【Vol.281】FIWAサムライズ勉強会より
〇〇万円の壁”はどうなる?NISA・住宅ローンも変わる! 個人・資産税など身近な税金の最新改正ポイント
江黒 清史氏
税理士・CFP FIWA®︎アドバイザリーボードメンバー

令和8年度の税制改正ということで、個人の所得税、資産税の主な改正についてお話をします。今回のポイントは、まず物価高への対応です。物価が上昇している中で、実質価値が目減りしているところに手当てをするため、基礎控除の改正が行われています。この基礎控除は今まで定額でしたが、物価に連動して控除額を見直す仕組みが整備されます。また基礎控除額と共に給与所得控除の最低保障額についても、直近2年間の消費者物価指数の上昇率をもとに調整されることになりました。
さらに令和6年度の3党(自民党、公明党、国民民主)の合意を踏まえ、課税最低限度額を178万円まで先取りして引き上げることによって、中低所得者の負担感を和らげています。これに合わせて税制上の各基準も必要な見直しを進めることとしています。
次に強い経済の実現に向けた対応として、賃上げと投資の好環境を強化します。個人においては、資産形成の促進に向けた取り組みとして、NISAの積立投資枠の対象年齢を0歳まで拡充し、教育等の必要資金を長期で準備できる制度を目指します。
暗号資産については、投資家保護の前提条件のもと、分離課税や、損失の繰り越しの制度が導入される予定になっています。また公平かつ円滑な納税のための環境整備の一環として、資産課税については、貸付用不動産等の市場価値と通達に基づく相続税の評価の差額を利用した、過度な納税の圧縮事例を踏まえて評価の見直しを図っていきます。また自動車についてもカーボンニュートラルを目指して税制を整備しています。
最後は、防衛力強化に基づく財源確保租税措置から、防衛特別所得税を新たに創設します。本日はこの辺についてお話をする予定です。
税制改正のロードマップです。例年8月頃から関係省庁から、税制調査会に対して、いろいろ要望が出てきます。秋に税制調査会の中で改正要望を審査して大体12月に大綱が発表されます。
今回は、12月26日に閣議決定され年明けには国会を通す。本来ですと3月31日までには法案が可決成立になりますが、今回は2月に選挙があった関係で、これらの日程がだいぶ遅れています。ただ衆議院は与党が過半を占めているため、内容的には、改正の大綱のまま行くような運びになると思っております。
まずこの主要な改正ということで、基礎控除と給所所得控除の引き上げについて見ていきます。多くの方に影響のある基礎控除、給与所得控除の改正とは、いわゆる年収の壁です。ここを超えると税金が発生するラインとして所得税には 「103万円の壁」がありました。これについて令和7年8年とどのように変わってきたのかを見ていきます。
次に今回の税制で、新たにできたラインとしては、給与収入で言うと 665万円、所得で言うと489万円のところで大きな崖ができています。 その崖が生じる理由を見ていきます。最後に社会保険の「130万円の壁」ですが、これは税制改正のお話ではありませんが、ここが結構重要なところになってきますので、このことについても触れていきます。
税制改正の話の前にサラリーマンの方の確定申告について簡単に確認をしていきます。まず税務上の用語の確認です。「収入」と「所得」は違います。「収入」から必要経費を引いたものが「所得」となります。給与所得者であるサラリーマンの会社員には、必要経費という概念はありません。サラリーマンの必要経費に相当するものとして給与所得控除があります。令和8年の税制改正では給与所得控除について改正が入っています。まず給与収入を認識して、そこから給与所得控除を引いて 給与所得を計算していきます。サラリーマンの方は年末調整が終了後、会社から源泉徴収票が発行されます。源泉徴収票の給与所得控除後の金額欄に記載されている金額が、給与所得です。そして、給与所得から所得控除を引きます。この所得控除には、配偶者控除、扶養控除等がありますが、原則として誰でも控除できる基礎控除があります。今回はこの基礎控除額が大きく改正されます。令和6年度までは、給与所得控除の最低保障額が55万円ありましたが、その時は基礎控除は48万円でした。給与から55万円と48万円は誰でも控除できますので、給与収入では103万円までは課税所得は0円。0に税率をかけても算出税額は出ませんので、給与収入103万円までは所得税 が0円ということで、いわゆる「103万円の壁」があったわけです。103万円を超えても扶養が多いですとか、所得控除が大きければ課税所得が0円になりますが、この場合も所得税は0円となります。課税所得の数字が出ている人は、その課税所得の金額に応じて税率が適用され、税額が計算されます。最後に復興特別所得税2.1%が加算され、最終的に税額が算出されるという仕組みとなっています。今回はこの復興特別所得税にも改正が入っています。
講演では、年収の壁の変化や、住宅ローン減税の延長、NISAの税制改正等、私たちの生活に密着した個人所得税や資産税の主要な改正について、改正に至る背景から制度の変遷の過程を詳細なデータを踏まえ、わかりやすく丁寧に解説くださいました。


