【Vol.240】FIWA®理事リレー投稿

さまざまな運用手法

寄稿:FIWA®協会理事長 岡本 和久CFA, FIWA®

Okamoto

1946年、東京に生れる。慶應義塾大学経済学部(在学中、二年間米国コロンビア大学留学)。卒業後、日興證券入社。証券アナリスト、チーフストラテジスト(ニューヨークで9年、バブルの東京で6年)を歴任後、外資系年金運用会社社長を15年勤める。2005年、投資教育会社、I-Oウェルス・アドバイザーズ(株)を起業。投資顧問業協会副会長、日本CFA協会会長などを歴任。2016年に明治大学に株価指数研究所を創立し明治期からの株価指数作成を支援。2019年にプロの専業アドバイザーを育成、認定、支援するNPO法人「みんなのお金のアドバイザー協会~FIWA」を設立、理事長を務める。著書に『お金と心~200パーセントのしあわせ持ちになれるシンプルな生き方』(知玄社)など多数。2018年に金融知識普及功績者として金融庁および日銀より表彰される。(証券市場歴50余年)


資産運用で絶対に必要なのが「理論的に正しく、実証的に有効である」ことです。運用手法は大きく分ければ計量的アプローチによるプロセス運用と人間の判断に依存するジャッジメント型があります。

ジャッジメント型にはファンダメンタル・アプローチとチャート分析によるテクニカル・アプローチがあります。

ファンダメンタル・アプローチでは投資判断の大きな部分が財務分析などに依存したものです。企業の価値を成長性から判断するグロース分析、企業の保有する価値を推定するバリュー分析などがあります。また、ポートフォリオの構築にしても経済、産業のトレンドから考えるトップダウン・アプローチと魅力ある銘柄選びから全体を構成するボトムアップ・アプローチがあります。

一方、テクニカル・アプローチはチャート分析や株式市場のテクニカル指標などに重きを置いた方法です。理論的には否定する説が多いのですが、短期的なマーケット参加者には根強いファンもいます。また、テクニカル・アプローチとは少し違いますが、需給関係を分析して相場を予測することもよく行われます。

これらは一般的にアクティブ運用です。機関投資家などが行う典型的なアクティブ運用はエコノミストが経済や市場環境を分析し、アナリストが企業の価値を調べ、さらにテクニカル・アナリストやチャーティストが株価の動きを判断してトレーダーが売買注文を執行するというものです。基本的にはすべての段階で人間の判断、ジャッジメントが大きな役割を占めます。

プロセス運用は投資理論と整合性のある運用プロセスを構築して、その指示の通りに運用する方法です。人間の英知を使って運用プロセスを策定する。そして後は、そのプロセス通リに運用を行う。私がかつて勤めていたバークレイズ・グローバル・インベスターズという運用会社はまさにプロセス運用の先駆的存在でした。

最初はシンプルなインデックス運用でしたが、それに特定の要素をオーバーウェイトするティルト(傾斜)運用や株式や、インデックス・プラス・アルファ、スマート・インデックスなども登場しました。また、債券などのインデックス・ファンドを相対的な魅力度に応じて機動的に配分を変化していくタクティカル・アセット・アロケーションなどに応用範囲が広がっていきました。

プロセス運用のメリットとしては以下のような点が挙げられます。

  • マーケットの変動に左右されないで一貫した運用ができる
  • うまく行かなかった場合、何を間違ったか問題点が明確に分かる
  • 感情のブレを排除できる
  • 顧客に合理的な説明がしやすい

同時に弱みもあります。

  • モデルの前提が過去のデータに依存する傾向がある
  • プロセスの変更が必要な場合、修正が跡追いになる
  • ファンダメンタルズの激変に対応しにくい
  • パフォーマンスの悪化をツールのせいにする傾向が生じやすい

ジャッジメント運用の一番の問題点は、どうしても株価の動きに心理が影響されてしまう点にあります。「マーケットは一番多くの人にとって不都合な事が起こる場所だ」ということをニューヨークにいる時にあるファンド・マネジャーから聞きましたが、まさにその通りです。しかし、一番多くの人と違うことをするのは本当に勇気がいるものです。

そこに行くとプロセス運用では他の投資家が何をしようが関係なく判断し、取引を実行してくれます。その点では年金運用など長期目的の資産には非常に適しているといえます。FIWA®では「FIWAつみたてインディくん」という龍谷大学教授の竹中さんの開発したポートフォリオ分析ツールをみなさまに使っていただけるようにしています。使用法もFIWA®のホームページで紹介しています。まずは無料のプロトタイプ版でお試しになってみてはいかがでしょうか。 https://fiwa.or.jp/simulation/