もあわせてお伝えしています。
最終的に当オフィスオリジナルの「わたしの投資信託自由研究シート」を作成し見る目を養い、「わたしの投資方針書」と題したご自身の投資へのお考えをまとめた資料を作成できることを目標としています。

家計づくりをサポートする

拠出可能額の診断とリスクについてのレクチャーが終わったら、次は管理しやすい家計づくりをサポートしていきます。
なぜなら、キャッシュフロー表で示すのはこのような家計の状況であればつみたて投資の掛金を拠出しつづけられますよ、というあくまで予想図に過ぎないためです。
また、つみたて投資は多くの方の場合少額ですから、将来のためにした方がいいとはいっても、したからといって将来の暮らしが劇的によくなるものでもないでしょう。

家計の実態が伴っていなければ、キャッシュフロー表は一気に机上の空論へと成り果てます。
だからこそ、日頃家計管理に不安を抱えている方には特に、できる限りそういった想定に近づけられるように家計を整える見直しと、管理しやすい家計をつくるアドバイスもあわせて行っていきます。ご本人の希望を叶えられると思われる目標とするキャッシュフロー表をつくることができれば、毎年のやりくり目標もわかるため、とても心強いツールとなります。
(当初の想定とは大きく変化する事柄があった場合には見直しが必要となります。)

まとめ

つみたて投資は投資初心者のかたでも資産形成しやすい投資手法です。
つみたて投資に向くインデックスファンドも増えている中、来年以降NISAの大きな衣替えも期待されますし、以前と比べ環境は断然よくなってきているのだと思います。

そんな中、つみたて投資の必要性を感じるのに始めることに不安を抱えている方は、将来の生活が見通せないゆえに踏み切れない、といった方が多いように日々の業務を経る中で感じています。
だからこそ、そのような方には投資の知識のレクチャーだけではなく、こうすれば自分たちの希望の暮らしは維持できそう、といった可能性を見出すライフプランシミュレーションをつみたて投資のアドバイスとあわせて行うことが大切なのではないかと思っています。

投資の不安を乗り越え、自ら強い家計をつくり長期間のつみたて投資への拠出を続ける。
そんな積み重ねが自信となり、人生100年時代ともいわれる今を力強く生きる力となっていくのでは。
そんな方がお一人でも増えることを祈って、今後も金融商品を売らないアドバイザーの立場で安心して迷える場所を提供していきたいと考えています。

(文責 FIWA®)