【Vol.279】エクスパート・オピニオン 

尾藤峰男氏 オピニオン
資産運用で為替に振り回されないこと-為替もリスク分散の手段!

尾藤 峰男氏 CFA , CFP , RIA


いやはや、また為替介入のうわさが広まってきました。また、特に週末にかけての動き。市場を出し抜こうという思惑が見え見えです。今週は、我々はこの介入を含めて、為替というものをどう見ていたらいいのか、じっくりと見てみましょう。

□ 為替介入は“川に石を投げ込む”ようなもの

この週末、米国ニューヨーク連銀が円ドルのレートチェックを行ったとの報道を受け、円が一気に3円ほど円高へ振れました。市場はこうしたニュースに敏感に反応します。しかし、私は長年の経験から政府や中央銀行による為替介入の効果は、まるで川の流れに石を投げ込んだような“一時的な波紋”にすぎないと感じています。

為替は巨大な資本の流れがつくるダイナミックな市場であり、政府が意図的に方向を変えられるほど単純ではありません。1カ月もすれば、ほとんどの場合、元の流れに戻っていきます。それでも当局が介入を行うのは、市場の反応そのものを利用したいからでしょう。短期的なショックを与えることで、過度な動きを抑えたいという意図は理解できます。しかし、それを「為替を動かせる」と誤解してしまうのは、やはり思い上がりに近いものがあります。

投資家として重要なのは、この“波紋”に振り回されないことです。

□ 長期投資では為替リスクは薄まる

投資理論では、株式は債券に比べて為替との相関性が低く、長期では為替リスクはほぼ消えると言われています。これは机上の理論ではなく、私自身の実績からも実感しています。
私は1996年から20年間の、円から米国債と米国株に投資した場合の為替リスクの影響について調べてみました。その結果、為替リスクは米国株では47%も減少していました。一方、米国債では25%しか減らない。

つまり、株式の方が長期的には為替の影響を受けにくいのです。理論的には、長い期間では株式の為替リスクは消えるとも言われています。
「外国株は為替リスクがあるから怖い」と考える人は多いですが、むしろ長期で見れば、外国株投資はリスク分散の強力な手段になります。為替介入のニュースに驚いて投資判断を変える必要は全くありません。

□ ヘッジ有とヘッジ無で“2倍”の差──見えないコストの罠

ここで、あるメジャーな先進国株インデックスファンドの、ヘッジ有とヘッジ無のパフォーマンスを比較してみましょう。

  • ヘッジ無し:2016年10月 → 2025年で 4.9倍
  • ヘッジ有り:同期間で 2.5倍

同じ投資対象にもかかわらず、ヘッジの有無だけで2倍近い差が生まれています。
さらに、信託報酬も

  • ヘッジ無し:0.1%
  • ヘッジ有り:0.22%

と、こちらも2倍以上の違いがあります。
ヘッジには「見えないコスト」が存在します。

為替変動を抑えるためのスワップコスト、円安局面での機会損失──これらが長期のパフォーマンスに重くのし掛かります。
「為替が怖いからヘッジをかける」という発想は、短期的には安心感を与えますが、長期投資ではむしろリターンを削る結果になりやすいのです。

□ 為替は“ノイズ”、長期投資は“本流”

為替は日々動きます。介入があれば一時的に大きく動くこともあります。しかし、それらは長期投資においては“ノイズ”にすぎません。
重要なのは、

  • 長期で見れば為替リスクは薄まる
  • ヘッジはコストが積み上がり、リターンを削る
  • 外国株投資はむしろリスク分散の柱になる

という事実です。
目先の為替の動きに一喜一憂するのではなく、長い目で資産形成の本流を見据えること。これこそが、投資家にとって最も大切な姿勢だと私は考えています

尾藤峰男氏 公認投資助言者(RIA)プロフィール

びとうファイナンシャルサービス株式会社 代表取締役
投資助言・代理業登録-関東財務局(金商)第905号
「米国CFA協会認定証券アナリスト」「CFP」「日本証券アナリスト協会認定アナリスト」「1級FP技能士」の4つの最高難度の資格を持つ。
金融機関と全く関係がない資産運用アドバイザーとして、投資助言料のみで個人の金融資産や退職金の運用助言・ライフプランニングサービスを提供する。グローバルな投資理論や外国株投資・国際分散投資に精通。日本経済新聞、週刊東洋経済、週刊エコノミスト、ダイヤモンドなどへ寄稿・コメント多数。日経CNBC、テレビ東京などにも登場。著書に「いまこそ始めよう 外国株投資入門」「バフェットの非常識な株主総会」。