【Vol.237】今月のひとこと

今月のひとこと
岡本和久20220623

最近気が付くのは本当のプロのアドバイザーが必要だという声が増えてきているということです。正直、「遅すぎた」というのが私の実感です。退職後のための資産形成、そして退職後の資産活用がそれぞれの人々の人生を通じて極めて重要な課題になっている今日、知識、経験そして高い倫理観を持つ専業のプロのアドバイザー、金融商品の販売に一切関わらないアドバイザーというものが今ほど強く求められていることはないと思います。

もちろん金融商品を「販売する」のは非常に重要な仕事であり、それに従事する人々はその仕事にプライドを持ってお客様のために働いている方も多いと思います。しかし、そうでない方も多く、生活者の方からもそのような声をたくさん聞きます。

販売という業務とアドバイスという業務は違う仕事です。アドバイザーはアドバイザーとして誇りを持って仕事をする。 販売員は販売員としてプライドを持って仕事をする。それが非常に重要だと思います。

なぜ本物のアドバイザーが今必要なのか、以下の三つのポイントを指摘したいと思います。

まず、第一のポイントです。

インベストメント・チェーンという言葉をご存じでしょうか。今日、日本の生活者のすべては投資家です。皆さんが気付いても、いなくても資産の一部は有価証券に投資をされているのです。年金資金も株式を保有しています。皆さんが加入している保険も株式を保有しています。実は皆さんは社会全体をおおうインベストメント・チェーンの一部を構成しているのです。そのインベストメント・チェーンというの以下のようなサイクルです。

生活者(投資家)⇒金融機関(販売員・IFA)⇒アセット・オーナー(年金基金など)⇒資産運用会社⇒売買執行者(証券会社など)⇒投資先企業⇒生活者(投資家)

このチェーンが意味することは、生活者である皆さんが金融商品を買うため金融機関に支払ったお金が投資信託や年金基金などにプールされ、それを資産運用会社が運用する。運用会社の指示に基づいて証券会社などで売買が施行される。投資先企業が社会に付加価値を生み、それがその企業の価値の増加につながる。そしてそれが株価の上昇及び配当金などで生活者である皆さんの元に戻ってくる。これがインベストメント・チェーンです。

問題は、この出だしのところにあります。生活者(投資家)と金融機関(販売員・IFA)の関係という問題です。生活者一人一人は、このチェーンでそれほど大きな影響力を持つわけではありません。むしろ金融知識も一般的にはそれほど高くなく、販売員をアドバイザーであると信じてその言うことを無条件に聞いてしまうことが多い。

一方で、金融機関は膨大な人、物、金で影響力を持っています。あらゆるメディアで宣伝広告を行い、立派な会場で講演会を行い、膨大な数の販売員を抱え営業活動を行っています。

問題は生活者である投資家と販売サイドである金融機関の間には本質的な利益相反関係があるということです。つまり、両者の間では利害が相反するのです。しかし両者の間の力の差は歴然としています。その結果として、弱者である生活者=投資家が、弱い立場に立たされているというのは事実です。

ここになぜアドバイザーが必要かという理由があるのです。つまり「アドバイザーは生活者に寄り添う形で金融機関との間のパワーバランスを調整する」。このバランスを調整することこそ生活者の金融知識の向上にも繋がり、また金融機関の本当に顧客本位の営業姿勢が進められることになるのだと思います。

さて第2番目の問題点に移ります。生活者にとって人生で最も重要なことはその生活者本人の幸福感が最大化されるということです。幸福感にはいろいろな要素があると思いますがお金はその一つにしか過ぎません。つまり長い人生の過程で常に寄り添って人生全体についてのアドバイスを提供し続けていくというのが本来のアドバイザーの姿です。

一般的に言って金融機関の営業マンの顧客との付き合いの期間は比較的短期ですし、また、営業マンが生活者本人の望む人生について完全に理解しているかどうかというのも疑問があります。一般論として営業マンが行うアドバイスは短期的視点に基づいたものも多いのは否めないのではないでしょうか。

その結果として人生を通じての資産運用とかけ離れた資産配分になっていたり、非課税口座が十分に活用されていなかったりすることもしばしばあるようです。投資家が許容できるリスク以上の資産をたくさん保有してしまったり、短期のトレード銘柄を勧められ、それを買ってしまったりすることもあるでしょう。少し上がると売却をする、反対に下がっても損切りを勧める。そのたびに売買を執行する側は収益を得ます。それは皆さんの大切な退職後資産の流出です。 何十年も通じて中立的な、どの金融機関からも独立した、そして本当にお客様ファーストのアドバイスを提供し続ける人生の伴走者が必要なのです。

3番目の点はアドバイザー・サイドの問題です。本物のアドバイザーが守らなければいけない守備範囲はお客様の人生全体を通じての非常に幅広い分野に関わっています。どのような人生を送りたいのかというところから始まるライフプラン、そしてその一部であるマネープラン、さらにまたその一部である資産運用のプラン、お金をどのように幸福感に変換していくかという最も重要なプロセスにも関わっていくべきものです。

複雑化した世の中で最終的に幸せな人生を送るためには、金融商品を販売するという比較的限定された目的とは別のもっと幅広い人生論や人生哲学などをしっかり持ったアドバイザーが必要になってきます。

また、投資に関するアドバイスの内容についても多くの改善が必要です。今までのアドバイスは、むしろその時々の相場環境やテーマなどに合わせたジャッジメンタルなものが多かったように思います。長期的な資産運用にとって、その時々の魅力ある銘柄やテーマなどを追いかけるのはよくなく、もっと冷静に長期的視点で見た資産運用が必要なのです。

私は良い長期的投資方針は理論的整合性と実証的有効性を併せ持ったものだと思っています。それは勘と度胸の投資とは全く違うものです。残念ながら、これまで日本ではそのようなポートフォリオ分析を行うツールも極めて初歩的なものに限定され、それも十分に使われていたとは言えません。

ここに現在、皆様から貴重なご寄付をいただき、高度化を目指しているポートフォリオ分析ツールを開発する理由があるのです。「みんなのお金のアドバイザー協会~FIWA®」 では、日本の生活者=投資家のためになる資産運用が安心安全にできるインフラストラクチャーが必要であるという認識のもと、そのツール面での装備を充実し、本物のアドバイザーを育成し、認定、支援していく活動を続けていきます。どうぞこれからもご支援の程を宜しくお願い致します。

特定非営利活動法人「みんなのお金のアドバイザー協会〜FIWA」

FIWA®からのお知らせ・セミナー予定

FIWA®マンスリー・セミナー #204

開催形式: On Line
開催日時: 9月18日(日)12:30~15:30
講演・講師: 岡本 和久「日本株式市場144年史」
三和 裕美子氏、太田 達也氏:「兜日本株価指数 発表報告」
備考: お申込みは以下のサイトにて承ります
https://happymoney.stores.jp/


第57回FIWAサムライズ勉強会

開催形式: On Line
開催日時: 10月7日(金) 開催時間 19:00~20:45
講演・講師: NISA・イデコ投資はインフレに勝てるか 長期データで検証
日本経済新聞社編集委員 田村 正之氏
備考 主催: NPO法人みんなのお金のアドバイザー協会
お申込先: https://somerise.net/2022/09/06/1488/


FIWA®マンスリー・セミナー #205

開催形式: On Line
開催日時: 10月16日(日)12:30~15:30
講演・講師: 岡本 和久「株式会社の歴史」
河口 真理子氏:「日本におけるSRI、ESG投資の歴史(仮題)」
備考: お申込みは開催日の三週間前より以下のサイトにて承ります
https://happymoney.stores.jp/


FIWA®マンスリー・セミナー #206

開催形式:On Line
開催日時:11月20日(日)12:30~15:30
講演・講師: 岡本 和久 「お金の歴史」
青山大学院大学客員教授、ニッセイアセットマネジメント投資工学開発センター長
吉野 貴晶氏 「『ダウの犬』戦略などを検証する(仮題)」
備考 お申込みは開催日の三週間前より以下のサイトにて承ります
https://happymoney.stores.jp/