【Vol.281】今月のひとこと

今月のひとこと

FIWA みんなのお金のアドバイザー協会®
会長 岡本和久

We do well by doing good

私は80年代の後半、バブル時代に日本の証券会社でチーフ・ストラテジストをしていました。その前、9年間に渡るニューヨークでのアナリスト経験で学んだCFA協会などが推奨する米国流の分析手法で日本の企業を分析して特に海外の投資家には喜んでいただいていました。

欧米の証券会社からはリクルートのオファーが結構ありました。しかし、マーケットもかなり成熟しており長年にわたる低迷相場が近いのではないかとも思っていました。案にたがわず日本のマーケットは1989年末をピークに下落が始まりました。上司に「この下げはどれぐらい続くと思うのか」と聞かれ「10年は無理でしょう」と答えたのを覚えています。上司はびっくりして「そんなことになるはずはない。そんなことになったら大変なことになる」と言ったのをよく覚えています。でも、実際にはその後、失われた三十年が続き「大変なこと」になったのです。

そんな時にウェルズ・ファーゴ・インベストメント・アドバイザーという会社からオファーがあったのです。同社は米国の年金運用革命の旗頭的存在でした。この会社ならまだ40代中頃の自分にとっても新しい資産運用の学びの機会になるのではないか。アメリカから帰国して6年経っており、新しい空気を吸いたいという気持が湧いてきました

ともかく行って話を聞いてこようということで1990年11月にサンフランシスコの同社を訪問し、会長、CEOのフレッド・グラウアー氏と面談をしました。最初に私が質問したのは貴社の成功の一番の要因は何ですかというものでした。

彼の答えは三つのことばでした。People, people, people。要するに「人だよ」ということでした。正直、この言葉にはしびれました。日本の証券会社はまず会社があって社員が存在している。彼の言葉はまさに「人」があって組織があるのだということを感じたのです。この辺りの話は2026年5月17日に開催されるサロイン塾でもお話しします。また動画でご覧いただくこともできます。

ではあなたが考える良い人材とはどんな人ですか?と聞くとこれもシンプルに三つの言葉で答えてくれました。Brightness(聡明で明るい人), Niceness(誠実でナイスな人), Fire in the belly(お腹に情熱の火が燃えている人)でした。日本の証券会社で30年勤めてきた、すべてはここに来るための道だったのだと確信しました。その後、グラウアー氏とは本当に親しい友人となりました。彼の家に泊まったことも何度もあり、また、彼の太平洋岸の小島にある別荘で数日間、彼の家族とすごしたこともありました。

バブル崩壊後の日本の証券界はまったくどうしてよいのか分らないムードが覆っていました。このままでは大変なことになる。しかし、手術をすると出血多量で命が危ない。そのうちにきっとなんとかなるのを祈るのみというような雰囲気でした。

しかし、答えはアメリカにあった。アメリカのような合理的な企業経営と資産の運用をすれば良いのだ。「日本に年金運用革命を起そう!」日本に戻り年金運用業界の長老などにその気持を伝えるとみんな、皮肉っぽく「岡本さん、そんなことは絶対に無理だから止めておきなさい」と言われたものです。

グラウアー氏からは多くのことを学びました。「あなたが一番大切にしている経営哲学は何ですか」と聞いたときの彼の言葉は忘れられません。

「We do well by doing good」

その意味を聞くと、「お客様にとって他社のどこよりも良いことをしていれば我々のビジネスはうまくいく」、そしてさらに「お客様に良いことをするというのは今、お客さまが喜ぶことではない。何十年も先にお客様が豊かでしあわせな生活ができることなんだよ」を言われたときは大きな感動をしました。

江戸時代の商売の基本として「先義後利」(道義を優先させ、利益を後回しにすること)という言葉があることを知り、同じだなと想ったものです。これは私が投資教育の仕事をしていく上での基本になりました。そして今、それはFIWA®︎の基本的なビジョンとミッションに生かされています。

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