【Vol.260】FIWAマンスリー・セミナーより(講演2)

講演 FIWA会長
岡本 和久 CFA, FIWA®
レポーター 赤堀 薫里

ジェレミー・シーゲル⻑期投資の教え

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今⽇はジェレミー・シーゲルの⻑期投資の教えというお話をします。ジェレミー・シーゲルは、⻑期投資をアメリカの⽣活者の間に教え込んだ⼈と⾔われています。今⽇紹介する彼の2冊の本は、市場とインデックスの解説が中⼼である「株式投資」と、その後に出した、個別銘柄の話も⼊ってきている「株式投資の未来」。この2冊は、⾮常に⼤きな影響⼒を持ち、個⼈投資家に投資を勧めることになりました。その結果としてアメリカでの株式の保有⽐率が半分超えるぐらいのレベルにまで上がりました。そういう意味では⾮常に影響⼒が⼤きかった本です

。2000年当時、ITバブルが崩壊して相場がどんどん下がっている時に、シーゲル教授はずっと株式市場に対して強気でした。それを批判して2000年の5⽉、雑誌のビジネスウィークが株式市場についてインタビューで、「あなたはずっと強気だったけれど、まだ強気ですか︖」と尋ねました。その時の彼の答えは「ほぼ2世紀にわたって、私が発⾒した平均のインフレ調整をした株式の実質収益率は平均年7%です。私は⻑期的にはそれを変えるべきであるという説得⼒のある理由がわかりません。しかし、短期的には何か起こることもあり得ます」と、答えています。これは⾮常に適切な⾔葉です。⻑期的に⾒れば7%ぐらいは上がっていく。でも⽬先どうなるか、そんなことはわからない。すごく上がるかもしれないし、すごく下がるかもしれないということを⾔っていました。

配当は下落相場のプロテクターです。そして上昇相場のアクセルです。結局、⾮常に経済が悪くなったときに株価は下がります。もちろん配当も下がりますが、配当の下げ⽅は株価の下げよりも少ない。それは、株主に対する経営の責任もあって、過去の実績では必ず少ない。キャピタルゲインでもらっている額よりも株価の下げが⼤きかったとすると、配当⾦を再投資することによって別のルートでの積⽴投資が起こっています。つまり、配当⾦の減り⽅は通常、株価の下げよりももっと少ないわけです。配当⾦の再投資をするということがいかに⼤事なことか。せっかくチャンスがあるのに、使ってしまうとただ単にお⾦がなくなるわけです。だから下落相場のプロテクターであり、かつ上昇相場のアクセルであるという。これは⾮常にいい表現だと思います。

ダウの負け⽝戦略をご存じですか。ダウ平均30銘柄からとS&Pの上場総額上位100社から、それぞれ過去15年間⼀度も減配をしてないグループから⾼配当利回り10銘柄を買う。それをやってみるとやっぱりパフォーマンスはみんな良いわけです。だから⾼配当であるということは、パフォーマンスを考える上で⾮常に重要な要素であると彼は⾔っています。最近、⽇本の新聞なんか⾒ていますと「収⼊の⼀部を投資に回しましょう。投資でもらった配当⾦は今の⽣活費の補填にして、残りの部分は将来の退職後のための資⾦として積み⽴てていきましょう」、というトーンで書いてあるのを⾒かけますが、あれは誤解を招きますよね。そうではなくて、将来のための投資に回した残りの⾦額で⽣活をして、配当⾦は全て再投資に回していくことによって初めてインフレに負けないような資産形成というのが可能になってくるだろうと思います。

配当と企業統治という話で、経営⼈が常にあくまで株主の利益のために⾏動するというのであれば配当は重要ではない。だが、そうではない⼤多数の企業では決定的に重要となる。配当⾦が重要なのは株主と経営⼈との間に信頼関係の印となるからです。企業は業績がいいとか、悪いとか、いろいろ⼝で⾔ったとしても、最後の本⾳は配当⾦に必ず現れてくる。それが信頼の印だ。⾔っていることの本⾳がちゃんと配当⾦という形で株主のもとに⽰されるということを⾔っています。そういう意味ではガバナンスの問題とも関連してきますが、これはまた⾯⽩い視点だと思います。

バリュエーションの主な指標としては、配当利回り、株価収益率、株主資本倍率などがありますが、従来、株式は価格変動が⼤きい。だから配当利回りは⾼くて当たり前である。債券は安定しているから利回りが低い。これは、ハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンいうのが基準でした。しかしここ60年前ぐらいからそれが変わりました。要するに、60年以降、常に株式の配当利回りは債券を上回るパフォーマンスになっています。それはインフレの時代に⼊ってきているということです。株は物的資産の裏付けがあるので、物の値段が上がるということは、株価はそれを反映して良いパフォーマンスになる。債券は物価に対しての抵抗⼒が⾮常に弱い、というようなことがここで現れているということです。

講演では、シーゲルの⼀貫性について、⻑期成⻑のためのポートフォリオ構築、成⻑の罠についての説明。最後にポートフォリオ戦略について解説くださいました。