【Vol.279】今月のひとこと

テンプルトン卿の教え
私はニューヨークに駐在していたころ、テンプルトン卿を担当していたことがありました。必死にレポートを書き、バハマに氏を訪問しました。少し待つと涼しげな服装に身を包み、にこにこと明るい笑顔でテンプルトン卿が現われたのです。「あ、テンプルトンだ!」と思う間もなく、「アイム・ジョン・テンプルトン」と言って握手をしてくれました。胸を借りるつもりで自分の書いたレポートを説明しました。氏は終始、若造アナリストの話をまじめに聞いてくださったのです。そして、驚いたことに翌日、ニューヨークのオフィスに質問が電話で来たのです。どんな相手の話でも心を開いて耳を傾ける、そして、納得できるまで徹底して調べる。氏の真摯さと、良い銘柄を探したいという情熱を感じたものでした。
テンプルトンさんは1912年に米国テネシー州で生まれ2008年に逝去されています。1954年にスタートしたテンプルトン・グロース・ファンドは、当初の1万ドルは彼がリタイアした1992年には2000万ドルにもなっていました。特に戦後間もない1950~60年代の日本株大量買い、「株式の死」と言われていた80年代のアメリカ株買いなどは有名です。
彼は人生を通じての精神的基準として、「祈ること」、「静修(瞑想)」、「雑事を離れること」「富を人々と分かちあうこと」を大切にしていました。特に1973年より、彼は基金を設け、世界中のあらゆる宗教の発展に貢献した人に対し毎年賞を与えました。その賞金額はノーベル賞を凌ぐといわれ、第一回授賞者(1973年)はカルカッタのマザー・テレサでした。これは彼女がノーベル平和賞を授賞する7年前です。
彼は、すべての投資家にとって役立つ言葉をたくさん残しています。「強気相場は悲観のなかで生まれ 懐疑のなかで育ち 楽観のなかで成熟し 熱狂のなかで死んでゆく」、「英語のなかで最もコストのかかる四つの言葉は“This time it’s different”(今度は違う)だ」などはご存じの方も多いと思います。
これらとは別に金言と呼ばれる言葉がたくさんあります。みなさんの参考になると思い10を厳選してご紹介しておきます。
- 大多数の人と異なったことをしない限り、人より優れたパフォーマンスを得ることは不可能である
- 悲観論が最大になった時が最良の買い場、楽観論が最大になった時が最良の売り場
- 株式市場でバーゲン株を買える唯一の方法は、多くの投資家が売っているときに買うことである
- 他の人々が落胆のうちに持ち株を売却しているときに買い、欲にかられて買っているときに売る。それを行なうには最大級の不屈の精神が必要である
- 長期的に見れば株価は一株当り利益のトレンドに沿って変動している
- 「見通し」や「トレンド」に注目している投資家は多数いる。それゆえ「価値」に注目することが大きな利益を生む
- 世界中を探せば、一国だけを検討するよりも、はるかに多くのバーゲン株を発見できる。同時に分散投資によるリスク低減もはかれる
- 一つの銘柄選択法が人気づいたら他の方法に変えよ。どのような方法でもフォーミュラでも多くの人が使い始めると有効ではなくなる
- 最良のパフォーマンスは個人が生み出すものであって、委員会が生み出すものではない
- 祈りをもって始めれば、思考も明瞭になり、不注意な間違いも少なくなる



今月号の記事をすべてダウンロード