【Vol.239】FIWA認定会員 投稿コーナー

小谷 晴美(CFP,FIWA*)さんのブログより「適切なつみたて投資の家計への組み入れ」

*FIWAは金融商品の販売を行わないアドバイザーに与えられる称号です

寄稿:FIWA®協認定正会員 小谷 晴美
CFP、FP1級、消費生活アドバイザー

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(小谷 晴美氏プロフィール)

しなやかライフ研究所 代表。前職では経営コンサルティング会社にて中小企業診断士として経営指導、研修等に携わる。
2006年ファイナンシャルプランナー資格を取得し、お金の身近な相談役として個人相談件数は1500件を超える。

個人事業主の妻としてサポートをした経験と、子育てをしながら仕事の幅を広げてきた経験から、女性の起業支援、個人事業主の生活設計支援を得意とする。

著書に「女性ひとり起業スタートBOOK」(コスミック出版)がある。

HP:https://www.shinayaka-life.com/

商品提案における説得力のある話法が知りたい

大阪でファイナンシャルプランナーをしております小谷晴美です。
日頃は生活者を対象とした相談やセミナーを行っておりますが、今回は金融機関の職員向け研修について「どのような研修を行っているのか」とご依頼を頂戴しましたので、僭越ながら寄稿いたします。

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私は金融機関での勤務経験はございませんが、中立的な立場で相談業務に従事する独立系のファイナンシャルプランナーという目線から、お役に立てればとのおもいで研修を担当しています。

ある金融機関の協会では2012年より20時間に及ぶ研修を担当し、金融機関の職員として知っておきたい制度や生活設計の知識を体系的に学び提案力を向上させる実践トレーニングを行っています。

参加者は20代~30代の若手職員が中心で、FP資格をお持ちの方もいらっしゃいます。
事前アンケートを拝見すると、

  • 相談の実例を学び、実践で使える知識にしたい
  • 商品提案における説得力のある話法が知りたい
  • 適切なアドバイスができるよう幅広い知識を身につけたい

といった参加動機が多く見受けられ、長丁場の研修にも関わらず、終始熱心にご参加くださいます。

研修の特徴としては、ライフプランニングの基本から税制、社会保障、各種資金計画、保障設計、相続対策など幅広い知識をインプットするだけではなく、「使える知識」にするためにロールプレイングや事例研究を多く取り入れているところでしょうか。

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この研修で私がお伝えしたいことは、「真にお客様の立場に立った顧客本位の業務推進の重要性」です。

例えば、住宅ローンの説明においては、「貸せる金額」だけではなく「無理なく返せる金額」を伝えていただくよう、頭金や借入額の目安について算出法を紹介します。

「そんな理想論を言っていたら、誰も家なんて買えませんよ」と職員の方に反論されたこともありますが、「お客様自身が理想とのギャップを認識することが大切」ということをご理解いただいています。

「借りられたから大丈夫」ではなく「無理がある資金計画だ」という自覚があれば、資金計画を見直したり、住宅取得後に家計改善の努力をしたり、お客様自身が考え対策をとることができます。

FP資格を取得して間もないころ、公的機関の相談員として無料相談を担当していました。その時、定年前になって「住宅ローンを返せそうにない」と相談される方が少なからずいらっしゃいました。「70代まで返済が続くことは借りた時から分かっているはずなのに、なぜ?」と不思議でならなかったのですが、独立して住宅資金の相談を受けるようになるとその理由がわかりました。

住宅取得を決めて相談にいらっしゃる方の話を伺うと、多くの場合こんな「悪魔のアドバイス」を受けておられます。

悪魔のアドバイス

このようなアドバイスを真に受けて購入を決定した相談者に返済計画を示すと、あぜんとしながらも「今知ることができて良かった」とおっしゃいます。そして、「頭金を増やす方法はないか」「繰上返済資金として毎月いくら準備する必要があるか」など具体的な対策を考えることができます。

「売りたい」不動産業者にお客様の立場に立ったアドバイスを期待するのは難しいのかもしれません。金融機関の方には身近なお金の相談役として、長い目で見てお客様に喜ばれるアドバイスをお願いしたいものです。

このように、金融機関向けの研修では、ライフプランに即した提案を行うための知識を得るだけでなく、その知識を真にお客様のために使っていただけるよう「顧客利益の追求、顧客の立場に立つことの重要性」をお伝えしています。

先月の同研修で最後に感想を伺ったところ

  • これまで受けた商品説明のための研修と違い、お客様の立場に立った提案をするための研修だった。
  • お客様目線で家族のように寄り添える金融マンでありたい。
  • このテキストを側において、いつでもお客様のために役立てられるようにしたい。
  • お金を貸すだけでなく知恵を貸せる職員になりたい。
  • ライフプランのことで、困ったことがあったら、一番に思い出してもらえる存在になりたい。
  • いつまでもお客さまの記憶に残る金融マンになりたい。

こんな言葉をお聞かせくださり、3日間の疲れも飛びました。

お客様との信頼関係を築くには、提案の「やり方」以上に顧客本位の「あり方」が重要です。また、お客様との信頼関係を築くことで、LTV(顧客生涯価値)を追求することが金融機関にとっても有効な競争戦略になると考えます。

そして何より、身近な金融機関の方が信頼できる相談役となることで、生活者の安心安全な暮らしに寄与していただけると信じて、今後もより良い研修を届けたいと思います。