【Vol.277】株式市場の日々の変動に一喜一憂する必要はない理由

尾藤 峰男氏 CFA , CFP , RIA


□ 売買回転率が示す「長期保有」の実態

株式市場は毎日上がったり下がったりしていますが、実は大多数の投資家は短期的な売買をしていません。米国市場の年間売買回転率は近年で約68~116%程度、日本市場は2023年で約104%、2024年で約117%とされています。これらの数字を見ると一見、年に1回程度株式が入れ替わっているように見えますが、実態は大きく異なります。
この高い回転率は、ヘッジファンドやアルゴリズム取引による高頻度売買(HFT)が全体の数値を大きく押し上げているためです。日本では、注文件数で約60~70%、米国では、注文件数の約50~75%がHFTといわれています。
実際には、年金基金、インデックスファンド、ウォーレン・バフェットのような長期投資家、そして多くの個人投資家は数年から数十年という長期的な視点で株式を保有し続けています。取引高は大きくても、実際に頻繁に売買している投資家の数はごく限定的なのです。

□ 短期売買者は「ノイズ」を生み出しているだけ

では、毎日の株価変動は何を反映しているのでしょうか。それは主に短期トレーダーやアルゴリズム取引による「ノイズ」です。彼らは企業の本質的な価値ではなく、テクニカル指標や短期的なニュース、市場のモメンタムに反応して売買を繰り返します。これらの取引は取引高全体の大きな部分を占めますが、参加者の数としては圧倒的少数です。
バフェットが「市場は短期的には人気投票だが、長期的には体重計である」と表現したように、日々の値動きは企業の真の価値とはほとんど関係がありません。むしろ、短期的な需給関係や投機的な動きが価格を左右しているに過ぎないのです。長期投資家にとって、このような短期的な変動は本質的に無意味なものと言えるでしょう。

□ 長期投資家こそが市場の「真の株主」

企業の経営陣や取締役会が本当に大切にすべき株主は、短期売買を繰り返す投機家ではなく、長期的に企業の成長を信じて保有し続ける投資家です。実際、優良企業の株主構成を見ると、創業家、機関投資家、長期投資家が大きな割合を占めています。彼らは四半期ごとの業績変動に動じることなく、5年後、10年後の企業価値に注目しています。
日本でも米国でも、個人投資家の中で本当に短期売買を行っているのは一部のデイトレーダーだけで、NISA口座の普及などを見ても、多くの個人投資家は長期的な資産形成を目指しています。売買回転率が100%を超えていても、それは一部の投資家が何度も売買を繰り返している結果であり、大多数の株主は静かに保有し続けているのです。

□ 投資家が取るべき姿勢とは

これらの事実から導き出される結論は明確です。長期的な視点で優良企業に投資している限り、日々の株価変動に一喜一憂することは意味がありません。むしろ、そのような短期的な変動は、優良企業を割安で買い増す機会を提供してくれることさえあります。
重要なのは、投資先企業のビジネスモデル、競争優位性、経営陣の質、長期的な成長性といった本質的な要素です。これらが健全である限り、短期的な株価下落は単なる「ノイズ」に過ぎません。市場の取引高の多くは一部の短期トレーダーによって生み出されているという事実を知れば、私たちも自信を持って長期投資を続けることができるはずです。株式投資とは、企業の成長に伴走する旅であり、日々の値動きに振り回される必要などないのです。