【Vol.266】今月のひとこと

個人投資家のための株主アクティビズム
FIWA みんなのお金のアドバイザー協会
会長 岡本和久
フジテレビの問題で世間が騒がしいですね。株式会社の根幹にも係ることなのでよい勉強の機会になると思います。ちょうど1月の「サロイン塾」でそのことを話したのでよかったら動画をご覧ください。(Facebookのクラブ・インベストライフに動画をアップしてあります)
https://youtu.be/o9x7EPAdJ8U?si=WolA1Nzl70YQuJvs
株式会社の始まりは17世紀初めにできた東インド会社です。オランダやイギリスの大富豪が船をチャーターし、街の荒くれ者などを船員にしてアジアの珍しい産物を買付に行かせて帰国したらそれを大富豪に売って大儲けをするという、いわばアービトラージを大スケールでやっていたわけです。単純化して言えば資本の出し手も商品の買い手も大富豪、労働者は下層階級のやや荒くれ者(?)という構図でした。
しかし、今は違います。ピーター・ドラッカーはその点を指摘しています。70年代の中ごろにすでに「年金はその株式保有をさらに伸ばし、1985年(あるいはそれ以前)において、全産業の株式資本の6割、少なくとも5割を保有することになる。アメリカの被雇用者こそ、生産手段の真の所有者である。(P.F.ドラッカー、上田惇生訳「見えざる革命~年金が経済を支配する」(ダイヤモンド社、原著初版1976年)すばらしい慧眼です。しかも70年代中ごろですよ!要するに東インド会社は、出資者は富裕層、危ない目に遭う船長・船員は庶民、そして帰国後、その商品を買うのは富裕層だったのです。しかし、今は資本の出し手、経営者・労働者、消費者すべてが生活者です。
すべてのお金は究極的には個人に帰属します。ある企業を保有しているのは生活者としての個人です。法人株主もいますがその法人株主を保有しているのも究極的には個人です。要するに全部、生活者がこの世界の経済を成り立たせているのです。本来はすべての生活者が程度の差こそあれ資本の出し手になって現代社会を成り立たせています。
さて、フジテレビの件ですがダルトン・インベストメンツという会社がフジ・メディア・ホールディングスの7%以上の株式を保有していることが話題になっています。ダルトン社はアクティビストと言われており、不正や非合理な業務を行ったり、十分に資本が収益を上げていない企業の大株主になって株主として企業の経営を正し、結果として企業価値を高まることで収益を上げることを業務としています。
今後、ダルトンがどんな展開を見せるのか、私は知る由もありませんが、株主として企業の行動を正し資本の収益率を高めることは、どんなに小さな個人投資家でも株主総会で議決権を行使することでできるのです。その意味でこのフジの件は多くの個人投資家に気づきを与えたと思います。ある意味、「投資で世の中を良くしよう」というキャッチフレーズは究極的にはそういうことです。企業経営者と株主の間の壁は取り払うことができるということを気づかせてくれた点で、この事件はとても意味があったと思います。
個人投資家の多くの方は企業の経営を正すと言っても少し荷が重いかも知れません。それでは良い事業を展開した企業を褒めるというのはどうでしょう。これは企業にとっても大きな力付けになると思います。私は、ずいぶん前から個別銘柄に投資をする個人投資家の方に配当金を受けて取ったらその企業の社長にお礼の手紙を書くということを提唱しています。どんなに小さな株主でもよいのです。手紙を受け取った会社の社長からも「全社員にお手紙を読んで聞かせました」というお返事が来た例もあるように聞いています。これも小さなアクティビズムです。不正を正すのも大切ですが、同時に一生懸命、世の中に尽くしている企業に応援のはがきを送る。すべての生活者が何らかの形で株主になっている今日、一枚の応援のはがきを送る、これも投資で世の中を良くしていく上で大切なことだと思います。
私がかつてダルトン社で行った対談の内容は下記をご覧ください。
https://www.interfm.co.jp/news/single/investor_postshow10222023
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