【Vol.283】FIWAサロイン塾講演より(講演)
この株価は高いのか安いのか 達人たちに学ぶ投資哲学
特定非営利活動法人みんなのお金のアドバイザー協会® 代表理事 会長
ファイナンシャル・ヒーラー 兼 投資教育家
岡本 和久CFA
レポーター:赤堀 薫里

(5月17日第3回 FIWA®サロイン塾 後半)
個別銘柄分析について、私が印象に残ったデイブ・マービンとスタンリー・パーマーの二人を紹介します。
彼らはEI・デュポンという化学会社の非常に大きい自家運用をしている年金運用の担当者でした。私はこの二人からいろいろなことを教えてもらいました。
一緒にエレベーターのない小さな会社を訪問した時に、トップと面談をして、「すごい会社だ」ということを彼らは見抜きました。また、「この会社はすごい、そこまでコストカットをして、信念を持ってやっている。ロボットがロボットを作っている。」と感嘆しました。当時、アメリカでもロボットがロボットを作る工場というのが、随分雑誌等にも出ていたものです。それがファナックの昔の姿でした。そして大量に買い、最終的に年金資産の半分ぐらいがファナックになったそうです。
富士山近くの工場の見学へ一緒に行った時に彼は、「この工場は富士山の爆発に対して保険が掛かっていますか?」という質問をしました。その後、ミーティングが終わって食事をしながら、「あれ面白い質問だね。」と私が話すと、彼は「それがフィデューシャリー・デューティーの一環なんだ。お客様のお金を預かって、かなり大量にファナックの株を持っている以上、万が一、富士山が爆発してその工場が潰れた場合、そのお客様方はどうなるんだ。そこに対しても我々はちゃんと責任を持たなきゃいけない。」と応えました。この言葉に、フィデューシャリー・デューティーの本質についてすごく考えさせられました。
一方でパーマーさんは本当に真面目な人でした。デュポン・フォーミュラというものがあります。これはデュポンが開発した企業分析の手法です。それを使って20年くらいの数字を全部チェックします。
まず経営理念があります。過去10年間どのような成長をしてきたか、そして、これから5年でどれぐらい成長できるか、その後さらに何十年後にわたってどのように社会に貢献して、成長を実現して維持していくのか、というアプローチで考えると、ROE(株主資本利益率)は最も重要な株価指標です。これはPBR(株価純資産倍率)と、PER(株価収益率)の逆数である益利回りに分かれるわけです。
ROE=純利益/株主資本=株価/株主資本(PBR)×利益/株価(益利回り)
つまり株価と株価を消せば同じです。要するにPERとPBRという株式分析で最も重要な指標の両方を合体したものがROEだということを言われました。
だからPBRは低いほど割安であり、ROEは高いほどいいということです。
PERは低い方がいい、益利回りは高い方がいい。そうすると逆でも同じ結果になります。だからROEを見るときには注意しなければいけないと言っていたんだと思います。
例えば、ある年に株主資本を利用して企業は利益を上げます。一部は配当金を払います。残りは内部留保になります。内部留保は翌年の株主資本に加えられます。すると翌年の株主資本が少し大きくなります。同じ利益率だったら利益も少し増えます。その利益はまた少し大きくなり、配当金も払って、内部留保も大きくなる。これをずっと繰り返していきます。これを内部成長率(インターナル・グロース・レート:ROE×内部留保率+配当利回り)といい、これが最も重要なことです。
毎週金曜日、ニューヨークから約2時間半から3時間かけてウィルミントンという本社のある街に行くと、ドカッと資料が渡されて、「週末のうちにこれを計算しておいて」と、言われました。データを全部作って持っていくと、彼らは「ありがとう」と言って、注文をくれたものでした。本当にすごい方達でした。
ここで事前にいただいた質問をご紹介します。
「投資初心者です。このまま戦争が終結せずに原油高、円安が続く中で比較的安全と思われる投資方法、銘柄等をご教示いただけると嬉しいです。」
このご質問の内容は、誰もが思うことでしょう。
私の回答です。「私は、この戦争が今後どういう展開を見せるか、為替がどうなるか、有価証券がどうなるかなど分かりません。ただ一つ言えることは、どこが勝者となってどこが敗者になるか、どこが低成長になり、どこが世界経済を牽引していくか、どの産業や企業が高度成長するかも私は分かりません。でも今から10年20年先を考えれば、やはり、地球経済は拡大していく。どこがエンジンになるか分からないけど、大きくなっていくことは間違いないでしょう。
それぞれの国、産業、企業の株価は上下にギザギザの成長を続けますが、相対としてみれば、地球経済は人類がより良い生活を求めている限り成長すると思います。また、一時的に世界不況の時もあるかもしれませんが、今までの歴史で見ても、やはり世界の人々の生活は良くなっています。わずか20年ぐらい前にはスマホはなかったわけですから、目先でどこがいいか簡単に分かるものではありません。皆さんがいいと思った時は、もう株価は上がっています。それぐらい市場は効率的です。
大切なのは2点。世界経済の成長はギザギザと上下はあるけれども、10年20年という単位で長期では成長する。トータルでみれば、企業は利益を上げ、株主資本を活用してこの価値を高めていく。
そして株式市場の価格は常にあらゆる予想を織り込んでいる。次に何が起こるかは予測できない。それを当てようとしてもコストが掛かる。無駄なことです。」
講演では、事前にいただいた様々なご質問に対して示唆に富む深い回答をいただきました。


