【Vol.263】FIWAマンスリー・セミナーより(講演2)

戦後の日本証券市場史

 特定非営利活動法人 みんなのお金のアドバイザー協会 代表理事 会長
I-Oウェルス・アドバイザーズ株式会社 代表取締役 会長
岡本 和久CFA
レポーター:赤堀 薫里

岡本 和久 プロフィール

ファイナンシャル・ヒーラー 兼 投資教育家


今日は戦後の日本証券市場史というお話をします。グローバルな金融リスクがどんどん次から次に起こり、それに対して、世界的に金融を緩和する資金がジャブジャブになった。だけど経済が悪い。投資先がない。じゃあ、有価証券を買おう、株を買おう、不動産を買おう。それをするとまたそこに新たな実需が伴わないような需要が生まれて、それがさらにまたマネーサプライの追加をもたらしてくる。その循環が今でもある程度続いている部分です。

マイナス金利。日本は、とにかく構造不況から脱出しなければいけないということで、金利をどんどん下げて、ようやく今年になってマイナス金利を解除したということになったわけです。また2013年6月、安倍晋三元首相がアベノミクス、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起するというような政策を出された。こういうことからようやく景気も回復していった。1989年12月末に市場最高値38,915円をつけました。それに対して今年の7月には42,426円いまで戻ったわけです。

長い年月をかけて下までいって、上がってきました。でも面白いことに、1990年からこの間、毎月毎月1万円ずつ積み立て投資をずっと続けていると、全部で投資した資金が412万円です。これに対して今時価が1,077万円です。2.6倍になっている。このようにいってこいの相場でも、このようなことがあるということは非常に大きなメリットでした。下がったところから始めればいいじゃないかと言われればその通りですが、それがいつかわからない。

1990年から始めた結果でもなぜ、このようになり得るのかというと、それは株式というものに価値があり、価値が増加していくからです。だから、十分に分散されたポートフォリオの価値というのは、やはり増加をしていき、時期が早いか遅いかということはあるけれど、とにかく最終的にはそれがリターンの形で戻ってくる。

新値を取ったと言って騒いでいるけれど、実は配当込みのトピックスは、2021年の2月に新値を取っています。これはあまり皆さん、見ていませんよね。しかしこういうことはよく先行指標になります。なぜかというと、配当込みということのインパクトをすごく如実に表しているからです。例えば、景気が非常に悪くて配当を減配しなければならないときは配当金は下がりますが、株価はだいたいそれ以上に下がります。その下がり方の少ない配当金で大きく下がった株価を再投資することは、積立投資の理論通りになってきます。これは非常に大きな差を生み出す。だから私は本当に退職後のため、リタイア後のための資産形成でやるときは、とにかく配当金の再投資。これは本当に必要だと思います。

日経平均とニューヨークダウの関係ですが、面白いことに、東証が再開された1949年の5月、最初の取引日の日経平均は176円。今は4万円ちょっと下回っていますが、それぐらいです。アメリカも同じ日、1949年5月、この日にニューヨークのダウが176ドルでした。今やはり4万ドルぐらいです。ということは日米両方とも227倍ぐらいになっているということです。ちょっとルートは違いますが、だからこそ分散投資に意味があるということです。要するに200倍以上のパフォーマンスになっている。

証券取引所が再開した1949年から日本のマーケットは75年あるわけです。75年のうちの約35年間、1989年から2024年の間はものすごく下がって、そこから回復した。今から75年後というのは2099年、21世紀最後の投資です。それまでにこれと同じ200倍でもいいですけど、227倍ぐらいの上昇があったとすると、4万円が約800万円とか900万円になっています。日経平均は21世紀の終わりには少なくとも500万円ぐらいにはなっていると私は考えています。4万円とか3万いくらとかそんな話ではない。

そういう視点で物事を考えれば、長期投資は本当に魅力があると思います。途中でこのように35年間にわたる大きな低迷相場があって、そして回復があって、この繰り返しかもしれないけれど、それでずっと積み立てをしていくことの効果は本当に大きいだろうと思います。

兜日本株価指数、1878年を100とすると、今この指数の株価は6億4,200万円になっていいます。すごいですよね。

この兜日本株価指数を明治維新~終戦、戦後~バブル後の安値。そして今というように3つに分担してみます。国にも、揺籃期、成長期、成熟期、衰退期というのはあると思います。パイオニアリング、グロース、マチュリティー、ディケイ。こういう言い方をします。私は戦後のサイクルでは揺籃期に今、日本が入りつつあるのかなと感じています。本当にここから、次は大きな何か変化を起こしてチャレンジに挑んでいくのかどうか、そこが鍵だろうと思っています。

願わくば、揺籃期、パイオニアリングステージの初期の段階だというように考えたいと思っています。新揺籃期、新パイオニアリング。新しい政治の体制、社会体制、人々の考え方、旧弊にとらわれないでどんどん合理的なことを進めていく。そういうことが日本の中で起こっていくことを私は本当に願っています。

講演では、戦後の日本証券市場の壮大な歴史とそれについて感じること、今後の日本についての提言がなされました。

(文責FIWA®