【Vol.280】エクスパート・オピニオン 

尾藤峰男氏 オピニオン
また始まった!戦争に揺れ動く株式市場 ― 我々はどう向き合うべきか。

尾藤 峰男氏 CFA , CFP , RIA

ウクライナでの戦争が続く中、イランへの、米国・イスラエルの攻撃が進行しています。我々は、それを目の当たりに見ていると、いったい株式市場はどうなるのだろうと心配になってきます。確かに、この戦争を受けて株式市場は動揺しています。しかし、我々投資家は、どう見ているべきか、ここは非常に重要なところです。

□ いま世界で何が起きているのか ― “さざ波”としての地政学リスク

米国・イスラエルとイランの緊張が高まり、マーケットは一時的に大きく揺れています。ニュースを開けば「暴落」「危機」「歴史的局面」といった刺激的な言葉が並び、投資家の不安を煽るような報道が続きます。しかし、こうした地政学リスクは、長い投資の歴史の中では何度も繰り返されてきた“さざ波”のようなものです。湾岸戦争、9.11、イラク戦争、クリミア危機、ウクライナ侵攻。どれも当時は「世界が変わる」と言われましたが、長期チャートを振り返れば、株式市場はその都度ショックを吸収し、より高い水準へと成長してきました。私たちがいるのは、水面の深いところ。表面の波は荒れても、深層は静かに、確実に前へ進んでいます。

□ メディアの“構造”を理解する ― なぜ悪いニュースばかり流れるのか

メディアがセンセーショナルな見出しをつけるのには理由があります。それは「人間は、良いニュースより、悪いニュースに強く反応する」という心理特性があるからです。脳科学では“ネガティビティ・バイアス”と呼ばれ、危険や損失に敏感に反応するのは、生存本能の名残だと言われています。そのため、メディアはどうしても「悪いニュース」「不安を煽る情報」を優先的に流します。なぜなら、その方がクリックされ、視聴され、広告収入につながるからです。つまり、メディアの情報は“真実”というより“注目を集めるための編集物”。この構造を理解しておくことが、投資家にとっては大きな武器になります。

□ 投資家が取るべきスタンス ― “長期の視点”こそ最大の防御

短期の値動きに心を揺らされると、判断がブレます。「下がったから売る」「怖いから様子を見る」こうした行動は、長期的な資産形成において最も避けたいパターンです。むしろ、長期投資家が持つべき姿勢は次の3つです。

  • 長期視点を持つ 10年、20年というスパンで見れば、株式市場は成長を続けてきました。
  • ノイズをノイズとして扱う 地政学リスク、金利、選挙、景気指標。短期的な材料は“波”にすぎません。
  • 自分の投資方針を守る 長期、分散、低コスト。この3つを続けることが、最も成功可能性の高い戦略です。

市場が荒れているときこそ、投資家の真価が問われます。そして、最も強い投資家とは「動じない人」です。
こうしたマーケットの動揺期には、証券会社や銀行が“お客様の不安”に乗じて商売を仕掛けてくることがあります。「今がチャンスです」「乗り換えましょう」「為替が動いています」――こうした言葉の裏には、売買手数料や為替手数料を稼ぎたいという“商売の論理”が潜んでいます。

しかし、私たちはその土俵に乗る必要はありません。売った、買ったで血走るような世界とは、そもそも層が違う。私たちは、長期で企業の成長を見守る“品格ある投資家”です。短期の騒ぎに巻き込まれず、静かに構えることこそが、最も洗練された投資行動なのです。

□ 罠に嵌らないために ― 情報との距離感をどう保つか

私たちは、知らず知らずのうちにメディアの“罠”に引き寄せられます。スマホを開けばニュースアプリが不安を煽り、SNSでは誰かが無責任な悲観予測を語り、テレビではコメンテーターが危機を強調します。言いたい放題。

必要なのは「情報を遮断すること」ではなく、“情報との距離感をコントロールすること”です。「いや、そうは思わない」「この見方は目先だ」というような“心のフィルター”を持つことが重要です。

  • 毎日のニュースに一喜一憂しない
  • 長い目で見る習慣をつける
  • 株式投資とは、会社の一部を保有し、その成長を見守る行為である

こうした姿勢が、あなたの資産を守り、育てていきます。
市場が揺れるときこそ、私たちは落ち着いて、長期の視点を続ける必要があります。
水面の波に惑わされず、深いところで静かに構えていることです。

尾藤峰男氏 公認投資助言者(RIA)プロフィール

びとうファイナンシャルサービス株式会社 代表取締役
投資助言・代理業登録-関東財務局(金商)第905号
「米国CFA協会認定証券アナリスト」「CFP」「日本証券アナリスト協会認定アナリスト」「1級FP技能士」の4つの最高難度の資格を持つ。
金融機関と全く関係がない資産運用アドバイザーとして、投資助言料のみで個人の金融資産や退職金の運用助言・ライフプランニングサービスを提供する。グローバルな投資理論や外国株投資・国際分散投資に精通。日本経済新聞、週刊東洋経済、週刊エコノミスト、ダイヤモンドなどへ寄稿・コメント多数。日経CNBC、テレビ東京などにも登場。著書に「いまこそ始めよう 外国株投資入門」「バフェットの非常識な株主総会」。