【Vol.274】今月のひとこと

今月のひとこと

「おばあさんの新聞」

FIWA みんなのお金のアドバイザー協会®
会長 岡本和久



「おばあさんの新聞」、このお話は9月21日開催された「第五回FIWA ® サロイン塾」で紹介したエピソードです。多くの方に知っていただきたいと思い「今月のひとこと」でも紹介させていただきます。

私が証券会社にいたころにお世話になった尊敬していた大先輩だったのですが、その方が私に直接話してくださったお話です。とても貧乏な家庭での生まれの方で、学校の月謝もなかなか払えないので、小学生のころにも新聞配達を毎朝していました。配達先のおばあさんの家に新聞を届ける。おばあさんは「ありがとう」って言って、新聞を受け取る。

学校から帰ると彼はこのおばあちゃんの家に寄ってたんです。なぜなら、縁側に朝、届けた新聞が置いてあったのです。その新聞を読ませてもらい、それで勉強をしていた。彼はその後、立派な大学に行って、証券会社に入って、それから外資系企業に転職して海外に駐在して大活躍をしました。その後、市長、国会議員になられました。

ある時、彼は自分の故郷に帰ったのです。偶然、村の一軒の家で法事があった。「これ誰の法事ですか」と聞くと、それはあの新聞を届けていたおばあさんの法事だったのです。みんな、国会議員にまでなった彼のもとに寄ってきました。「お前、随分、偉くなったな」、「村の誇りだよ」などとほめてくれます。

ひとりの知り合いのおじいちゃんが寄ってきました。
「お前、あのおばあちゃんの家に毎日、新聞届けていたよな」
「はい、届けていました」
「お前知っていたか?あのおばあちゃんはほとんど字も読めず、新聞読んでなかったんだよ。あのおばあちゃんはお前に新聞を読ますために取っていたんだよ」

自分は何にも知らなかった。一生懸命勉強もした。一生懸命働いた。そしてようやくここまで来たと思っていた。でも、自分が全然、気づかないところで助けてくれた人がいたんだ」と気づいたのです。

岩国哲人氏と

彼はしみじみ語っていました。
かげで助けてくれる人がいるから、我々、生きて何とかやっていける。自分ひとりで成功できたのではない。たくさんのかげで支えてくださった人たちがいたからここまでこれたのだ」

そして、「『かげ』という言葉の前と後ろに尊敬や感謝を意味する『お』と『さま』という語をつけて、これが「おかげさま」ということなんだと気づいた」。ご一緒に食事をしながらこのような話をしてくださったのです。

この話は「おばあさんの新聞」という本になっています。この方は岩国哲人さんという方です。晩年はシカゴにずっと住んでいらっしゃいました。私もシカゴに行った時に一緒に夕食とったり、東京でも何度かお会いしたりしました。残念なことに2023年にシカゴで逝去されました。

岩国さんが亡くなった今、私が伺ったこのお話をできるだけ多くの方に伝えたいと思い、講演などでお話させていただいています。少しでもみなさまの生きる指針となれば岩国さんも喜ばれると思います。

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