【Vol.272】FIWAサムライズ勉強会より
クオリティ・グロースとは何か。なぜ長期投資に適しているのか(講演)
山本 潤(やまもと じゅん)氏
なかのアセットマネジメント株式会社
運用部長/チーフポートフォリオマネージャー
私は「なかの日本成長ファンド」のポートフォリオマネジメントをしています。投資スタイルはクオリティ・グロースです。クオリティ・グロースとエンゲージメント、この2つを軸に運用しております。クオリティ・グロースとは、バリュー投資ではなく、グロース投資という意味でのグロース。企業の純利益を株主資本で割ったものをROEと言います。このROEは極めて大事な業績の指標の一つです。私たちはこれに最も注目をしています。基本的にROEは株主価値の年率の増加ペースの一番重要なものになってくる。正確には株主資本というものは、ROEに「1―配当性向」をかけたものが基本的な教科書の株主資本の成長率、配当成長率でもあります。我々は、配当を各企業からもらって、それを即座にファンドに再投資をします。つまり基本的にはファンドの平均的なROEで再投資をするため、ROEという高さがグロースである。では日本株の場合このグロースと言える高さはどのぐらいなのか。上場企業の平均ROEは改革の成果があって、大体9%ぐらいにはなっています。我々は今期ベースで、平均予想ROE14~15%の水準になっています。つまり市場平均と比べて5ポイントぐらい高いROEになっている。これをもってグロースとしています。もう一つクオリティと言われているものは、ROEは純利益が分子にくるので、どうしても業績によって毎年大きく変化するものもあれば あまり変化しない企業もあります。利益の変動が大きな企業と利益の変動が非常に小さい企業と2つあります。我々の言っているクオリティとは変動が少ない。つまりROEのブレが少ない。言い換えると ROEの安定性が高い。指標としては例えば過去10年の平均の高さがグロースであり、過去10年のROEの標準偏差が小さいもの、これがクオリティです。平均÷標準偏差の比率が高いものをクオリティ・グロースという形でカテゴライズ、定義をしております。
なぜこのクオリティ・グロースが大事かと言うと、私たちは、トップダウンの戦略で「今年はトランプが大統領だからこうしよう」とか、「防衛予算が増えるから防衛株を増やそう」というようなやり方をしていません。どちらかというと長期の積み立てをするお客様をメインの顧客として捉えています。例えば30歳40歳50歳の方々が引退するまで積み立てをする。その後すぐに全部解約せずに、例えば65歳で引退された後もちょっとずつ取り崩しながら、残高を利用しながら毎月の生活に当てていく。そういうことを考えるとやはり80歳90歳100歳といったところまでお付き合いが相当長いわけです。だから今50歳の人が例えば 80歳になった場合、30年の猶予があります。そういう長いスパンでファンドを設計しています。そういう設計であるからこそROEの高さと安定度というのが非常に大事になってくると考えます。なかのアセットといえばクオリティ・グロースのブティックハウス、エクイティハウスの中でクオリティ・グロースに特化した専門集団を作るんだ!という気持ちで、この会社の運用部長をしております。このクオリティ・グロースだといいことは複利効果です。
一方エンゲージメントは、企業との意味のある対話ということです。我々のエンゲージメントはROEを向上させるべく分子である利益の安定性や、利益の収益性が高くなるようなことを企業に提案していく。つまり儲かってないものがあれば、どうしてそれをやる意味があるのかということをしっかりと議論する。あるいは過剰だと思われる有休資産や遊んでいる資産、持ちすぎているキャッシュがあるのであれば、そういったものは、より良い事業に再投資する。もしくはより良い投資シナジーのあるM&Aに回す。あるいはそういったものがどうしても見つからない場合は、自社株買いか配当に回す。PBRが高い会社については自社株よりも配当のほうがいいのか。そして自社株の買い方が、メッセージ性があっていいのか、いろんなことをどう考えているんですか?ということをエンゲージメントによってROEが下がらないように対話をしていく。企業は社員もいますし永続的な存在として今やらなければいけないことがたくさんある。それにはすぐさま収益に結びつかないようなものを今やっとかなければいけないというケースがどうしても出てきます。例えば環境対応の投資といったものはそういったものになります。あるいはキャパシティがもう足りない。そのときは、結構スケールの大きな新しい設備を作るとなると一時的にすごく収益性に影響を与える可能性がある。そういったところで投資家との軋轢はどうしても企業と投資家の間には出てきます。そこを本当に企業と話し合って、ちゃんとこれでも必要なことだよねと、我々が納得するなら甘んじてそれを受け入れます。いやもっと工夫すべきではないのかということを企業に対して提案する。このエンゲージメントは今期4つぐらいの企業に対して、ものすごく一生懸命やっているところです。
講演では、資産形成における複利効果の重要性を説き、複利効果を得るために最も適している投資スタイルはクオリティ・グロースであることを解説。骨太のアクティブファンドとして一貫性と専門性を高めていくこと。そして、ゆるがない投資哲学を熱く語っていただきました。



