【Vol.270】FIWAサムライズ勉強会より 

投資で2億稼いだ社畜のぼくが15歳の娘に伝えたい29の真実(講演)

下村 啓介 氏


下村啓介氏
下村 啓介 氏

1972年大阪生まれ、神戸育ち。
関西学院大学商学部を卒業後、会計事務所での勤務とメーカーの経営管理部門での勤務を経て、2007年4月、FP Office Tomorrowを設立。
100歳までの経済計画をスローガンに、各種マネー相談に従事。

また、講師活動にも注力し、「有意義な情報をわかりやすく、楽しく、熱く伝える!」ことをモットーに、企業・各種団体・学校などで各種セミナー(講演)を実施。登壇回数は2000回を超え、2014年7月には、講師業の展開をさらに加速させるため、株式会社全力講師を設立。洗練された講師をかかえながら組織としてセミナーや講演を受注するとともに、講師養成講座を通じて、講師の育成なども行っている。


よくお金で幸せになるとは限らないけど、選択肢は広がると言われます。自分の人生の選択肢を広げるためにもお金は必要だよと。しかし、日本人の場合、割とお金に対して汚いものという意識があります。日本人は投資もしなければ消費もせずひたすらため込んでいる。でも、それだけ日本人はお金が好きだから。お金はあくまでも人が幸せになるための手段であって、お金を増やすことが目的ではないはずです。だからお金を増やしてもそれはFIREをはじめ、自分の人生を豊かにするための手段になるんだよ。そういうことを自分の娘を始め多くの方に伝えられればと思ってこの本を書いた次第です。

スタンリーさんは、ある法則を提唱しています。これは自分の年齢×年収×0.1です。それを期待資産額として自分の資産がそれよりも上か下か。その資産が期待資産額の2倍以上あれば蓄財優等生。半分以下であれば蓄財劣等生と呼びます。これが一つの自分がお金持ちかどうかという目安になるかと思います。1億、2億という額よりも、それで自分がちゃんと蓄財できているのかどうか考えればいいと思います。蓄財優等生になるためには、使うお金よりも入ってくるお金の方を多くすればできるわけです。そのためには大きく分けて3つ、支出を減らす、収入を増やす。それから投資でお金を働かせる方法があります。

一つの投資に関する考え方を紹介します。大部分の普通の人にとっては国際分散された低コストのインデックス投信、これ一つでOKだと思っています。私が思う理由として、非常に簡単で、ほとんど勉強しなくても世界経済が成長すればそれに乗っかって平均点を取れるから。ある程度リターンが得られるからと思っています。世界経済というのは今回のトランプさん騒動、またコロナの時のようにへこむことがあるかもしれません。あるいは一国ですと、日本もそうですしアメリカのような大きな国でも不調になることがあるかもしれません。でも世界中の人口は増えています。1990年代に国連が飢餓を解消するプログラムをしています。それまで飢え死に寸前の人が1990年から2000年代初頭にかけて10憶人くらい改善されたわけです。飢え死に寸前の人がそういう生活になるということは、当然携帯電話を持つし、住居も持つし、車を持てなくても自転車を持てる。そういう形でどんどん生活が改善されます。そう考えると当面世界の人口が増えて、貧困層がよりましな生活になっていく限りは世界経済が成長するだろうと思っています。だから国際分散されたインデックス投信というものをお勧めしているわけです。

資産は、幸せになる手段で目的ではない。ざっくりいくら必要か考えることです。実は長期投資は非常に効果が大きくて、毎月10万円積立をしたとして、30年間年利6%で回せれば16億円は達成できます。年6%は非常に高いなと思うかもしれません。例えば世界株式、MSCIという指数の場合30年間過去の平均は10%です。そう考えると年6%は実はそんなべらぼうに高い数字ではありません。もう一つ、ぼくは専門家ではないので間違っているかもしれませんが、一般的に株式のプレミアムリターンは5~6%と言われています。要は株式をすれば5~6%のリターンが期待できるということです。毎月10万円ということは、年間120万円ということです。日本人の平均年収は450万円といわれています。

昔、戦前に、本多静六さんという大投資家の方がいました。この方は東京帝大の教授をやりましたが、今のお金にして数百億円という資産ができました。彼は本多式貯蓄術といって、収入の1/4と臨時収入を全て投資に回せば大金持ちになれるという方法を打ち出しています。それを考えたら、450万円のうちの120万円。年収の20%ちょっとですから、できないこともないわけです。もっと言えば共働きになればいいわけです。我が家もあれだけのお金が増えた理由としては、年間300万円近く投資ができた。これは共働きで妻がフルタイムで働いていたからです。なおかつ結婚していると家賃や光熱費が2倍ではなく1.5倍ぐらいで済むので支出も減ります。よく「結婚はコスパが悪い」とか、「お金がないから結婚できない」という人もいますが、やはり資産を増やすには配偶者を持つ。別に配偶者でなくても家計を一つにするのであれば、パートナーでも親でもいいと思います。かつ自分と同じような経済感覚の人と一緒になれば非常にチャンスでしょう。仮にフルタイムの共働きであれば一人当たり毎月5万円、年間60万円を積立てると30年で1億になる。そう考えれば、普通の人でも億り人になることは難しくないと思います。

別に億り人にならなくても、それこそ人によって2,000万円で十分でしょう。その場合は、もっとハードルは低くなります。そう考えると投資がいかに将来の役に立つのかが分かると思います。よく諺としていわれますが、「今日が一番若い日」という言葉があります。長期投資の場合、今回のトランプショックもそうですが、上がり下がりがありますが、結局20年30年やっていると、多少のショックの時に投資を始めても、逆にピークの時に投資を始めてもあまり大した差が出ません。それでしたら堅実なインデックス投資を早いうちに始めた方がいいと思います。よく金融庁の調査でも、投資をしない理由に「元本、資金がない」ということを上げる人がいますが、毎月数万円でもいいから始める。なおかつ共働きだったらそれを増やせるわけです。とにかく早いうちから投資を始めた方が資産を増やすには一番重要ではないのかと思います。

最後に、資産を増やした上で何が幸せか自分で考えて行動する。私の場合はFIREをして好きなことをやるというのが幸せでしたが、別に88歳まで働くのが幸せだという人であればそれでいいわけです。とにかく経済的な余裕があれば自分にとって何が幸せで、そのためにどうすればいいのかということが分かると思います。そのような形で自分のために人生を送っていけばいいのではないかと思います。

講演では、FIREまでのいきさつを始め、さまざまなFIREの形態のご紹介と、ご自身の投資の実体験を踏まえ、なぜ投資をするのか、またお金について興味深いお話を伺いました。

J-REITの下落はいつから始まったのか2003年から遡ってみます。東証REIT指数と日経平均株価、MSCI.U.S.REIT指数というアメリカのREIT指数を重ねてみてみます。すると面白いことに、2020~2021年ぐらいまでは株価とJ-REITが非常に似た動きをしていました。ただREITは、例えば2006~2007年と東京中心に不動産のプチバブルみたいになった時に株価以上に舞い上がってしまった。

その後にリーマンショック後は株価以上に下げ幅が大きいですね。しばらく2012年まで底値圏で横ばいでしたが、アベノミクス、金融緩和という形になり、ここでまた株価以上に上がった、これ5月だったと思いますが、ズドンと下がるというように割と株価と一緒に動いてきました。ところが2021年ぐらいまでがその動きの最後で、その後は日経平均が3万円、そして一時4万円と上がっていく過程でずるずると下がってきた。これが株価とJ-REITの関係です。

一方、アメリカのREITも2021年までよかったのですが、2022年からズドンと下がっています。今ようやくちょっと上がってきた。このズドンと下がった理由としては、アメリカは消費者物価の上昇率でインフレ率が2022年2023年と非常に上がりすぎ、一時期前年同月比で9%ぐらいまで行ってしまった。これはアメリカの中央銀行FRBにとっても予想外の出来事だったので2022年の春から慌てて金利を上げていきました。それがREITに響いて非常に下がってきた。その時株価も下がりました。

アメリカのREIT市場は世界最大の規模のため、当然外人投資家もアメリカのREITを持ちながら日本のREITや他の国のREITにも手を出している人たちが非常に多い状態です。やはり最大の本国のREIT市場の動きに日本のREIT市場も影響を受けている面もあります。それから面白いことは、日本に関しては不動産の現物市場は堅調です。現物の市場とREITの市場の間に大きなギャップ、乖離ができています。堅調な不動産の現物市場と軟調なJ-REITの一種の不整合です。

市場の価格とファンダメンタルなバリューは違います。でも市場価格は上がりすぎたり下がりすぎたりを繰り返して動いていく。これは頭に置いておく一つの概念図です。今どういうところにいるのか考えていただけたらいいでしょう。REITの歴史を遡ると、東京の2006~2007年は東京のプチバブルです。この時は明らかにファンダメンタルのバリューを超えて、市場価格が舞い上がってしまった。逆にリーマンショックの時はファンダメンタルのバリューを超えて下がってしまった。そのようにイメージすると何をしたらいいのかなということも自ずとわかってくるでしょう。

要するに市場価格がファンダメンタルバリューより下がってしまったところで買っていいということです。ピンポイントで底値で買うことはできません。大体投資家はナンピンという行為をするわけです。長期投資はファンダメンタルのバリューが市場平均に比べて割安だと思ったときに思い切って買い増しをする。あるいは定額積立をしていたときは少なくとも止めない。それが1つの勝つためのセオリーだと思います。

個人投資家さんとお話をしていると、みなさん実学で『なんぼ儲かった、損した』とか、あるいはスマートな方でも年率何%で儲かったとか、リターンのお話ばかりされます。ところが金融の世界ではリターンとリスクは、両方欠かせない条件です。特に長期に渡ってポートフォリオを維持して積立投資で10年20年やっていこうと思ったときには、例えばリーマンショックみたいなことが起こり得るわけです。あるいはITバブルの崩壊、直近では2020年春に起こった新型コロナショック。そういうことは20年30年の間には、2回3回普通に起こります。そういう時に耐えられる持続可能なポートフォリオを維持していくためには、リスクに対する備えが欠かせないでしょう。

そういう意味では株式投資で積立投資をやって新NISAで目いっぱいやっていくというのはいいのですが、配分は考えた方がいい。そういった観点からみると今のJ-REITは昔と違います。昔は株式と一緒に変動して、リターンは株式より低いのに変動性だけJ-REITは高かった未成熟なマーケットでした。2000年代初頭にREITが始まった時は、株式市場とは少し違った動きをして、ミドルリスク、ミドルリターンの資産クラスとしてREITは期待されていました。

ところがそうはならなかった。それは、市場が未成熟であったということとREITの市場はそんなに大きくないためです。今でもやっと時価総額15兆円くらい。一方株式の時価総額は東証全体900数十兆円いっています。債券市場と国債市場だけで1千兆円超えてしまっています。どうも小さいがゆえにあおられてしまう部分がある。ただ今のREITは株式によってあおられているわけではなくて、むしろ債券の市場に過剰反応してしまっている。そして割安という結果になってしまっているのではないのかなと思います。

講演では、J-REIT価格下落、低迷の3つの要因の解説、またJ-REITの割安割高を示すNAV倍率と不動産収益率NOI、J-RIETの選び方のポイントをわかりやすく説明。最後に自分にとって望ましいポートフォリオの考え方についてFIWA®インディ君を用い、わかりやすく解説いただきました。