【Vol.277】FIWAサムライズ勉強会より 2
どうなる?2026年の日本と世界の経済・金融見通し
竹中正治 氏
米国経済と株式市場の現状は、もうすでにAIバブルで今後その崩壊に向かうのではないか、という議論が今年の夏ぐらいから急速に高まってきています。
「AIバブルの不都合な真実」は、今年の9月に出てすぐ買った本です。元三菱総研のアナリストで、AIで独立されコンサルティングをやっているクロサカ・タツヤさんが出した、専門家による警告的な本です。「現在のAIはバブルである。長期的に持続不可能だ。調整的な局面が来れば、バブルは崩壊する」と、断言する3つの理由もかなり断定的に書かれています。
まず1つ目は、「今、AIに期待されている性能と現実のギャップが拡大している。」つまり過剰な期待だ。90年代後半のITブームの時も、IT関係の企業は将来の売上は無限に伸びていくという非常に過度な楽観があった。それと非常に酷似した状態になってきている。
2番目は、非常に過剰な資金が流入している。ひとつ彼が挙げているのは、今年の上半期、スタートアップ企業への投資額のうち 64%がAIセクターに集中している。この集中ぶりは、90年代後半のITブームの時を彷彿させる。
3番目は、人間クリエーターとの間で摩擦・対立が起こっている。私はチャットGPTを主に使っています。非常に便利でいろんなものを作ってくれますが、すでにネットの世界にあるものをちゃっかり使っているわけです。そうやってできたコンテンツもボンボン量産できるので、市場には玉石混淆どころか、粗悪な模造品が溢れるようになってきている。
いずれどこかでもっと大きな問題になってくるのではないのか。他にもいろいろ書かれていました。また、いろいろな新聞記事でも出ています。例えば11月4日のFTに「1兆ドルを無駄にしてもやるんだ。バブル承知でAI 投資なんだ。」という記事が出ていました。例えば、2000年のベンチャーキャピタルによるインターネット企業への投資額は1年間で105億ドルだったそうです。物価とか調整して現在の価値に換算すると200億ドル。さらにベンチャーキャピタルが2021年にSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・ザービス)という IT関係のスタートアップに投じた額は、1350億ドル。それ自体大きな金額です。ところが、25年にAI企業のスタートアップに注ぎ込まれる金額は2000億ドル(30兆円)を超える見通しです。今までとは桁違いのことが起こり始めている。それは本当にリターンをつけて回収できるのでしょうか?という問題です。他にも11月28 日の日経新聞の記事では、「オープンAIが、チャットGPT開始3年で企業価値が 25 倍になった。でも今は莫大な赤字を出しているのに、今後8年間で1兆4000億ドル(220兆円)をデータセンター等の構築のために投資をする。」
投資額は、足元のチャットGPTの売上の70倍です。チャットGPTを使っている人はすごい勢いで増えているけれど、有料版を使っている人は、ユーザーの5%ぐらいに過ぎないそうです。つまり売上高に比べて、70倍という設備投資を計画して着手している。チャットGPTは赤字なのにどうやってお金を調達しているのか。その莫大な開発量。
そこで出てくるのは「AI関連投資はもしかしたら巨大な循環取引が行われているかもしれない?」これはウォールストリートジャーナルの11月14 日の記事です。循環取引とは、企業が自分の関連する企業に製品を売る。その資金はその親会社の企業が融資や出資の形でその関連会社に出す。そしてバンバン売上を積み上げる。例えば、オープンAIがバンバン設備投資をすると、そのために巨大なデータセンターが建設されています。それはオラクルが受けもち、オープンAIがバンバン発注して作っている。そこでオラクルは莫大な半導体、AIを運営するための半導体やチップをNVIDIAから買って、NVIDIAはオープンAIに巨額の出資金を出している。こうして資金と売上が循環しています。オープンAIは、いろいろなコストの急増で2028年の営業損失は見込みで740億ドル(11.5兆円)になると自ら発表しています。その時に見込んでいる売上高の4分の3が営業損失になるといいます。黒字転換は5年先の2030年。これは本当にちゃんと回収できるのでしょうか。
株価を見てみると、既にAI関連銘柄は、2000年初頭のITバブルのピークを越えて、ものすごい株価の上昇が起こっています。
「ITバブルの時とは違う。大丈夫だ。」と言っている人たちもたくさんいます。今の株価を押し上げている、例えばマグニフィセント・セブンの株価収益率を見ると、確かに30倍、40倍と非常に高いのですが、同時に非常に莫大な収益を出しています。「ITバブルの時にまだ赤字だった何とかドットコムカンパニーが雨後の筍のように出てきて、価値にも関わらず上場して、すごい株価の上昇が起こった時とは違うのだ。」と言っている人もいます。しかし、NVIDIAはバンバン稼いで、バンバンオープンAIに投資しているわけです。オープンAIは上場していません。この莫大な循環が、本当に利益をつけて回収できればいいけれど、そこに不安が出てきた、というのがAI関係のちょっとバブルじゃないの?というところです。
講演では、いつ訪れるかわからないバブル崩壊に対して、投資家としてどう備えていくのか、また、日本経済の現状と今後の方向性についての説明。最後に超円安が続く要因をわかりやすく解説してくださいました。



