【Vol.237】石井 総一郎氏講演

「ボクらの日本一周どんぶらこ きびだんご配って四千里」

講演:石井 総一郎氏
レポーター:赤堀 薫里

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石井総一郎(達也)氏
株)Social Relation Trust Partners 代表取締役 共同代表
コーチングオフィス 『Two-Me-Key “つみき”』代表

1981年8月26日生まれ、岡山県倉敷市出身。元々は現場で交代勤務をしていた作業員だったが、現在はFPとして専門家の方々とも連携を取り、個人や法人に対して総合的な資金計画を立てたり、サポートをしている。人生を変えたいと一通の手紙を出したことをきっかけに日本を代表する二人の投資家にお会いし、二人の対談本である『投資の極意は「感謝のこころ」』(PHPパブリッシング)の出版プロデュースをすることとなる。その後、日本一周の旅をし、その体験をまとめた『ボクらの日本一周どんぶらこ』(吉備人出版)を出版。

ブログ:http://ishiisouichiro.net

私は、個人や法人の方のお金の相談を受けて、それを仕事にしています。私自身、今までこうした仕事をずっとやっていたのか?というと全然違います。現場作業員をしていました。今とは全く違う仕事です。ただ、さまざまな出会いや、自分が知った行動が、どんどんいろいろな結果を出していき、いろいろな形になって、このような仕事にたどり着いたのです。

私は会社を辞めてすぐに、地元以外の日本のことを何も知らないと気づき、友人と二人で日本1周の旅に出ました。出身地が岡山なので桃太郎にちなみ、きびだんごを配って歩いたのです。

きびだんごを交わす中で400人の人と出会いました。大阪の方とお会いした時のことです。お金のことをお仕事にされていて、世界中を飛び回っていた方でした。この人はきびだんごを配った時に、「今まで食べたことがないような高級寿司屋に連れて行ってやる」と素晴らしいカウンターのある、非常に高いお値段のお寿司屋さんに連れて行ってもらいました。

その時に、お話いただいたことはすごく勉強になりました。言われたことは、「知識と知恵」という話です。「お前はこれから知恵をつけていきなさい」と言われました。皆さんは知恵と知識の違いをご存知ですか?僕は正直わからなかった。その方に「何が違うんですか?」と聞いたところ、「お前の親父とお前だ」と、とんちみたいなことを返されました。

「それはどういう意味ですか?」と聞き返すと、「知識は学問的なこと。知っているか知らないかということだ。知恵とは、それをしっかりと行動に移したもの。おまえの親父は、自分が得た知識も自分が経験したもの両方をおまえに教えたはずだ。ただそれはお前にとっては知識でしかない。だからその教えてもらったことを、しっかり行動に変えて、知恵に変えないといけない。

石井本

この旅自体が知恵ではないか。いろいろな行動をすることで学ぶことはたくさんある。だから知識だけを得るのではなくて、しっかりと知恵にしなさい」と言われたのです。そして、「社会人になるといろいろな人からよく、『私、お金がない。時間がない。人脈がない』、それで話を終わらせる人がいる。でも、ないから人は考えて、そこから知恵が生まれるんだよ」ということも教えてもらいました。

そして、「お前の食べているのは青森県大間の大トロだ。ここで使われているお米は新潟だ」と話を続けます。大間の大トロも青森にしかない。新潟のお米も新潟しかないわけです。でも大阪で大間の大トロと新潟のお米のお寿司を食べたいと思ったわけです。「そんなものない!ではなくて、ないけれどやってみたい!ではどうすればいいのか?ということで、出来たこのお寿司は智慧の結晶だ」ということも教えてくれました。

その言葉がずっと私の頭から離れませんでした。今日の僕のお話は、僕の知識でもあり知恵でもありますが、皆さんにとっては知識にしかならないので、これを是非皆さんの知恵に変えていただきたいと思っています。

私が日本一周をして気づいたことはお返しの文化です。いろいろな人がいろいろなモノで返してくれました。もちろん400人お会いした中で、何もモノを持っていない人もいました。でもその人たちは「お返しできずすみません」と謝ってきました。謝るようなことでも何でもないのに。僕がただ遊びで少しご縁のしるしに配っているきびだんごです。それに対して謝っていただいた。

そして多くの人から、僕が配ったものよりはるかにいいものを頂きました。こういうことが根付いている文化に私たちは生きているのであれば、いいことも悪いこともちょっと増えて返ってくるんだろうなということに気づきました。私はこの旅を通して、自分がしたことは人からしてもらえることになるんだなと感じました。

澤上篤人さんや竹田和平さんから教えてもらった言葉は、「あなたが絶好調の時に人に対して行った振る舞いが、あなたが絶不調の時に人からされる振る舞いです」でした。その時、お二人から「今のお前の調子はどうだ?」と聞かれましたので、『私は絶好調です』と、答えました。『だったら、その時に自分がしている行いこそが、自分が次にやってくる絶不調の時に人からされる振る舞いだ。だからこういう時こそ、人に対する振る舞いを大切にしなければいけないよ』ということを教えていただきました。ずっと一本調子で絶好調の人はいないと思いますし、絶不調の人もいないと思います。こういったことを考えて人と接すること、それが大切なのだなあと気づきました。

今日は投資の話をメインにすることはありませんが、株価を見てもそうなのかなと思います。自分の心のあり方が天国や地獄を作りだしてしまうのだと思います。私はきびだんごを配って全国のいろいろな人とお友達になりました。また一通の手紙によって自分の人生が変わりました。皆さんにとっての一歩を、精一杯踏み出せていますか?100の知識より1の行動といわれています。それは知恵だと私は思っています。今日のお話を何でもいいので、何か一つ行動に移して自分の知恵に変えてみてほしいなと思います。

講演では、投資を知るなら日本一の人から学びたいという思いで、竹田和平さんと澤上篤人さんに10枚の便箋に思いを込めて手紙を出したことから、大きく人生の転換期を迎えられ、知識を貪欲に学びながらも、その知識を次々と知恵に変えられた足跡をお話いただきました。