【Vol.258】FIWAマンスリー・セミナーより(講演2)
講演 FIWA会長
岡本 和久 CFA, FIWA®
レポーター 赤堀 薫里
名著ヨミトキ「インサイド・バンガード」と「波瀾の時代の幸福論」
バンガードグループの創設者で、最高責任者をずっと務められ、個人向けインデックスファンドを開発し、また本当に投資家のためになる組織の変革、投資商品の改良に努めたボーグルさん。彼の全人生の行動の目的は、「個人投資家にとっていいことをする」で一貫されています。
今日は、このバンガードと、ボーグルが起こした運用革命の経緯と、ボーグルさんの人格を支えているような幸福論の話をします。
ボーグルさんの8つの基本ルールというのがあります。
- 低コストのファンドを選ぶ。
- アドバイスに掛かる追加費用については慎重に検討しなさい。要するに、アドバイスという名を借りて費用ばかり掛かってしまうことがあるので、そこはよく考えないといけない。アメリカでも当時はまだそういう時代だったのでしょう。
- 過去のファンドのパフォーマンスを過大評価しないでください。大体過去に良いとそれから悪くなるケースも多いです。
- また、過去のパフォーマンスを使用して一貫性とリスクを判断する。要するに、過去のパフォーマンスを見ることによってそのマネージャーの運用方針がぶれてないか、一貫性があるかどうか。あるいはどの程度のリスクをとっているかを判断できる。
- スター(人気)マネージャーやスター(人気)投資信託にも気をつけなさい。
- そして、アセットのサイズに注意しなさい。大きければいいというものではない。
- あまり多くの資金を所有しない。それは個人として資金をたくさん持ちすぎることは無駄なことです。
- ファンドのポートフォリオを購入してそれをずっと保有しなさい。
このようなことを彼は勧めていました。
ボーグルが行った非常に大きなイノベーションは、投信会社の所有形態の変化です。日本の場合は、大手金融機関があり、その一部として投信会社があります。投信会社が投資信託を設定して、それを個人投資家に売ります。そうすると当然のことながら、投信会社は、資産を増やしたいのでたくさん売りたい。パフォーマンスを上げるという努力もあるけれども、とにかく大手金融機関(保有者)にお願いして、大量の資金を集めてもらうというような図式が出来上がってしまっている。
ところが、投資家はできるだけコストが安くパフォーマンスの良いものを欲しがる。オーナーは、どちらかというとやはりオーナーのために収益を上げてもらいたい。そのためにはたくさん売れるものをやってほしい。これは利益相反があるわけです。
バンガードはどのようにしたか。それは以下のようなものでした。バンガードファンドがある。そこにお金を出しているファンドオーナーがいっぱいいます。どんなファンドでもファンドのオーナーがいるわけです。ファンドに資金がある。その資金でバンガードという運用会社を作ったわけです。そのバンガードという運用会社が、ファンドの中でファンドのために運用している。
それは運用会社の最終オーナーが投資家ですから、そういう意味では、利益相反が全くない形を作り出しているわけですね。非常に素晴らしいイノベーションだと思うし、まだまだ時間はかかるかもしれませんが、だんだんこういうのが主流になっていくのではないかと考えています。
ボーグルさんが70歳の時に定年退職で引退した後、ジャック・ブレナンさん、ビル・マクナブさん、ティム・バクリさん、このような人たちがボーグルの思想を受け継ぎながら後を継ぎ、さらに新しいことをどんどん取り入れて組織を拡大しています。
ボーグルヘッズの投資ガイドと言われているものがあります。
- 収入に見合った生活をしなさい。
- 貯蓄を若い時から始めなさい。
- コストは低く、節約を最大限に考えた投資。
- リスクをコントロールするためにリバランスをしましょう。
- 保険はいざという時の備えであって、投資ではない。
- 自分の感情を知り自分自身の感情をコントロールする。
- 投資プランはできるだけシンプルに。
- 相場に振り回されず短期利益を追わない。
このようなことがボーグルヘッズと呼ばれています。ガイドが8項目あります。肝心なのはシンプルであること。注意すべき点は、途中で生じる多くの障害が基本方針と異なることがないように決意を揺るがさないことだ、と言っています。
私が非常に好きなボーグルさんの言葉は、「毎年、激動や不透明要因が発生することは不可避だが、長期で見れば我々の経済と金融市場のトレンドはしっかりと上向きである。そして、この成長は続くであろう。決して、虚偽の希望、恐れ、欲望などが健全な投資を曇らせてはならない。長期にフォーカスし、あなたの投資プランを守り抜けば、成功はあなたのものになるでしょう」。これは以前テンプルトン卿の話をした時にテンプルトンさんが、「長期で保有している投資の将来は明るい」ということをおっしゃっていました。それと同じなのでしょう。
講演では、ボーグルさんの生い立ちから、インデックス投資、インデックスファンド誕生までのいきさつ。また、バンガード設立の経緯について。最後に2017年のCFA協会の年次総会に参加された時に直接聞いた、「ファイナンスと金融市場の新時代」というお話と、その時の質疑応答の内容を解説くださいました。